創業融資|自己資金・見せ金・創業計画書の実務

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創業融資|自己資金・見せ金・創業計画書の実務

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • 創業融資の中心は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備20年以内・運転10年以内(いずれも据置期間5年以内)。対象は新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
  • 2024年3月に旧「新創業融資制度」が廃止され、制度上の一律の自己資金要件は撤廃された。だが、審査で自己資金を見なくなったわけではない。
  • 審査で見られているのは、自己資金の「金額」ではない。「形成過程」だ。通帳に、毎月コツコツ積み立てた履歴が残っているか。ここを見ている。
  • いわゆる「見せ金」は、通帳の履歴でほぼ分かる。直前に一括で入った大口入金は、必ず出所を聞かれる。説明できなければ、自己資金として認められない。
  • 創業融資に落ちた人が共通して見落としているのは、①自己資金の形成過程 ②自分の生活費 ③損益分岐点売上高——この3つの数字である。

創業融資の面談で、公庫の担当者が最初に手に取るもの。

それは、事業計画書ではない。

通帳だ。

そして、ページをゆっくりめくっていく。

半年分。1年分。

何を見ているのか。

残高ではない。

履歴だ。

毎月、いくら入って、いくら出て、いくら残ったか。

その積み重ねを、見ている。

——ここで、ある種の申込人は、静かに落ちる。

審査の直前に、300万円がどんと入金されている。

担当者は、聞く。

「この入金は、何ですか」

これが、いわゆる「見せ金」がバレる瞬間だ。

派手な調査があるわけではない。

通帳を、めくるだけだ。

——この記事では、まず見せ金がなぜバレるのかを、通帳の履歴から具体的に説明する。

次に、創業融資に落ちた人が共通して見落としていた3つの数字を出す。

そして、創業計画書の書き方を実務レベルで整理する。

「自己資金をコツコツ貯めてこなかった」

——この理由で断られた人を、私は何人も見てきた。

その言葉の意味を、これから正確に説明する。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。日本政策金融公庫の制度内容・利率・限度額は改定されることがあります。掲載内容は2026年7月時点の公開情報に基づきます。最新の条件は必ず日本政策金融公庫の公式サイトおよび最寄りの支店でご確認ください。融資には審査があり、審査の結果、ご希望に沿えない場合があります。虚偽の申告・書類の偽造は、詐欺罪等に問われるおそれがあります。

01創業融資の全体像|どこから借りるのか

創業時に、借りられる先は限られている。

実績がないからだ。

決算書がない。取引実績がない。返済実績もない。

貸し手にとって、判断材料がほとんど存在しない。

だから、創業融資は「公的な仕組み」が中心になる。

整理する。

創業時に利用できる資金調達手段の全体像 創業時、借りられる先は限られている

① 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金(限度額 7,200万円)

② 制度融資(自治体+信用保証協会+金融機関) 自治体が利子や保証料を補助する場合がある。ただし2〜3か月かかる

③ 信用保証協会付き融資(銀行・信用金庫) 創業枠を設けている協会もある。保証料率 年0.45〜1.90%(9区分)

④ 補助金・助成金(返済不要。ただし「後払い」) 小規模事業者持続化補助金(創業型)など。先に全額を立て替える必要がある

⑤ 銀行プロパー融資・ノンバンク 創業直後は、実績がないため現実的に難しい。事業が回り始めてからの選択肢

図1:創業時の資金調達の全体像。①②③が中心になる。④は返済不要だが後払いのため、先に自己資金が必要。

■ 補助金は「創業資金」にはならない、という基本

創業に補助金を使いたい——という相談は非常に多いのですが、注意が必要です。
補助金は精算払い(後払い)です。事業を完了し、実績報告を出し、確定検査を通ってから入金されます。つまり、補助金をもらうために、先に全額を自己資金で支払う必要があります。
さらに、消費税は原則として補助対象外です。
「補助金があるから開業できる」——この計画は、成り立ちません。
詳しくは補助金・助成金は「後払い」だから、先に金が要る(つなぎ資金の落とし穴)で、精算払いのタイムラインを図解しています。

