税金・社会保険料を滞納すると融資はどうなるか|「換価の猶予」を先に使う

ビジネスローン・融資
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税金・社会保険料を滞納すると融資はどうなるか|「換価の猶予」を先に使う

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • 税金の滞納を扱う記事は多い。だが、社会保険料(厚生年金・健康保険料)の滞納に触れた記事は、ほとんどない。実務では、こちらのほうが多い。この記事では両方を並べて扱う
  • 滞納があると、公的融資も信用保証協会も止まる。そして差押えが入ると、銀行融資は事実上止まる。売掛金を差し押さえられれば、ファクタリングも使えない。
  • 「借りて払う」前に、「猶予を申請する」。これが検討の順序だ。納税の猶予(国税通則法46条)と換価の猶予(国税徴収法151条・151条の2)は、まったく別の制度である。比較表で整理した。
  • 猶予される金額が100万円以下なら、原則として担保は不要。この一点を知らずに、担保がないからと諦めている事業者が多い。
  • 逆算する。延滞税の本則は年14.6%。ビジネスローンの上限は年15.0%(元本100万円以上/利息制限法1条)。納税資金をビジネスローンで借りて払っても、コストは下がらない。むしろ事務手数料の分、上がりうる。先に猶予を申請すれば、延滞税の一部は免除される。

資金繰りが苦しくなったとき、経営者が最初に後回しにするもの。

それは、税金と社会保険料だ。

給料は払う。

仕入先には払う。

家賃も払う。

税務署と年金事務所には、「あとで」と言う。

——気持ちは、分かる。

彼らは、すぐには取り立てに来ない。

だが、来たときは容赦がない。

彼らは、裁判所を通さずに差押えができる。

民間の債権者なら、訴訟をして、判決をとって、執行手続きを踏む。

税務署と年金事務所は、その手順が要らない。

督促状を出して、一定期間が経てば、そのまま差し押さえられる。

そして——

差押えが入った瞬間、銀行融資は事実上、止まる。

売掛金を押さえられれば、ファクタリングも使えない。

資金調達の道が、すべて閉じる。

だから、この記事を書いた。

上位の記事は、すべて「税金」しか扱っていない。

社会保険料の滞納に触れた記事が、ほぼゼロだ。

実務では、そちらのほうが多いのに。

だから、両方を並べる。

そして、最も伝えたいことは、これだ。

「借りて払う」前に、「猶予を申請する」。

納税の猶予。

換価の猶予。

この2つは、まったく別の制度だ。

そして、猶予される金額が100万円以下なら、原則として担保は要らない。

——さらに、数字で逆算する。

延滞税の本則は 年14.6%。

ビジネスローンの上限は年15.0%。

納税資金をビジネスローンで借りて払っても、コストは下がらない。

むしろ、上がりうる。

これが、この記事の骨格だ。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。猶予制度の適用可否・要件・延滞税および延滞金の割合は、税目・年度・個別の事情により異なります。延滞税の割合は毎年見直されるため、国税庁の公表値をご確認ください。実際の手続きにあたっては、所轄の税務署・都道府県税事務所・市区町村・年金事務所の窓口、および税理士等の専門家にご相談ください。融資にはいずれも審査があります。掲載している数値・条件は2026年7月時点の公開情報に基づきます。

01税金と社会保険料は、別の相手だ

まず、相手を分けて認識する。

多くの経営者が、これをひとまとめに「公租公課」と呼んで、区別していない。

だが、窓口も、根拠法も、猶予制度の申請先も、すべて違う。

税金の滞納と社会保険料の滞納は、相手も制度も異なる 相手が違う ── 税金と社会保険料を、混ぜて考えない

税金の滞納

【相手】 税務署(国税)/都道府県税事務所 /市区町村(地方税)

【主な税目】 法人税・消費税・源泉所得税 法人住民税・法人事業税・固定資産税

【猶予制度】 納税の猶予(国税通則法46条) 換価の猶予(国税徴収法151条・151条の2)

【滞納に伴う負担】 延滞税(本則 年14.6%) ※特例により実際の割合は毎年変わる

社会保険料の滞納

【相手】 年金事務所(日本年金機構) /協会けんぽ・健康保険組合

【主な保険料】 厚生年金保険料・健康保険料 子ども・子育て拠出金/労働保険料

【猶予制度】 換価の猶予(厚生年金保険法・健康保険法が 国税徴収法の例による、と定めている)

