リスケ(返済条件変更)の全手順|中小企業活性化協議会と405事業

審査・トラブル・資金繰り改善
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リスケ(返済条件変更)の全手順|中小企業活性化協議会と405事業

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • リスケ(返済条件変更)は、「借りる」の反対側にある手段だ。新しく金を入れるのではなく、出ていく金を止める。追加のコストは、原則としてかからない。
  • だが、綺麗事は書かない。①リスケ中は新規融資が原則として止まる。②金融機関にとって、リスケに応じることは義務ではない。③リスケの履歴は、消えない。この3つは、必ず先に理解してほしい。
  • 手順は決まっている。①資金繰り表と経営改善計画の準備 → ②メインバンクへの申し出 → ③バンクミーティング → ④プロラタ返済(各行の残高比で按分) → ⑤元金据置の期間設定 → ⑥計画の実行とモニタリング。この順番を崩すと、まとまらない。
  • 一人で計画を作る必要はない。中小企業活性化協議会(全国47都道府県)には、収益力改善支援・再生支援・再チャレンジ支援という3つのメニューがある。405事業(経営改善計画策定支援事業)を使えば、認定支援機関に払う計画策定費用の3分の2が補助される。
  • そして、「なんちゃってリスケ」は見抜かれる。数字だけを都合よく並べた計画は、審査部で崩される。私は9年間、それを崩す側にいた。

毎月の返済が、重い。

売上が落ちたわけではない。

だが、元金と利息を払った後に、何も残らない。

そういう状態が、何か月も続いている。

新しく借りようとしたら、断られた。

——この位置にいる人に、私が渡せる手は、一つしかない。

リスケだ。

正式には「返済条件の変更」という。

元金の返済を、一定期間、止める。

利息だけを払う。

たったそれだけで、月々の資金繰りは劇的に変わる。

だが——

この記事は、「リスケすれば楽になります」とは書かない。

リスケ中は、新規の融資が原則として止まる。

金融機関は、リスケに応じる義務を負っていない。

そして、リスケをした履歴は、消えない。

この3つを飲み込んだうえで、なお必要だと判断するなら、リスケは極めて強力な手段だ。

手順を、全部書く。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。金融機関との交渉、経営改善計画の策定にあたっては、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)、税理士、公認会計士、中小企業診断士等の専門家にご相談ください。掲載している制度内容・補助上限額は2026年7月時点の公開情報に基づきます。制度の要件・補助上限額は年度により変更される場合があります。最新の内容は、認定支援機関または中小企業庁の公表資料でご確認ください。

01リスケとは何か、そして何ではないか

まず、定義を固める。

リスケ(リスケジュール)とは、既存の借入について、返済の条件を変更することだ。

具体的には、主に次の3つの形をとる。

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内容 効果 注意点
元金据置 一定期間、元金の返済を止め、利息だけを払う 最も効果が大きい。月々の支出が、元金分そのまま浮く 据置期間が終われば、元金の返済は再開する
返済期間の延長 残りの返済期間を延ばし、月々の元金返済額を減らす 元金の返済は続くが、月額が軽くなる 総支払利息は増える
返済額の減額 月々の返済額を、合意した金額まで引き下げる 柔軟に設計できる 減らした分は、後ろに繰り延べられる
※実際には、これらを組み合わせることが一般的です。条件は金融機関との協議によって決まり、必ず応諾されるものではありません。

リスケは「借金の減額」ではない

ここを、ここだけは、誤解しないでほしい。

リスケをしても、借金の元本は1円も減らない。

減るのは、「今月払う金額」だけだ。

先送りしているにすぎない。

では、なぜやるのか。

答えは一つ。

時間を買うためだ。

元金の返済を止めている間に、本業の収益力を立て直す。

それができれば、リスケは意味を持つ。

それができなければ、据置期間が終わったとき、何も変わっていない会社に、元の返済が戻ってくるだけだ。

リスケは、治療ではない。麻酔だ。

麻酔をかけている間に、手術をしなければ、意味がない。

元金据置によるキャッシュフローの変化 元金据置で、月々の資金繰りはどう変わるか 借入残高3,000万円・残期間5年・金利年2.5%のモデルケース

リスケ前(毎月の支出)

元金返済 約50万円/月

利息 約6万円/月

合計 約56万円/月 年間で、約672万円が出ていく

元金据置(1年間)