02新規開業・スタートアップ支援資金の中身

中心となるのは、これだ。

日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」

旧「新規開業資金」にあたる制度だ。

公表されている条件を整理する。

← 横にスクロールできます →

項目 内容(2026年7月時点の公表情報)
利用できる方 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
※「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限られます
資金の使いみち 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 7,200万円
返済期間(設備資金) 20年以内(うち据置期間5年以内
返済期間(運転資金) 10年以内(うち据置期間5年以内
利率 基準利率。ただし、女性の方、35歳未満または55歳以上の方など、一定の要件に該当する場合は特別利率が適用されます
担保・保証人 希望を伺いながら相談。経営者保証免除特例制度との併用が可能
提出書類 創業計画書の提出等により、事業計画の内容が確認されます
※出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(2026年7月時点)。利率(基準利率・特別利率A/B/C)は市場金利の動向により随時改定されます。最新の利率は必ず同公庫「金利情報」でご確認ください。審査の結果、ご希望に沿えないことがあります。
◆ 「据置期間5年以内」の意味を、正しく理解してください

据置期間とは、元金の返済を待ってもらい、利息だけを支払う期間のことです。
創業直後は、売上が立つまでに時間がかかります。この期間に元金の返済まで背負うと、資金繰りが持ちません。
据置期間を使えば、その間の返済負担は利息だけになります。
ただし——据置期間が終われば、元金の返済が始まります。しかも、返済期間の残りが短くなっている分、毎月の元金返済額は大きくなります。
「据置期間があるから安心」ではありません。「据置期間が終わった月から、いくら返すのか」を、先に計算しておいてください。

03自己資金要件は撤廃された。だが、なくなっていない

ここは、正確に書く必要がある。

2024年3月に、旧「新創業融資制度」が廃止された。

この制度には、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できること」という要件があった。

その要件が、制度としては撤廃された。

——だから、インターネット上にはこういう記事が並ぶ。

「自己資金ゼロでも創業融資が受けられる」

これは、半分だけ正しい。

制度上の要件としては、撤廃された。

しかし、審査で自己資金を見なくなったわけではない。

むしろ、逆だ。

一律の数値基準がなくなった分、「その人が、どういう人か」を自己資金の履歴から読み取る比重が上がった——

私は、そう見ている。

自己資金要件の撤廃と、審査で実際に見られていることの違い 「要件がない」と「見られていない」は、別のこと

制度上の要件 ・旧「新創業融資制度」の  自己資金要件(10分の1)は  2024年3月に撤廃された → 数値の下限は、消えた

実際の審査 ・「適正な事業計画」と  「遂行する能力」が要件 ・その判断材料が、通帳 → 履歴は、なお見られている

貸し手が知りたいのは、「金額」ではない 「この人は、計画を立てて、実行し、続けられる人か」

毎月、収入の一部を積み立ててきた履歴は その問いへの、最も強い答えになる

図2:制度上の要件が撤廃されても、審査で通帳が見られなくなるわけではない。むしろ「形成過程」の比重が上がる。

なぜ、自己資金の履歴がこれほど重視されるのか。

理由は、単純だ。

貸し手が知りたいのは、「この人は返すか」だ。

では、返す人と返さない人を、何で見分けるのか。

決算書はない。返済実績もない。

残っているのは、その人が過去に何をしてきたか、だけだ。

毎月、給料が入るたびに、一定額を別の口座に移す。

それを、2年、3年と続ける。

この行動が意味するのは——

「計画を立て、実行し、継続できる人である」

ということだ。

返済も、同じ行為だ。

毎月、一定額を、決まった日に払い続ける。

積立ができる人は、返済もできる。

貸し手は、そう読む。

だから、通帳を見る。

金額ではなく、履歴を

貸し手が何を見ているかの一般的な構造はビジネスローンの審査基準|債務者区分5段階から逆算するに書いた。

創業融資も、根っこは同じだ。

04見せ金は、なぜバレるのか【通帳の履歴】

ここが、この記事の核心だ。

「見せ金」とは、審査を通すために一時的に用意した資金のことだ。

親族や知人から借りて、口座に入金する。

審査が終わったら、返す。

これは、なぜバレるのか。

答えは、「通帳を見れば、分かるから」だ。

それだけだ。

特別な調査は要らない。

図にする。

通帳の履歴から見せ金が判明するメカニズムの比較図 通帳の残高推移 ── 貸し手は、この形を見ている

コツコツ貯めた通帳

毎月、少しずつ増えている 24か月前 →       → 現在

直前に入金された通帳

ずっと、ほぼ横ばい ここで 突然300万円 24か月前 →       → 現在

担当者は、右の通帳を見て、必ずこう聞く 「この入金は、何ですか」

説明できなければ、自己資金として認められない ・「親から借りた」→ 返済義務がある。それは負債であって、自己資金ではない ・「タンス預金です」→ 出所を証明できなければ、認められないことがある ・「贈与です」→ 贈与契約書があれば、認められる可能性がある(要確認)