【滞納に伴う負担】 延滞金(本則 年14.6%) ※特例により実際の割合は毎年変わる

図1:税金と社会保険料は、相手も根拠法も申請先も異なります。ただし、いずれも猶予制度があり、いずれも滞納処分(差押え)の権限を持ちます。

▲ 社会保険料の滞納は、なぜ増えるのか

厚生年金保険料は、事業主と従業員が折半して負担します。従業員から預かった分も含めて、事業主がまとめて納付する仕組みです。

つまり、従業員の給与から天引きした保険料を、会社が預かっている状態になります。
資金繰りが苦しくなると、この「預かり金」が運転資金に流用されてしまう。これが、社会保険料の滞納が起きる典型的な経路です。

源泉所得税も、構造は同じです。従業員から預かった税金を、会社が納付します。

預かり金の流用は、資金繰りの黄信号どころか、赤信号です。ここに手をつけた時点で、資金繰りは自転車操業に入っています。
資金繰り表の作り方|銀行に出す月次表と、自分を守る日繰り表は別物で、日繰り表を作るところから始めてください。

02滞納から差押えまでの時系列

滞納は、ある日突然、差押えになるわけではない。

手順がある。

そして、その手順のどこにいるかで、打てる手が変わる。

滞納から差押えまでの時系列と、各段階で打てる手 滞納から差押えまで ── いま、どの段階にいるか

① 納期限が過ぎる この日から、延滞税・延滞金が発生し始める → ここで窓口に相談する

② 督促状が届く 国税では、納期限から原則50日以内に発せられる → 猶予の申請は、まだ間に合う

③ 督促状の発送から10日が経過 この時点で、法律上は差押えが可能になる → 急いで窓口へ。まだ動ける

④ 催告・財産調査 預金・売掛金・不動産・車両などが調査される → 最終局面。即、相談する

⑤ 差押え 預金・売掛金が押さえられる。資金調達の道が閉じる → 銀行融資は、事実上止まる

※上記は国税の一般的な流れです。税目・自治体・年金事務所により運用は異なります。

図2:滞納から差押えまでの時系列。督促状の発送から10日が経過すると、法律上は差押えが可能になります。動くなら、早いほど選択肢が多く残ります。

重要なのは、「督促状が届いた時点で、まだ間に合う」ということだ。

督促状は、「怒られている紙」ではない。

「制度を使う入口がまだ開いている」という合図だと考えてほしい。

そして、多くの経営者がやってしまうこと。

督促状を、封を開けずに引き出しに入れる。

これが、最悪だ。

相手は、連絡がないことを「支払う意思がない」と評価する。

払えないことより、連絡しないことのほうが、はるかに重い。

03差押えが入ると、資金調達はどう止まるか

なぜ、差押えを避けなければならないのか。

資金調達のすべての道が閉じるからだ。

具体的に、書く。

差押えが入ると資金調達がすべて止まる連鎖 差押えが入った瞬間、資金調達の道が一斉に閉じる

差押え

預金の差押え 口座の資金が押さえられる → 銀行が、滞納を知る → 融資は事実上、止まる

売掛金の差押え 取引先に通知が行く → 取引先が、滞納を知る → ファクタリングも使えない

不動産・車両の差押え 登記に差押えが記載される → 担保に入れられなくなる → 不動産担保融資も不可

さらに、差押えの前から止まっているもの 日本政策金融公庫・信用保証協会 ── 納税証明書の提出が求められるため、未納があると進まない

だからこそ、差押えの前に「猶予」を申請する 猶予が認められれば、原則として差押えは行われず、既にされた差押えが解除されることもある

図3:差押えの連鎖。預金・売掛金・不動産のいずれを押さえられても、資金調達の道は閉じます。猶予制度は、この事態を避けるためにあります。

04納税の猶予と換価の猶予は、別の制度である

ここが、この記事の中核だ。

「納税の猶予」と「換価の猶予」は、別の制度だ。

混同している記事が、非常に多い。

要件も、対象も、使いどころも違う。

表で、整理する。

← 横にスクロールできます →

項目 納税の猶予 換価の猶予(申請によるもの) 換価の猶予(職権によるもの)
根拠 国税通則法46条 国税徴収法151条の2 国税徴収法151条
誰が動くか 納税者が申請する 納税者が申請する 税務署長の職権による