元金返済 = 0円 (この分が、手元に残る)

利息 約6万円/月

合計 約6万円/月 年間で、約600万円が手元に残る

ただし、借入の元本は1円も減っていない。据置期間が終われば、返済は再開する この1年で収益力を立て直せなければ、同じ状態が戻ってくるだけになる

図1:元金据置の効果。借入残高3,000万円・残期間5年のモデルケースでは、年間約600万円が手元に残る計算になる。これは概算であり、実際の条件は借入内容により異なります。

この図の「約600万円」を見て、「助かった」と思ってはいけない。

正しい読み方は、こうだ。

「私には、この600万円を使って収益力を立て直す1年間が与えられた」

それが、リスケの意味だ。

そして、金融機関が知りたいのも、まさにこの1点だ。

「この会社は、浮いた資金と時間で、何をするつもりなのか」

02先に、3つの現実を書く

リスケを勧める記事は多い。

だが、代償を正直に書いた記事は少ない。

だから、先に書く。

リスケの3つの現実 リスケの代償 ── 綺麗事を抜きにして書く

1 リスケ中は、新規融資が原則として止まる 約定どおりに返済できていない会社に、新たに貸す金融機関はほとんどない。 設備投資も、大型の仕入れも、当面はできないと考えておく必要がある。

2 金融機関にとって、リスケへの応諾は義務ではない 申し出れば必ず通る、というものではない。断られることもある。 だからこそ、資金繰り表と経営改善計画の「中身」が、結論を分ける。

3 リスケをした履歴は、消えない 金融機関の内部では、条件変更の事実が記録として残り続ける。 計画を完遂し、正常な返済に戻すまで、この履歴は付いてまわる。

この3つを飲み込んだうえで、それでも必要なら、リスケは強力な手段になる

図2:リスケの3つの現実。これを知らずに申し出て、後から「聞いていない」となる経営者を、私は何人も見てきた。

それでも、リスケが「最良の手」になる場合

では、どういうときにリスケを選ぶべきか。

判断基準は、私の中では明快だ。

◆ リスケを検討すべきサイン
  • 営業利益は出ているのに、元金返済で手元資金が減り続けている。これは、返済のペースが、稼ぐ力に対して速すぎるということです。
  • 債務償還年数(有利子負債 ÷(営業利益+減価償却費))が、10年を大きく超えている。返済原資に対して借入が多すぎる状態です。
  • 返済のために、新たな借入を繰り返している。この時点で、すでに自転車操業に入っています。
  • 返済のために、ファクタリングを使い始めている。ここまで来たら、リスケの検討は「すぐに」です。
  • 従業員の給料や、仕入代金の支払いが、危うくなっている。返済より、事業の継続が優先されるべき局面です。

最後の項目が、最も重要だ。

従業員の給料と、仕入先への支払いは、銀行への元金返済より優先される。

これは、私が銀行員だった時代から変わらない実務感覚だ。

事業が止まってしまえば、そもそも返済原資が生まれない。

銀行も、それは分かっている。

だから、「返済のために事業が死にかけている」状況なら、金融機関に話すべきだ。

隠して、ファクタリングで穴を埋め続けるほうが、はるかに危険だ。

その転落の順序は融資を断られた直後が一番危ない|多重債務への転落ルートで図にしている。

リスケの検討が遅れることが、そのまま転落の速度になる。

03リスケの全手順(6ステップ・時系列)

ここから、実務だ。

順番を、崩さないでほしい。

崩すと、まとまらない。

リスケの全手順6ステップのタイムライン リスケの全手順 ── 6ステップ

1 資金繰り表と経営改善計画を、先に準備する ・向こう12か月の月次資金繰り表(できれば日繰りも) ・全借入の一覧(金融機関名・残高・利率・返済額・担保・保証)

2 メインバンクに、正面から申し出る ・延滞してから相談するのではなく、延滞する前に相談する ・「返せません」ではなく「この計画で立て直します」と伝える

3 バンクミーティング(全取引金融機関を一堂に集める) ・複数行と取引があるなら、これは避けて通れない ・「A行にだけ黙って多く返す」を封じるための場でもある

4 プロラタ返済(各行の残高比で、按分して返す) ・「残高の多い銀行には多く、少ない銀行には少なく」返す原則 ・これがないと、金融機関間の不公平が生じ、合意がまとまらない