図3:通帳の残高推移。左は「毎月コツコツ」の形。右は「直前に一括入金」の形。担当者は、この形の違いを見ている。

● 見せ金を使うことの、本当のリスク
  • まず、事実として「バレます」。通帳の提出は必須であり、直近の履歴を確認されます。突然の大口入金は、必ず出所を問われます。
  • 次に、説明できなければ、自己資金として算入されません。結果として、審査上の自己資金はゼロと評価されうる。
  • そして、最も重いのはここです。審査を通すために事実と異なる説明をすれば、それは虚偽の申告です。金融機関を欺いて融資を受ければ、詐欺罪に問われるおそれがあります。
  • さらに、その後の取引が終わります。公庫は創業期だけの相手ではありません。事業が伸びれば、追加融資も、他の制度も使う相手です。最初の一回で信頼を失うことの損失は、金額に換算できません。
  • 結論:やらないでください。これは道徳の話ではなく、合理性の話です。割に合わない。

05自己資金として認められるもの/認められないもの

では、何が自己資金になるのか。

整理する。

なお、個別の取扱いは公庫の判断によります。

必ず、事前に支店に確認してください。

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資金の性質 自己資金として
認められるか
必要な説明・書類
毎月コツコツ積み立てた預金 認められる(最も強い) 通帳の履歴そのものが証拠になる
退職金 認められる可能性が高い 退職金の支給明細等
親族からの贈与 認められる可能性がある 贈与契約書など、返済義務がないことを示す書類
すでに支払済みの開業準備費用 「みなし自己資金」として算入されうる 領収書・契約書(何にいくら払ったか)
現物出資(事業用の資産) 認められる可能性がある 評価の根拠となる資料
親族からの借入 認められない 返済義務があるため、自己資金ではなく負債です
他の金融機関からの借入 認められない 同上。かつ、借入があること自体が審査でマイナスに働きます
出所を説明できない資金 認められないことがある いわゆる「タンス預金」も、出所の説明を求められます
※上記は一般的な整理であり、個別の取扱いは日本政策金融公庫の判断によります。必ず、申込前に最寄りの支店にご確認ください。贈与を受ける場合、贈与税の課税関係が生じることがあります。税務については税理士にご相談ください。
自己資金として認められるものと認められないものの対比図 その資金に、返済義務はありますか

自己資金になりうる

・毎月コツコツ積み立てた預金 (最も強い。履歴が証拠になる) ・退職金(支給明細がある) ・親族からの贈与 (贈与契約書が必要) ・すでに払った開業準備費用 (領収書を保管しておくこと) ・現物出資(事業用の資産)

自己資金にならない

・親族からの借入 (返済義務がある=負債) ・他の金融機関からの借入 (同上。かつ、審査でマイナス) ・出所を説明できない資金 (いわゆるタンス預金も含む) ・審査のために一時的に  用意した資金(見せ金)

判断の基準は、たった一つ ── 「返済義務があるかどうか」

図4:自己資金として認められるかどうかは、「返済義務があるか」で決まる。個別の取扱いは公庫の判断によります。事前に支店へご確認ください。

▲ 「みなし自己資金」を、忘れている人が多い

創業の準備として、すでに支払ってしまったお金があるはずです。
店舗の契約金、内装工事の着手金、機材の購入、ホームページの制作費、開業に向けた研修費用——。
これらは「すでに事業に投下した自己資金」として、算入できる可能性があります。
そのためには、領収書・契約書・振込控えを、すべて保管しておくこと。
「通帳の残高が減ってしまった」と落ち込む必要はありません。減った理由が、事業への投資であれば、それは自己資金の一部です。
ただし、算入の可否は公庫の判断によります。事前に相談してください。

創業期を越え、事業が回り始めたあとの選択肢|アクト・ウィル株式会社
創業融資は、公的な制度から検討するのが原則です。ただし、事業が動き出したあと、公庫の返済が始まった段階で、追加の運転資金が必要になることがあります。アクト・ウィル株式会社は、法人向けの事業資金ローンを取り扱う登録貸金業者です。審査は最短60分。※お申込み時間帯・審査状況により、翌営業日以降となる場合があります。創業直後・実績がない段階では、審査は厳しくなります。まずは公庫・制度融資を優先してください。
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※登録番号は金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」で照合できます。
※条件は2026年7月時点の同社公表値です。借入は返済義務を伴います。金利は日本政策金融公庫より高くなります。まず公的融資を検討してください。