主な要件 災害・盗難・病気・事業の廃止や休止・事業に著しい損失 など、個別の事情がある場合 納税により事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがある/納税に誠実な意思がある 換価により事業の継続・生活の維持が困難になるおそれがある/他に滞納がない 等
申請の期限 事情に応じて(原則、随時) 納期限から6ヶ月以内 ―(職権のため申請不要)
猶予される期間 原則1年以内(延長でさらに1年以内) 原則1年以内(延長でさらに1年以内) 原則1年以内
効果 差押えが猶予される/既存の差押えが解除される場合がある/延滞税の一部(または全部)が免除される 差押財産の換価(売却)が猶予される/新たな差押えが原則行われない/延滞税の一部が免除される 同左
分割納付 認められる 認められる(原則、猶予期間内に均等分割) 認められる
担保 猶予金額100万円以下なら原則不要/猶予期間3ヶ月以内なら不要/特別の事情がある場合も不要 同左 同左
※上表は、国税に関する制度の概要を整理したものです。地方税(法人住民税・法人事業税・固定資産税など)にも、地方税法に同様の猶予制度が定められています。要件・手続き・必要書類は税目・自治体により異なります。適用の可否は個別の事情によって判断されるため、所轄の税務署・都道府県税事務所・市区町村の窓口にご相談ください。
出典:国税庁e-Gov 法令検索「国税通則法」
■ 2つの制度を、一行で言い分ける

納税の猶予=「そもそも、納税を待ってもらう」制度。災害・病気・事業の著しい損失など、個別の事情があるときに使う。

換価の猶予=「差し押さえた財産を、売却しないでもらう」制度。納税により事業の継続が困難になるときに使う。資金繰り悪化の局面で、実際に最もよく使われるのは、こちらです。

そして、換価の猶予には「納期限から6ヶ月以内」という申請期限があります。
ここを逃すと、申請による換価の猶予は使えません。(職権による換価の猶予は残ります。)

だから、督促状が来たら、すぐに窓口へ行ってください。

05担保の要否(100万円以下は担保不要)

ここで、最も知られていない事実を書く。

多くの経営者が、猶予制度を諦める理由。

「担保がないから、どうせ通らないだろう」

——これは、誤解だ。

猶予される金額が100万円以下なら、原則として担保は要らない。

猶予制度における担保の要否 担保は、いつも必要なわけではない

猶予金額が 100万円以下 → 担保は原則不要 諦める理由がない

猶予期間が 3ヶ月以内 → 担保は不要

特別の事情がある 担保にできる財産が そもそもない 等 → 担保は不要

上記に当てはまらない場合は、担保の提供を求められることがある 不動産・有価証券・保証人の保証など。ただし「担保がない=申請できない」ではない。

「担保がないから無理だろう」と自分で判断しない 窓口に相談する。相談は無料で、その事実が不利に働くことはない。

図4:猶予制度における担保の要否。猶予金額100万円以下、猶予期間3ヶ月以内、その他特別の事情がある場合は、担保は原則として不要です。

猶予の申請で、何を準備するか

← 横にスクロールできます →

準備するもの 何を示すためか ここを押さえる
猶予申請書 制度の利用を申し出るため 様式は税務署・自治体・年金事務所で入手できます。窓口で相談すれば案内されます
財産収支状況書
(または財産目録・収支の明細)
「一括では払えない」ことを客観的に示すため 現預金・売掛金・在庫・不動産・借入金を、正直に書きます。隠すと、猶予は取り消されます
資金繰り表 「月々いくらなら払えるか」を示すため 過去6ヶ月+今後12ヶ月。これが分割納付計画の根拠になります
分割納付の計画 納付の意思を、数字で示すため 「月々◯万円 × ◯ヶ月で完納」。原則、猶予期間内に均等分割で納めます
担保に関する書類 担保提供が必要な場合 猶予金額100万円以下/猶予期間3ヶ月以内/特別の事情がある場合は、原則不要
決算書・試算表 事業の実態を示すため 直近期の決算書と、直近月までの試算表
※必要書類・様式・要件は、税目・自治体・年金事務所により異なります。猶予の適用可否は個別の事情によって判断されます。所轄の窓口にご確認ください。
出典:国税庁日本年金機構
■ 猶予が「取り消される」ケースを、先に知っておく