5 元金据置の期間を設定する(多くは1年単位で更新) ・「何年でも据え置ける」ものではない。多くは1年ごとに見直す ・更新のたびに、計画の進捗が問われる

6 計画の実行と、モニタリング(ここが本番) ・月次で試算表を出す。計画と実績の差を、自分から報告する ・「聞かれてから出す」のではなく「出してから聞かれる」に変える

図3:リスケの全手順。ステップ1を飛ばしてステップ2に行くと、まず話がまとまらない。準備がすべてを決める。

ステップ1:準備がすべてを決める

私が銀行の審査部にいたとき、リスケの申し出が来た瞬間に見ていたのは、たった一つだった。

「この経営者は、自社の数字を把握しているか」

把握している経営者のリスケは、通る。

把握していない経営者のリスケは、通らない。

それだけだ。

だから、申し出る前に、以下を揃える。

■ 申し出る前に、必ず揃えるもの
  • ①向こう12か月の月次資金繰り表。できれば、直近3か月は日繰りで。
  • ②全借入の一覧。金融機関名/当初借入額/現在の残高/利率/毎月の返済額/最終返済日/担保/保証人。1枚の表にまとめる。
  • ③直近の試算表。できれば月次で、直近12か月分。
  • ④経営改善計画(案)。何をして、いつまでに、いくら利益を出すのか。数字と、その根拠となる打ち手をセットで。
  • ⑤リスケの希望条件。「どの借入を、どのくらいの期間、どう変えたいか」を、自分から具体的に提示する。

②が最も軽視されがちですが、実は最も効きます。「全部の借入を1枚にまとめて把握している経営者」というだけで、金融機関の見る目が変わります。

資金繰り表の作り方は、資金繰り表の作り方|銀行に出す月次表と、自分を守る日繰り表は別物に記入例つきで書いた。

銀行に出す表と、自分のための表は、別物だ。

両方を作る。

ステップ2:延滞する前に、申し出る

これが、最も守られていない鉄則だ。

延滞してから相談に来る経営者が、非常に多い。

それは、最悪の順序だ。

なぜか。

延滞した瞬間、その会社は「約束を破った会社」になる。

延滞する前に相談すれば、「約束を守るために相談してきた会社」だ。

同じ経済的実態でも、金融機関の受け止め方はまったく違う。

1日でも早く、まだ払えているうちに、相談してほしい。

リスケの協議中でも、売掛債権による資金化は検討できる|株式会社エーストラスト
リスケ中は新規融資が原則として止まります。その期間の運転資金を、売掛債権の譲渡(ファクタリング)で埋めるという選択肢はあります。買取手数料は3社間 年1.0〜4.9%/2社間 5〜15%(同社の条件表による)。買取可能額は5,000万円まで(審査により1億円)。法人向け。ただし、これは「借入を増やさずに凌ぐ」ための手段であり、恒常的に使えば手数料が収益を圧迫します。使うなら、期間と回数を決めてください。
3社間 1.0〜4.9%2社間 5〜15%最短2時間で送金法人向け

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※手数料・スピードは2026年7月時点の同社公表値です。同社は画像等で「手数料1%〜」「2%〜」とも表記しており、表記に揺れがあります。本記事では条件表の数値を採用しました。「審査通過率90%以上」は同社の公表値であり、第三者による検証は行われていません。実際の手数料は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。ファクタリングは債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。償還請求権の有無は契約書で必ずご確認ください。リスケの協議中にファクタリングを利用する場合は、資金繰り計画に織り込み、金融機関にも説明できる状態にしておくことを強く推奨します。

04プロラタ返済(各行の残高比で按分する)

複数の金融機関と取引がある会社にとって、ここが最大の関門だ。

プロラタ返済とは、各金融機関の借入残高の比率に応じて、返済額を按分するという考え方だ。

残高が多い銀行には多く、少ない銀行には少なく返す。

単純だが、これがないと合意はまとまらない。

プロラタ返済による返済額の按分の仕組み プロラタ返済 ── 残高の比率で、公平に按分する 借入総額1億円/リスケ後に返済できる月額を100万円と合意した場合

借入残高の内訳

A銀行(メイン) 5,000万円(50%) → 月50万円を返す

B銀行 3,000万円(30%) → 月30万円を返す

C信用金庫 2,000万円(20%) → 月20万円を返す

合計 1億円(100%) → 月100万円

これをやらないと、何が起きるか ・C信用金庫だけに満額返し続けている → A・B銀行が「抜け駆けだ」と反発する ・1行でも合意しなければ、リスケ全体がまとまらない。だから「公平さ」が要る