06落ちた人が見落としていた3つの数字

ここからは、逆算で書く。

創業融資に落ちた人を、私は多く見てきた。

その人たちに共通していたことがある。

3つの数字を、持っていなかった。

売上の予測は、ほとんどの人が持っている。

だが、この3つを出せる人は、少ない。

創業融資の審査で問われる3つの数字 この3つを、円で答えられますか

1 自己資金の 「形成過程」 いつから、毎月 いくら貯めてきたか 金額ではなく、履歴 を聞かれている

2 自分の生活費 (月いくら) 家賃・食費・保険・ 税金・教育費 ここを出さずに 返済計画は立たない

3 損益分岐点 売上高 月いくら売れば、 赤字にならないか 「売上目標」ではなく 「最低ライン」

面談で、この3つを即答できる人は、まず落ちない 数字を持っているということは、事業を「金の流れ」で理解しているということ 貸し手が見ているのは、熱意ではなく、この理解の深さです

図5:創業融資で問われる3つの数字。売上予測は、ほとんどの人が持っている。だが、この3つを持っている人は少ない。

数字2:自分の生活費を、なぜ聞かれるのか

これは、意外に思われることが多い。

「事業の融資なのに、なぜ私の生活費を聞くのか」

理由は、こうだ。

個人事業なら、事業の利益から生活費を引いた残りが、返済原資になる。

法人でも、役員報酬を払うのだから、同じことだ。

つまり——

生活費が月40万円必要な人と、月20万円で回せる人では、必要な利益がまったく違う。

生活費を出さずに立てた返済計画は、計画ではない。

ここを聞かれて即答できないと、「この人は、自分の事業を金の流れで理解していない」と読まれる。

それが、致命的だ。

数字3:損益分岐点売上高

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項目 金額(例) 説明
月の固定費(家賃・人件費・光熱費等) 500,000円 売上がゼロでも出ていく費用
自分の生活費(役員報酬・生活費) 300,000円 ここを忘れる人が多い
公庫への月返済額 100,000円 据置期間が終わったあとの金額で計算する
毎月、必ず出ていく金額 900,000円
粗利率(想定) 40% 売上に対する粗利益の割合
損益分岐点売上高(月) 2,250,000円 900,000円 ÷ 40% = 225万円
1日あたりの必要売上(月25日営業) 90,000円 ここまで落とし込むと、現実味が測れる
※上表は計算の考え方を示す例です。実際の数値は業種・立地・規模により大きく異なります。据置期間中は元金返済がないため、返済額の欄は「据置期間終了後」の金額で試算することが重要です。
◆ 「1日9万円」まで落とすと、計画が現実になる

月225万円と言われても、多いのか少ないのか、感覚がつかめません。
ですが、「1日9万円」まで落とすと、急に現実味を帯びます。
客単価3,000円なら、1日30人。客単価1万円なら、1日9人
「その人数は、本当に来るのか」——ここまで来て、はじめて計画の検証が始まります。
面談でこの数字を出せる人は、強い。数字が、そのまま事業への理解の深さを示しているからです。
月次の資金の動きを表にする方法は資金繰り表の作り方(銀行に出す月次表と、自分を守る日繰り表)で解説しています。創業前から作ってください。