猶予は、認められて終わりではありません。取り消されることがあります。

  • 分割納付を、約束どおりに履行しなかった。これが最も多い取消事由です。
  • 財産の状況について、虚偽の申告をしていた。隠していた資産が発覚した場合です。
  • 新たに滞納が発生した。猶予中の税目は払っていても、別の税目を滞納すれば、猶予の前提が崩れます。
  • 財産の状況が変わったのに、報告しなかった。

取り消されると、猶予されていた分も含めて一括で請求され、差押えが再開されます。
だから、分割納付の計画は「無理のない金額」で組んでください。見栄を張って高い金額を約束し、履行できずに取り消される——これが、最も避けるべき失敗です。

06社会保険料の猶予(年金事務所への申請)

ここが、競合記事がほぼ書いていない領域だ。

社会保険料にも、猶予制度がある。

厚生年金保険法・健康保険法は、保険料の滞納処分について「国税徴収法の例による」と定めている。

つまり——

換価の猶予の仕組みが、社会保険料にも及んでいる。

申請先は、所轄の年金事務所だ。

税務署ではない。

ここを間違えて、「税務署に相談したのに社会保険料は待ってもらえなかった」という事業者を、何人も見てきた。

窓口が、違う。

✔ 社会保険料の滞納がある場合の、最初の一歩
  • 所轄の年金事務所に、電話または訪問で相談する。これが最初の一歩です。
  • 相談の際に伝えるべきは、「払う意思はある。ただし、一括では事業の継続が困難になる」という事実です。
  • 分割納付の計画(月々いくらなら払えるか)を、資金繰り表とセットで持参してください。
  • 猶予が認められれば、原則として差押えは行われず、延滞金の一部が免除される場合があります。
  • 「払えない」と言うだけでは通りません。「いくらなら、いつまでに払えるか」を数字で示すことが必要です。

※猶予の適用可否・要件・必要書類は、個別の事情および所轄の年金事務所の判断によります。詳細は日本年金機構の公式サイト、または所轄の年金事務所にご確認ください。

そして、一つだけ強調しておきたい。

年金事務所は、待ってくれないわけではない。

連絡がない相手を、待たないだけだ。

これは、税務署も同じだ。

「払う意思がある」ことを、行動で示す。

それが、猶予制度の入口にある唯一の条件だ。

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07【逆算】延滞税 年14.6% と ビジネスローン 年15.0%

ここで、数字で逆算する。

多くの事業者が、こう考える。

「延滞税は高い。だから、ビジネスローンで借りて、税金を先に払ってしまおう」

——この判断は、数字で検証すると成立しない。

並べてみる。

← 横にスクロールできます →

負担の種類 年率 根拠 500万円・1年での負担(概算)
延滞税(本則の上限) 年14.6% 国税通則法60条2項(納期限の翌日から2月を経過した日以後) 約 730,000円
延滞金(社会保険料・本則の上限) 年14.6% 厚生年金保険法86条4項ほか(納期限の翌日から3月を経過した日以後) 約 730,000円
ビジネスローン(法定上限) 年15.0% 利息制限法1条3号(元本100万円以上) 約 415,499円(元利均等12回)
+事務手数料
猶予制度を使った場合 延滞税・延滞金の
一部(または全部)が免除される
国税通則法63条ほか 本則より低くなる
日本政策金融公庫(無担保) 年3.50〜5.20% 基準利率(2026年7月時点) 年 約110,000〜170,000円
延滞税・延滞金の割合は、特例により毎年見直されます。上表の「年14.6%」は本則(上限)の割合です。実際に適用される割合は、国税庁および日本年金機構の公表値をご確認ください。
※ビジネスローンの利息は、元利均等返済(500万円・年15.0%・12回)による概算です。事務手数料は含みません。融資には審査があります。
延滞税とビジネスローン金利の比較(納税資金を借りることの非合理性) 「延滞税は高いから、借りて払う」── 数字で検証すると、成立しない

日本政策金融公庫(無担保) 年3.50〜5.20%

猶予制度を使った場合 本則より低くなる(一部免除)

延滞税・延滞金(本則の上限) 年14.6%

ビジネスローン(法定上限) 年15.0%

ローン + 事務手数料 さらに上乗せ

延滞税の本則(年14.6%)は、ビジネスローンの上限(年15.0%)より低い = 納税資金をビジネスローンで借りて払っても、コストは下がらない。むしろ上がりうる。