バンクミーティングは「公平さ」を担保するための場 ・全行が同じ資料を、同じ場で、同時に見る ・「あの銀行だけ優遇されているのでは」という疑念を、構造的に消す

図4:プロラタ返済の按分。残高比で機械的に配分することで、金融機関間の公平が保たれる。これが合意形成の土台になる。

なぜ、公平さがそこまで重要なのか。

理由は、1行でも反対すれば、リスケがまとまらないからだ。

たとえば、「C信用金庫にだけは、これまで通り満額返している」という状態があったとする。

A銀行とB銀行から見れば、「うちだけが我慢して、C信金だけ回収を進めている」ということになる。

誰も、そんな合意には応じない。

だから、プロラタで按分する。

機械的に、残高の比率で。

これが、交渉ではなく「原則」として機能する理由だ。

◆ バンクミーティングで、経営者が話すべきこと
  • ①現状の説明(隠さない)。なぜこうなったのか。都合の悪い事実こそ、自分の口から先に出します。
  • ②全借入の一覧の提示。全行が、他行の残高と返済条件を見られる状態にします。これが公平さの前提です。
  • ③プロラタでの按分案。「各行の残高比で、こう配分します」と、自分から提案します。
  • ④経営改善計画の説明。何をして、いつまでに、いくら利益を出すのか。打ち手に日付と担当者を入れます。
  • ⑤モニタリングの約束。「月次で試算表を出します」と、自分から言います。これが最も効きます。

金融機関出身の専門家が同席してくれる場合、この進行は格段に楽になります。中小企業基盤整備機構「中小企業活性化協議会による支援」から、地域の窓口を確認できます。

05実抜計画と合実計画は、何が違うのか

リスケの世界には、2つの計画の呼び名がある。

実抜計画(じつばつけいかく)合実計画(ごうじつけいかく)だ。

この2つの違いを説明している記事は、ほとんどない。

だが、これは実務の核心だ。

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項目 実抜計画 合実計画
正式な呼び方 実現可能性の高い抜本的な経営再建計画 合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画
要求される水準 高い。抜本的な再建が求められる 実抜計画に準じるが、より現実的な水準
計画期間の目安 おおむね3年以内に正常先(またはそれに近い水準)へ おおむね5年以内(進捗が良好なら概ね10年以内も許容されうる)
使われる場面 債務者区分の引き上げを目指す場面(要管理先→要注意先など) 貸出条件緩和債権の卒業を判断する場面
共通して問われること ①計画の実現可能性が高いこと ②売上・利益の前提に合理的な根拠があること ③金融機関の支援内容が具体的であること
※金融検査マニュアルは2019年12月に廃止されており、現在の運用は各金融機関の内部基準によります。上記は、実務上引き継がれている一般的な考え方を整理したものです。個別の判断は、取引金融機関および認定支援機関にご確認ください。
実抜計画と合実計画の違いを示す比較図 実抜計画と合実計画 ── 求められる「高さ」が違う

実抜計画 実現可能性の高い「抜本的」な 経営再建計画 ・「抜本的」がキーワード ・不採算事業の整理、資産売却など  構造そのものを変える打ち手が要る ・おおむね3年以内に、正常な水準へ ・数字だけを積み上げた計画は、  ここで崩れる 求められる水準:高い

合実計画 「合理的」かつ実現可能性の高い 経営改善計画 ・「合理的」がキーワード ・前提となる数字に、根拠があるか  (「頑張ります」では通らない) ・おおむね5年以内が目安 ・多くの中小企業が現実に目指すのは、  まずこちら 求められる水準:現実的