07創業計画書|8項目の書き方

公庫の創業計画書には、記入する項目が決まっている。

それぞれの項目で、何が見られているのか。

貸し手の目線で書き直す。

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# 項目 本当に見られていること 書き方のポイント
1 創業の動機 思いつきか、準備してきたか 「いつから準備し、何をしてきたか」を時系列で書く
2 経営者の略歴 最重要。同業種での経験年数 その業界で何年働き、何ができるようになったかを具体的に。未経験なら、それを補う根拠を示す
3 取扱商品・サービス 何で、いくらの利益を取るのか 売価と原価を書く。粗利率を明示する
4 取引先・取引関係等 売上の当てがあるか すでに見込み客・契約予定先があるなら、必ず書く。これは強い材料になる
5 従業員 人件費の規模と、無理がないか 雇う予定なら、その人件費を収支計画に反映する
6 お借入の状況 個人の借入・カードローン・リボ払い 隠さない。信用情報で分かる。正直に書き、返済計画を説明する
7 必要な資金と調達方法 自己資金の額と、その出所 設備資金と運転資金を分けて書く。自己資金の裏付けは通帳
8 事業の見通し 売上の根拠と、損益分岐点 「単価×客数×稼働日数」で積み上げる。願望ではなく、計算にする
※創業計画書の様式・記載項目は改定されることがあります。最新の様式は日本政策金融公庫「書式ダウンロード」で確認してください。
● 項目6「お借入の状況」で、嘘をつかないでください
  • 個人の借入・クレジットカードのリボ払い・キャッシング・奨学金——これらは、信用情報機関の情報で確認されます。
  • 隠しても、分かります。そして、隠したこと自体が、決定的な不信を招きます。
  • 借入があること自体は、即座に否決の理由になるとは限りません。正直に申告し、返済計画を説明できれば、話は進みます。
  • 致命的なのは、隠すことです。「この人は、都合の悪いことを隠す人だ」——そう評価された時点で、その後の説明は届きません。
  • なお、税金・社会保険料の滞納がある場合も、正直に申告してください。滞納があると審査は厳しくなりますが、先に「換価の猶予」等の手続きをとることで、道が開けることがあります。詳しくは税金・社会保険料を滞納すると融資はどうなるか(換価の猶予を先に使う)を。

08面談で聞かれること

創業融資には、面談がある。

ここで、計画書に書いたことを「自分の言葉で説明できるか」が試される。

誰かに書いてもらった計画書は、ここで露呈する。

よく聞かれることを並べる。

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質問 質問の意図 準備しておくこと
この自己資金は、どうやって貯めましたか 形成過程の確認(=見せ金のチェック) 通帳を開いて、自分で説明できるようにしておく
この業界で、何年働いていましたか 実行能力の確認 職務経歴を、具体的な業務内容とともに話せるように
売上の予測は、どう計算しましたか 数字が「願望」か「計算」か 単価×客数×稼働日数で説明する
毎月の生活費は、いくらですか 返済原資の前提 家計を把握しておく。即答する
月いくら売れば、赤字になりませんか 損益分岐点の理解 固定費 ÷ 粗利率 で答える
売上が計画の7割だったら、どうしますか 最も重要な質問。悲観シナリオへの備え 「固定費をここまで削る」「この収入で補う」と具体的に答える
すでに決まっている取引先はありますか 売上の確度 見込み客・契約予定先があれば、資料を持参する
※実際の面談内容は、担当者・案件により異なります。上表は一般的な傾向の整理です。

この表で、6行目に注目してほしい。

「売上が計画の7割だったら、どうしますか」

この質問に、即答できるかどうか。

ここが、分かれ目だ。

多くの人は、こう答える。

「そうならないように頑張ります」

これは、答えになっていない。

貸し手が知りたいのは、「うまくいかなかったときに、それでも返せるか」だ。

だから、こう答える。

「売上が7割なら、月商は◯円になります。

そのとき、粗利は◯円。

固定費は、◯を削って◯円まで下げられます。

自分の役員報酬を◯円まで落とせば、返済は続けられます。

それでも足りない場合は、◯か月分の預金で持ちこたえます」

これが、答えだ。

この答えを持っている人に、貸し手は安心する。

09申込から入金までのタイムライン

創業融資の申込から入金までのタイムライン 申込から入金まで ── 時間がかかることを前提に動く

準備 創業計画書 通帳・見積書

申込 書類提出

面談 1時間前後 通帳を見られる

審査 必要に応じ 現地確認

契約・入金 送金

申込から入金まで、一般に1か月前後を見込む(案件により異なる)

だから、「開店の1か月前に申し込む」では遅い 物件の契約・内装工事の着手金は、融資が下りる前に発生することが多い

図6:申込から入金までのタイムライン。期間は案件により異なる。開業スケジュールから逆算して、余裕をもって動くこと。

10落ちたときに、やってはいけないこと

最後に、最も大事なことを書く。

創業融資に落ちることは、ある。

そして、落ちた直後が、いちばん危ない。

なぜなら、すでに物件を契約し、内装を発注し、開業日を決めているからだ。

後戻りできない状態で、資金が足りない。

ここで、何をしてしまうか。

カードローンを、複数社から借りる。

これが、最悪の一手だ。

個人の信用情報に、借入が積み上がる。

そうなると、半年後の再申込は、さらに難しくなる。

断られた直後に何が起きるかを、可視化した記事がある。

融資を断られた直後が、一番危ない(多重債務への転落ルートを可視化する)