図5:延滞税とビジネスローン金利の比較。延滞税の本則(年14.6%)は、ビジネスローンの法定上限(年15.0%)より低い水準です。

● 「借りて払う」が成立しない、3つの理由
  • ①コストが下がらない。延滞税の本則は年14.6%。ビジネスローンの上限は年15.0%。ここに事務手数料が乗ります。払うコストは、むしろ増えます。
  • ②猶予制度を使えば、延滞税はさらに下がる。納税の猶予・換価の猶予が認められると、猶予期間に対応する延滞税の一部(または全部)が免除されます(国税通則法63条)。借りるより、申請するほうが安い。
  • ③借入は、負債として残る。猶予は、支払期日を後ろに動かす制度です。借入は、新しい返済義務を作る行為です。債務償還年数が延び、債務者区分が下がります。

結論:納税資金を、高い金利で借りてはいけません。まず、窓口に相談して、猶予を申請してください。
債務者区分と債務償還年数の関係はビジネスローンの審査基準|銀行が付ける「債務者区分」5段階から逆算するで解説しました。

この逆算が示すのは、単純な事実だ。

高いものを、もっと高いもので払ってはいけない。

延滞税が年14.6%。

ビジネスローンが年15.0%。

1年借りて、利息を約41万円払う。

同じ期間、猶予を申請していれば、延滞税は一部免除される。

どちらが得かは、計算するまでもない。

ビジネスローンの実額計算はビジネスローンの金利|100万・500万を借りたら、総額いくら返すのかで、36通り全部出している。

数字を見てから、判断してほしい。

08検討順序:借りる前に、猶予を申請する

では、何から手を付けるか。

順序を示す。

税金・社会保険料を滞納したときの検討順序 借りる前に、やることがある

1 窓口に、自分から連絡する(今日できる) 税金 → 所轄の税務署・都道府県税事務所・市区町村/社会保険料 → 所轄の年金事務所 「払う意思はある。一括では事業の継続が困難」と伝える

2 資金繰り表と、分割納付の計画を持参する 「月々◯万円なら、◯ヶ月で完納できます」── 数字で示す 「払えない」だけでは通らない。「いくらなら払えるか」を出す

3 猶予を申請する(換価の猶予は納期限から6ヶ月以内) 猶予金額100万円以下なら、原則として担保は不要 認められれば、差押えは猶予され、延滞税の一部が免除される

4 並行して、公的支援を検討する 日本政策金融公庫(年3.50〜5.20%)/セーフティネット貸付/信用保証協会 ※ただし、未納があると納税証明書が出ず、手続きが進まない場合がある

5 それでも足りないときに、民間の調達を検討する ビジネスローン(年3.0〜15.0%)/ファクタリング(手数料 数%〜十数%) ただし、納税資金そのものを高い金利で借りることは、合理的ではない

図6:税金・社会保険料を滞納したときの検討順序。1から順に。5に飛ぶと、コストは下がらないどころか上がります。

この順序を、飛ばさないでほしい。

1と2は、今日できる。

電話をかけて、資金繰り表を作る。

それだけだ。

そして、公的支援の全体像はノンバンクの前に使うべき公的支援|セーフティネット貸付・保証協会・納税の猶予にまとめた。

返済そのものが回らなくなっているなら、リスケも視野に入る。

リスケ(返済条件変更)の全手順|中小企業活性化協議会と405事業に、手順を書いた。

そして、赤字と滞納は連鎖する。

赤字決算でも融資は受けられるのか|赤字の「中身」で結論は変わるで、赤字の5類型を整理している。

両方を、セットで読んでほしい。

✔ 窓口に電話をかけるとき、最初に言う3つのこと

緊張する必要はありません。担当者は、「連絡してくる人」を、責めたりしません。
次の3つを、順番に伝えてください。

  • ①「◯◯(税目・保険料)の納付が遅れており、ご相談したく連絡しました」── 事実を、先に言う。
  • ②「払う意思はあります。ただし、一括では事業の継続が困難な状況です」── 意思と、状況を、分けて言う。
  • ③「月々◯万円であれば納付できる見込みです。資金繰り表をお持ちします」── 数字を出す。

「払えません」だけでは、話が進みません。
「いくらなら、いつまでに払えるか」を出した瞬間から、話は交渉になります。そして、猶予制度は、その交渉の枠組みとして用意されているものです。