どちらであっても、問われるのは「その数字に、根拠はあるか」の一点だ

図5:実抜計画と合実計画。呼び名は違うが、金融機関が見ているのは結局「この数字は、何を根拠に出てきたのか」という一点。

債務者区分については、ビジネスローンの審査基準|銀行が付ける「債務者区分」5段階から逆算するに詳しく書いた。

自社が今、どの区分にいるのかを知らずにリスケを申し出るのは、地図を持たずに交渉に行くようなものだ。

06中小企業活性化協議会の3つの支援メニュー

ここからが、この記事の最大の価値だ。

上位の記事で、中小企業活性化協議会に触れているものは、ほとんどない。

だが、リスケを本気でやろうとするなら、ここは避けて通れない。

全国47都道府県に、公的な相談窓口がある

中小企業活性化協議会は、産業競争力強化法に基づき、全国47都道府県に設置されている公的な機関だ。

(旧・中小企業再生支援協議会)

金融機関出身者、公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士といった専門家が常駐している。

そして、相談すること自体に、費用はかからない。

参照:中小企業庁「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」

中小企業活性化協議会の3つの支援メニューの階層図 中小企業活性化協議会 ── 状況に応じた3つのメニュー 全国47都道府県に設置。相談自体に費用はかからない

① 収益力改善支援 業況の悪化に向かうおそれのある段階 収益力改善支援計画(アクションプラン+簡易な収支・資金繰り計画)を策定し、 金融機関に1年間の返済猶予を依頼する場面

② 再生支援 収益性のある事業はあるが、財務上の問題を抱えている段階 専門家による事業・財務のデューデリジェンス調査を経て、再生計画を策定する 金融支援(返済条件変更・債務減免等)を伴う本格的な再生の場面

③ 再チャレンジ支援 事業の継続が困難な事業者、保証債務に悩む経営者が対象 中小企業版ガイドライン・経営者保証に関するガイドラインを活用し、 円滑な廃業と、経営者の再スタートを支援する

図6:中小企業活性化協議会の3つの支援メニュー。段階に応じて、入口が用意されている。「終わらせ方」にも制度がある、ということを知っておいてほしい。

③の再チャレンジ支援について、一言だけ書いておきたい。

この制度があるということは、「事業をたたむ」という選択にも、支援の道があるという意味だ。

経営者保証に関するガイドラインを活用すれば、保証債務の整理にあたって、一定の資産を手元に残せる可能性がある。

「会社が終わったら、すべてを失う」とは限らない。

この事実を知らないまま、一人で結論を出す経営者が多すぎる。

相談だけでも、してほしい。

なお、経営者保証については、金融庁が経営者保証改革プログラムを策定し、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策を進めている。

参照:金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」

07405事業(経営改善計画策定支援事業)の使い方

経営改善計画を、自力で作るのは難しい。

だが、専門家に頼めば費用がかかる。

この矛盾を埋めるのが、405事業だ。

正式名称は「経営改善計画策定支援事業」

認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて、金融支援を伴う本格的な経営改善計画を策定する場合、その費用の3分の2を国が補助する——という制度だ。

「405事業」という通称は、かつての予算額(405億円)に由来する。

参照:中小企業庁「経営改善計画策定支援」

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項目 405事業(経営改善計画策定支援) 早期経営改善計画策定支援(ポスコロ事業)
正式名称 経営改善計画策定支援事業 早期経営改善計画策定支援事業
(ポストコロナ持続的発展計画事業)
想定する場面 金融支援(返済条件変更等)を伴う、本格的な経営改善 金融支援を伴わない、早期の段階での経営改善
補助率 3分の2 3分の2
補助上限額 通常枠:計画策定支援と伴走支援を合わせて合計300万円(金融機関交渉費用10万円を別途加算しうる)
中小版ガイドライン枠:デューデリジェンス費用・計画策定支援費用・伴走支援費用を合わせて最大700万円
補助上限25万円(内訳:計画策定支援費用の上限15万円/伴走支援 期中・期末それぞれ上限5万円)
金融機関との調整 必要(リスケ等の金融支援を前提とする) 不要(金融機関への計画提出は行う)
使うべき人 すでに返済が苦しく、リスケを申し出る段階の人 まだ返済は続けられるが、将来に不安がある人
※補助上限額・要件は年度により変更される場合があります。上記は2026年7月時点で確認できた内容です。最新の内容は、認定支援機関または中小企業庁の公表資料で必ずご確認ください。また、補助を受けるには、中小企業活性化協議会への申請と、認定支援機関との連名での手続きが必要です。
405事業と早期経営改善計画策定支援の使い分け 2つの制度は、使う「段階」が違う