読んでほしい。

そして、落ちたときの正しい手順は、こうだ。

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やること やってはいけないこと
否決の理由を、聞く(明確な理由は開示されないことが多いが、聞く価値はある) 理由を確認せず、すぐ別の先に申し込む
3つの数字を、作り直す(自己資金の履歴・生活費・損益分岐点) 計画書の文章だけを直して、再提出する
制度融資・信用保証協会の創業枠を検討する ノンバンクのカードローンで埋める
開業スケジュールそのものを、遅らせる 予定通り開業して、運転資金が尽きるのを待つ
自己資金を、あと数か月かけて積み上げる 親族から借りて、自己資金に見せかける
商工会議所・よろず支援拠点に相談する(無料) 「必ず通します」とうたう有料の代行業者に頼る
※創業融資の可否は各金融機関の審査によります。「必ず審査に通る」と保証する業者は、そもそも信用できません。審査の可否を保証することは、金融機関にしかできません。公的な支援機関(商工会議所・商工会・よろず支援拠点等)は、無料で相談に応じています。
▲ 「開業を遅らせる」という選択を、恐れないでください

融資が下りなかった。しかし、物件は押さえた。開業日も告知した。
——ここで「予定通りやる」と決めてしまうことが、いちばん危険です。
運転資金が足りない状態で開業すれば、売上が立つ前に資金が尽きます。そして、そこから高コストの調達に走ることになります。
開業を3か月遅らせて、自己資金を積み上げ、計画を作り直して再申込する。
これは「後退」ではありません。生き残るための、前進です。
公的な支援制度の全体像はノンバンクの前に使うべき公的支援(セーフティネット貸付・保証協会・納税の猶予)で整理しています。また、調達手段そのものの全体像は事業資金の調達方法12種類(検討順に並べた)を。

個人事業主・フリーランスの売掛金を、オンライン完結で資金化|QuQuMo online
創業して事業が動き始めると、今度は「入金までのサイト」が資金繰りを圧迫します。売掛金があるのに、現金がない——この状態を埋める手段の一つがファクタリングです。QuQuMo onlineは法人・個人事業主のいずれも対象。手数料1%〜(上限の記載なし)。クラウドサインによる完全オンライン完結で、面談は不要。最短2時間での入金に対応。提出書類は請求書・通帳の2点のみ(+代表者本人確認書類)。運営:株式会社アクティブサポート/東京都豊島区南池袋2-13-10。
手数料 1%〜最短2時間請求書・通帳の2点面談不要個人事業主も可

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※2026年7月時点の同社公表値です。手数料は「1%〜」と表記されており、上限の記載はありません。実際の手数料は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。お申込みの時間帯や審査状況により、入金が翌営業日以降となる場合があります。個人事業主の場合、開業届または確定申告書一式等の提出が必要です。創業直後で売掛先の実績が乏しい場合、審査は厳しくなります。ファクタリングは債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。手数料は金利ではなく、債権売買の対価です。手数料は1回ごとに発生するため、反復利用すると負担が累積します。