09それでも資金が足りないときの選択肢

猶予を申請した。

分割納付が認められた。

それでも、運転資金が足りない。

——この局面で、何ができるか。

公平に、書く。

← 横にスクロールできます →

手段 滞納があると コスト 注意点
日本政策金融公庫 納税証明書が必要。未納があると手続きが進まない 年3.50〜5.20%(無担保) 猶予が認められ、分割納付を履行していれば、相談の余地はある
信用保証協会付き融資 同上 銀行金利+保証料 年0.45〜1.90% 同上
銀行プロパー融資 差押えが入ると、事実上止まる 短プラ 2.125%+スプレッド 債務者区分が下がっていると厳しい
ビジネスローン 各社の審査基準による 年3.0〜15.0% 納税資金そのものを借りる目的では、合理的でない(延滞税より高い)
ファクタリング 売掛先の信用力が中心(※各社の審査基準による) 手数料 数%〜十数%(1回あたり) 売掛金に差押えが入っていると、利用できない
いずれも審査・所定の手続きがあります。滞納があっても利用できることを保証するものではありません。ファクタリングの手数料は金利ではなく、債権売買の対価です。ファクタリングは債権の売買であり貸付けではないため、利息制限法・出資法の上限金利は直接には適用されません。
出典:日本政策金融公庫「金利情報」日本銀行「長・短期プライムレート推移」

この表で、最も重要な行は一番下だ。

売掛金に差押えが入っていると、ファクタリングは利用できない。

つまり——

差押えが入る「前」なら、売掛債権を売って資金を作るという道がまだ残っている。

差押えが入った「後」では、その道も閉じる。

時間には、値段がついている。

ファクタリングの仕組みはファクタリングとは|金融庁の定義から、債権譲渡の仕組みをゼロから解説するに、民法466条から書いた。

コストの実額比較はファクタリングとビジネスローンの違い(同じ100万円でコストは10倍変わる)

「使える」と「使うべき」は、別のことだ。

まず、窓口に電話をかけてほしい。

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※お申込みの時間帯・審査状況により、翌営業日以降となる場合があります。※記載の条件は2026年7月時点の同社公表値です。登録番号は金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」で照合できます。※納税資金そのものを高い金利で借りることは、コスト面で合理的ではありません。まず猶予制度をご検討ください。