← 状況が軽い               状況が重い →

早期経営改善計画策定支援 (ポスコロ事業) ・金融支援は伴わない ・補助率2/3・上限25万円 ・「まだ返せるうちに」使う

405事業 (経営改善計画策定支援事業) ・金融支援(リスケ等)を伴う ・補助率2/3(上限額は年度により変動) ・リスケを申し出る段階で使う

共通するのは、補助率が「3分の2」であること 認定支援機関に払う計画策定費用の3分の2が補助され、自己負担は3分の1で済む

「計画を作る金がない」は、この制度を知らないだけかもしれない まず、各都道府県の中小企業活性化協議会に電話してください。相談は無料です

図7:405事業と早期経営改善計画策定支援の使い分け。まだ返済が続けられるうちなら、ポスコロ事業から入るという選択肢もある。

▲ 補助上限額について、正直に書いておきます

405事業の補助上限額は、年度により変更されることがあります。本記事では2026年7月時点で確認できた内容(通常枠:計画策定支援と伴走支援を合わせて合計300万円、金融機関交渉費用10万円を別途加算しうる/中小版ガイドライン枠:最大700万円)を記載していますが、申請にあたっては、必ず認定支援機関または中小企業庁の公表資料で最新の内容をご確認ください。

数字を「たぶんこうだろう」で書くわけにはいかないのが、この分野です。制度は毎年動きます。

■ 経営者保証について、2026年時点で知っておくべきこと
  • 経営者保証に関するガイドラインは2014年2月に適用が開始され、現在では銀行・信用金庫・信用保証協会・日本政策金融公庫など、幅広い金融機関で活用されています。法的な拘束力はありませんが、関係者が自発的に尊重・遵守すべきものとされています。
  • 金融庁は経営者保証改革プログラム(令和4年12月策定)を通じて、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を進めています。監督指針の改正により、保証を求める際の手続きが厳格化される方向です。
  • 再チャレンジ支援では、このガイドラインを活用して保証債務を整理し、一定の資産を手元に残せる可能性があります。「会社が終わったら、すべてを失う」とは限りません。
  • 金融庁は毎年、ガイドラインの活用実績を公表しています。金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」中小企業庁「経営者保証」

08「なんちゃってリスケ」は、なぜ見抜かれるのか

最後に、私が銀行の審査部で毎日やっていたことを書く。

それは、計画を崩すことだ。

正確に言えば、「この計画は本物か、偽物か」を見分けること。

そして、偽物は驚くほど簡単に見分けがつく。

なんちゃってリスケ計画が見抜かれる4つのポイント 審査部は、こう読む

① 売上が、なぜか「来期から」右肩上がりになっている 直近3期は右肩下がりなのに、計画では来期から急に伸びる。その根拠は? → 新規受注の見込み、契約書、引き合いの件数。「数字の裏に、事実はあるか」 見抜き方:直近実績の延長線から、どれだけ乖離しているかを見る

② 経費削減の額が、具体的な行動と結びついていない 「経費を年間1,000万円削減」——何を、どうやって? → どの契約を、いつ解約するのか。誰が、いつ実行するのか 見抜き方:削減額の一つ一つに、担当者名と期限があるかを見る

③ 「痛みを伴う打ち手」が、一つも入っていない 不採算部門の整理、遊休資産の売却、役員報酬の減額。これらが計画にない → 金融機関に返済を待ってもらうのに、自社は何も痛まない、では通らない 見抜き方:役員報酬の欄を、真っ先に見る

④ 計画と実績のズレを、自分から報告してこない 計画は通ったが、その後、月次の報告が来ない。聞かれてから初めて出す 見抜き方:これは「見抜く」までもない。次の更新で、条件が厳しくなる