FAQよくある質問

自己資金がゼロでも、創業融資は受けられますか。
2024年3月に旧「新創業融資制度」が廃止され、制度上の一律の自己資金要件は撤廃されました。しかし、審査で自己資金を見なくなったわけではありません。現行の「新規開業・スタートアップ支援資金」でも、「適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」が対象とされ、創業計画書の提出により事業計画の内容が確認されます。自己資金は、その人の計画性・継続性を示す最も強い材料です。ゼロでも申し込むことはできますが、審査は相応に厳しくなると考えてください。なお、すでに支払済みの開業準備費用は「みなし自己資金」として算入されうるため、領収書は必ず保管してください。
見せ金は、どうやってバレるのですか。
通帳の履歴で分かります。創業融資の申込では、通帳(またはその写し)の提出が求められ、直近の入出金の履歴が確認されます。長期間ほぼ横ばいだった残高が、申込の直前に突然数百万円増えていれば、担当者は必ず「この入金は何ですか」と聞きます。特別な調査は必要ありません。通帳を見るだけです。そこで説明できなければ、自己資金として認められない可能性が高くなります。また、親族からの借入は返済義務があるため、自己資金ではなく負債です。贈与であれば、贈与契約書などで返済義務がないことを示す必要があります。さらに重要なのは、事実と異なる説明をすれば虚偽の申告になり、詐欺罪に問われるおそれがあるということです。
親から借りたお金は、自己資金になりますか。
なりません。返済義務があるものは、自己資金ではなく負債です。ただし、贈与として受け取った場合は、自己資金として認められる可能性があります。その場合、贈与契約書など、返済義務がないことを示す書類の提出を求められることがあります。なお、贈与を受けると贈与税の課税関係が生じることがあるため、税務については税理士にご相談ください。個別の取扱いは日本政策金融公庫の判断によりますので、申込前に最寄りの支店にご確認ください。「借りたお金を、贈与だと説明する」——これは虚偽の申告にあたります。行わないでください。
新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額と返済期間を教えてください。
2026年7月時点の公表情報では、融資限度額は7,200万円です。返済期間は、設備資金が20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金が10年以内(うち据置期間5年以内)とされています。対象は、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方です。利率は基準利率が原則ですが、女性の方、35歳未満または55歳以上の方など、一定の要件に該当する場合には特別利率が適用されます。担保・保証人については、希望を伺いながら相談する形とされ、経営者保証免除特例制度との併用が可能です。利率は市場金利の動向により随時改定されるため、最新の条件は必ず日本政策金融公庫の公式サイトで確認してください。
面談で、いちばん重要な質問は何ですか。
「売上が計画の7割だったら、どうしますか」——この質問です。多くの人は「そうならないように頑張ります」と答えますが、これは答えになっていません。貸し手が知りたいのは、うまくいかなかったときに、それでも返せるかどうかです。したがって、「売上が7割なら月商はいくらになり、粗利はいくらで、固定費をどこまで削れて、役員報酬をいくらまで落とせば返済は続けられる」——ここまで具体的に答えてください。この答えを持っている人は、事業を金の流れで理解している人です。貸し手は、そこに安心します。熱意ではなく、数字で答えてください。
創業融資に落ちました。次に何をすればよいですか。
まず、決してやってはいけないことがあります。カードローンやキャッシングを複数社から借りて資金を埋めること。これをすると個人の信用情報に借入が積み上がり、再申込がさらに難しくなります。やるべきことは、3つです。第一に、3つの数字(自己資金の形成過程・自分の生活費・損益分岐点売上高)を作り直すこと。第二に、制度融資や信用保証協会の創業枠を検討すること。第三に、必要なら開業スケジュールそのものを遅らせ、自己資金を積み上げてから再申込することです。開業を3か月遅らせるのは後退ではありません。生き残るための前進です。商工会議所・商工会・よろず支援拠点は、無料で相談に応じています。

まとめ

創業融資の面談で、担当者が最初に手に取るのは、事業計画書ではない。

通帳だ。

そして、見ているのは残高ではなく、履歴だ。

毎月、いくら貯めてきたか。

それを、何年続けてきたか。

積立ができる人は、返済もできる。

貸し手は、そう読む。

だから、直前に一括で入った大口入金は、必ず問われる。

「この入金は、何ですか」

見せ金は、派手な調査でバレるのではない。

通帳を、めくられるだけだ。

——制度上の自己資金要件は、2024年3月に撤廃された。

だが、なくなっていない。

一律の数値がなくなった分、「その人がどういう人か」を履歴から読む比重が上がった。

そして、落ちる人が共通して持っていないのは、この3つだ。

①自己資金の形成過程②自分の生活費③損益分岐点売上高

売上の予測は、ほとんどの人が持っている。

この3つを、円で即答できる人は、少ない。

——落ちたときに、カードローンで埋めないでほしい。

その一手が、次の道を塞ぐ。

開業を3か月遅らせて、自己資金を積み、計画を作り直す。

それは後退ではない。

生き残るための、前進だ。

出典・参考
日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
日本政策金融公庫「金利情報」
日本政策金融公庫「創業支援」
中小企業庁
ミラサポplus(中小企業向け補助金・総合支援サイト)
金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」
e-Gov 法令検索「貸金業法」

相談窓口
金融庁 金融サービス利用者相談室:0570-016811/日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター:0570-051051/警察相談専用電話:#9110

監修:黒岩 智之(くろいわ ともゆき)
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年。地方銀行の融資審査部に9年在籍後、独立。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。

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