FAQよくある質問

税金を滞納していると、融資は受けられませんか。
審査は厳しくなります。とくに日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資では、納税証明書の提出を求められるのが一般的で、未納があると手続きが進みません。銀行のプロパー融資も、滞納の事実が判明すると難しくなります。そして、差押えが入ると銀行融資は事実上止まります。ただし、猶予制度(納税の猶予・換価の猶予)が認められ、分割納付を約束どおり履行している状態であれば、相談の余地は残ります。重要なのは、「滞納したまま放置している」のか「猶予を申請して計画的に納付している」のかという違いです。この2つは、金融機関から見ればまったく別の状態です。
納税の猶予と換価の猶予は、何が違うのですか。
別の制度です。「納税の猶予」(国税通則法46条)は、災害・盗難・病気・事業の廃止や休止・事業に著しい損失があった場合など、個別の事情があるときに、納税そのものを待ってもらう制度です。「換価の猶予」(国税徴収法151条・151条の2)は、納税により事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがあるときに、差し押さえた財産の換価(売却)を猶予してもらう制度です。資金繰り悪化の局面で実際によく使われるのは、換価の猶予のほうです。ただし、申請による換価の猶予には「納期限から6ヶ月以内」という申請期限があります。督促状が届いたら、すぐに窓口へ相談してください。
担保がないと、猶予は認められませんか。
そうではありません。猶予される金額が100万円以下の場合、猶予期間が3ヶ月以内の場合、または担保として提供できる財産がないなどの特別の事情がある場合は、原則として担保は不要です。「担保がないから、どうせ通らない」と自分で判断して諦めてしまう事業者が非常に多いのですが、まず窓口に相談してください。相談は無料で、相談したという事実が不利に働くことはありません。なお、上記に当てはまらない場合は、不動産・有価証券・保証人の保証などの担保提供を求められることがあります。
社会保険料の滞納も、猶予してもらえますか。
猶予制度があります。厚生年金保険法・健康保険法は、保険料の滞納処分について「国税徴収法の例による」と定めており、換価の猶予の仕組みが社会保険料にも及んでいます。ただし、申請先は税務署ではなく、所轄の年金事務所です。ここを間違えて「税務署に相談したのに社会保険料は待ってもらえなかった」というケースを何度も見てきました。窓口が違います。相談の際は、「払う意思はあるが、一括では事業の継続が困難である」という事実と、月々いくらなら払えるかという分割納付の計画を、資金繰り表とセットで持参してください。詳細は日本年金機構の公式サイト、または所轄の年金事務所にご確認ください。
延滞税が高いので、ビジネスローンで借りて払ってしまおうと思います。
数字で検証すると、この判断は成立しません。延滞税の本則(上限)は年14.6%です。一方、ビジネスローンの法定上限は年15.0%(元本100万円以上/利息制限法1条3号)です。つまり、延滞税より高い金利で借りることになります。さらに、事務手数料が乗ります。加えて、納税の猶予・換価の猶予が認められると、猶予期間に対応する延滞税の一部(または全部)が免除されます(国税通則法63条)。借りるより、申請するほうが安く済みます。そして、借入は新しい返済義務を作る行為であり、債務償還年数が延びて債務者区分が下がります。まず、窓口に相談して猶予を申請してください。なお、延滞税の割合は特例により毎年見直されるため、実際の割合は国税庁の公表値をご確認ください。
売掛金を差し押さえられました。ファクタリングは使えますか。
差押えが入っている売掛金は、ファクタリングでは買い取ってもらえません。差押えにより、その債権の処分が制限されるためです。また、差押えの通知は取引先に届くため、取引先は御社の滞納の事実を知ることになります。これは、その後の取引関係にも影響します。逆に言えば、差押えが入る「前」であれば、売掛債権を売却して資金を作る道が残っています。時間には値段がついています。督促状が届いた段階、催告や財産調査が始まった段階で、すぐに窓口へ相談してください。差押えの前なら、猶予制度によって差押え自体を回避できる可能性があります。

まとめ

税金と社会保険料は、別の相手だ。

税務署と、年金事務所。

根拠法も、申請先も違う。

だが、共通点がある。

どちらも、裁判所を通さずに差押えができる。

そして——

差押えが入った瞬間、資金調達の道は、すべて閉じる。

預金を押さえられれば、銀行が滞納を知る。

売掛金を押さえられれば、取引先が滞納を知り、ファクタリングも使えない。

だから、その前に動く。

「借りて払う」のではない。

「猶予を申請する」のだ。

納税の猶予(国税通則法46条)。

換価の猶予(国税徴収法151条・151条の2)。

この2つは、別の制度だ。

そして——

猶予される金額が100万円以下なら、原則として担保は要らない。

「担保がないから無理だろう」と、自分で判断しないでほしい。

最後に、数字で逆算する。

延滞税の本則は 年14.6%。

ビジネスローンの上限は年15.0%。

納税資金を借りて払っても、コストは下がらない。

むしろ、上がる。

そして、猶予を申請すれば、延滞税の一部は免除される。

——だから、今日、電話をかけてほしい。

払えないことより、連絡しないことのほうが、はるかに重い。

相手は、待ってくれないのではない。

連絡がない相手を、待たないだけだ。

出典・参考
国税庁(納税の猶予・換価の猶予/延滞税の割合)
日本年金機構(厚生年金保険料等の納付・延滞金・換価の猶予)
e-Gov 法令検索「国税通則法」(46条・60条・63条)
e-Gov 法令検索「国税徴収法」(151条・151条の2)
e-Gov 法令検索「貸金業法」
日本政策金融公庫「金利情報」
日本銀行「長・短期プライムレート推移」
中小企業庁
金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」
・利息制限法1条(元本100万円以上は年15%)
※延滞税・延滞金の割合は特例により毎年見直されます。本記事に記載した「年14.6%」は本則(上限)の割合です。実際の割合は国税庁・日本年金機構の公表値をご確認ください。

相談窓口
所轄の税務署・都道府県税事務所・市区町村(税金)/所轄の年金事務所(社会保険料)
金融庁 金融サービス利用者相談室:0570-016811/日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター:0570-051051/警察相談専用電話:#9110

監修:黒岩 智之(くろいわ ともゆき)
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年。地方銀行の融資審査部に9年在籍後、独立。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。



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