図8:「なんちゃってリスケ」が見抜かれる4つのポイント。特に③の役員報酬は、審査部が真っ先に見る。

③について、補足する。

「役員報酬の減額」は、必ず入れろとは言わない。

生活が成り立たなければ、経営者は倒れる。

だが、「なぜ減額しないのか」を説明できる状態にはしておく必要がある。

金融機関に元金の返済を待ってもらうということは、「あなたの取り分を、一時的に減らしてください」と頼んでいるのと同じことだ。

頼む側が、何も痛まない。

この状態で、合意が得られるはずがない。

これは、道徳の話ではない。

交渉の構造の話だ。

● 私が9年間、審査部で見てきた「通る計画」の共通点
  • 数字が、控えめ。「売上が3割伸びます」ではなく「横ばいを前提に、粗利率を2ポイント改善します」。控えめな計画のほうが、通る。
  • 打ち手に、日付と担当者が入っている。「経費削減」ではなく「7月末までに、A社との保守契約(年間120万円)を解約する。担当:総務部長」。
  • 悪い数字を、隠していない。都合の悪い実績を先に出してくる経営者は、信用される。
  • 自社が先に痛んでいる。役員報酬の減額、遊休資産の売却。「まず自分から」の姿勢がある。
  • 月次で、自分から報告に来る。これが最も効きます。計画が未達でも、報告が来ている会社は、支援が続きます。

09リスケの出口を、最初に決めておく

最後に、最も重要なことを書く。

リスケには、出口が要る。

「元金据置を1年延長し続ける会社」を、私は何社も見てきた。

それは、リスケではない。

ただの、先送りだ。

だから、始める前に、出口を決める。

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出口 内容 目指すべき状態
①正常返済への復帰 収益力が回復し、約定どおりの元金返済を再開できる状態に戻る 最も望ましい出口。債務償還年数が10年以内に収まるかが目安
②金融支援を伴う再生 中小企業活性化協議会の再生支援を活用し、債務の減免等を含む再生計画を策定する 収益性のある事業はあるが、財務が重すぎる場合
③事業譲渡・M&A 事業を第三者に承継し、雇用と取引先を守る 後継者がいない場合の、有力な選択肢
④円滑な廃業と再スタート 再チャレンジ支援。経営者保証に関するガイドラインを活用し、保証債務を整理する 「終わらせ方」にも制度がある。一定の資産を残せる可能性がある
※いずれの出口も、中小企業活性化協議会に相談することで、専門家の支援を受けながら検討できます。相談自体に費用はかかりません。

④を、「失敗」だと思わないでほしい。

経営者保証に関するガイドラインを活用すれば、保証債務の整理にあたって、一定の資産を手元に残せる可能性がある。

そして、経営者は再スタートできる。

それを「制度として」用意しているのが、再チャレンジ支援だ。

最も避けたいのは、出口を決めないまま、据置を延長し続け、最後に何も残らない状態で終わることだ。

そして、リスケを検討する前に、もう一つ確認してほしいものがある。

出ていく金は、借入の返済だけではない。

税金と社会保険料にも、猶予の制度がある。

税金・社会保険料を滞納すると融資はどうなるか|換価の猶予を先に使うと、ノンバンクの前に使うべき公的支援|セーフティネット貸付・保証協会・納税の猶予をあわせて読んでほしい。

リスケと、納税の猶予と、公的制度の申請は、同時に走らせられる。

赤字が続いているなら、赤字決算でも融資は受けられるのか|赤字の「中身」で結論は変わるで、自社の赤字がどの類型かを確認してほしい。

そして、2026年の倒産の実態は、【2026年上半期】倒産5,300件超のデータで読む、危ない資金繰りの12の兆候にまとめている。

「自分だけではない」という事実は、時に、次の一手を打つ力になる。

リスケ中の運転資金を、負債を増やさずに埋める|株式会社No.1
リスケ中は新規融資が原則として止まります。売掛債権の譲渡(ファクタリング)は借入ではないため、貸借対照表上の負債になりません。買取手数料0.5%〜15%、買取可能額50万円〜3億円。償還請求権なし(ノンリコース)を明記。設立2016年1月7日/資本金8,000万円/代表 濵野邦彦。ただし、恒常的に使えば手数料が収益を圧迫します。経営改善計画に織り込み、期間と回数を決めて使ってください。
手数料 0.5〜15%最短30分振込50万〜3億円ノンリコース負債にならない

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※手数料・スピードは2026年7月時点の同社公表値です。実際の手数料は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。「審査通過率95%以上(2026年4月現在)」は同社の公表値であり、第三者による検証は行われていません。お申込みの時間帯や審査状況により、入金が翌営業日以降となる場合があります。ファクタリングは債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。本記事の主旨は、まずリスケと公的支援を検討することです。ファクタリングは、それでも埋まらない運転資金を短期に凌ぐ手段として、金融機関にも説明できる形で使ってください。

FAQよくある質問

リスケをすると、信用情報に「事故」として記録されますか。
金融機関との合意に基づく返済条件の変更は、延滞(約束を破ること)とは性質が異なります。ただし、金融機関の内部では条件変更の事実が記録として残り続け、その後の融資判断に影響します。「消える」ものではありません。重要なのは、延滞してから相談するのではなく、延滞する前に相談することです。延滞した瞬間に「約束を破った会社」になりますが、その前なら「約束を守るために相談してきた会社」です。同じ経済的実態でも、受け止め方は大きく違います。
リスケ中でも、新しく借りることはできますか。
原則として、できないと考えてください。約定どおりに返済できていない会社に、新たに貸す金融機関はほとんどありません。設備投資や大型の仕入れは、当面難しくなります。この点は、リスケを申し出る前に必ず理解しておくべき代償です。運転資金が足りない場合の選択肢としては、売掛債権の譲渡(ファクタリング)がありますが、これは借入ではなく債権の売買であり、手数料が発生します。恒常的に使えば収益を圧迫するため、経営改善計画に織り込み、期間と回数を決めて使ってください。
金融機関は、リスケの申し出に必ず応じてくれるのですか。
いいえ。応諾は金融機関の義務ではありません。断られることもあります。だからこそ、資金繰り表と経営改善計画の「中身」が結論を分けます。準備すべきものは、①向こう12か月の月次資金繰り表 ②全借入を1枚にまとめた一覧表 ③直近の試算表 ④経営改善計画(案) ⑤リスケの希望条件、の5つです。特に②は軽視されがちですが、「全部の借入を把握している経営者」というだけで、金融機関の見る目が変わります。
405事業を使うと、費用はいくら補助されますか。
405事業(経営改善計画策定支援事業)は、認定経営革新等支援機関の支援を受けて金融支援を伴う本格的な経営改善計画を策定する場合、その費用の3分の2を国が補助する制度です。2026年7月時点で確認できた補助上限額は、通常枠で計画策定支援と伴走支援を合わせて合計300万円(金融機関交渉費用10万円を別途加算しうる)、中小版ガイドライン枠で最大700万円です。ただし、補助上限額や要件は年度により変更されることがあるため、最新の内容は必ず認定支援機関または中小企業庁の公表資料でご確認ください。
プロラタ返済とは何ですか。なぜ必要なのですか。
各金融機関の借入残高の比率に応じて、返済額を按分する考え方です。たとえば借入総額1億円で、A行5,000万円・B行3,000万円・C信金2,000万円なら、返済可能な月額100万円を50万円・30万円・20万円に配分します。これがないと、「あの銀行だけ多く返している」という不公平が生じ、合意がまとまりません。リスケは1行でも反対すればまとまらないため、公平さが構造的に必要になります。バンクミーティングは、この公平さを全行が同じ場で確認するための場です。
計画を作る費用も出せません。それでも相談できますか。
できます。中小企業活性化協議会は全国47都道府県に設置されており、相談すること自体に費用はかかりません。金融機関出身者、公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士などの専門家が常駐しています。そして、計画策定を専門家に依頼する場合の費用は、405事業(補助率3分の2)や早期経営改善計画策定支援(補助率3分の2・上限25万円)で補助を受けられる可能性があります。「計画を作る金がない」という理由で相談をあきらめているなら、それは制度を知らないだけかもしれません。まず、電話をしてください。

まとめ

リスケは、治療ではない。

麻酔だ。

麻酔をかけている間に手術をしなければ、意味がない。

代償は3つ。

新規融資が、原則止まる。

応諾は、金融機関の義務ではない。

履歴は、消えない。

それでも必要なら、手順は決まっている。

①資金繰り表と経営改善計画②メインバンクへの申し出③バンクミーティング④プロラタ返済⑤元金据置の期間設定⑥計画の実行とモニタリング

一人で作らなくていい。

中小企業活性化協議会は、全国47都道府県にある。

相談は、無料だ。

405事業を使えば、計画策定費用の3分の2が補助される。

そして——

延滞する前に、相談してほしい。

延滞した瞬間、あなたは「約束を破った会社」になる。

その前なら、「約束を守るために相談してきた会社」だ。

この差は、決定的に大きい。

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