不動産担保ローン|金利は下がるが、失うものが増える

ビジネスローン・融資
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不動産担保ローン|金利は下がるが、失うものが増える

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • 不動産担保ローンは、金利と引き換えに「失うもの」を差し出す取引である。無担保のビジネスローンが概ね年3.0〜18.0%であるのに対し、不動産担保ローンは銀行系で概ね年1%台〜8%台、ノンバンク系で概ね年2%台〜10%程度が相場とされる。
  • 500万円を5年で借りた場合、年4.0%なら利息は約52万円、年12.0%なら約167万円。差は約115万円。金利差は、確かに大きい。
  • だが、担保に入れた不動産は返せなくなれば競売にかけられる。自宅なら、住む場所を失う。そして、競売代金で足りなければ、残った債務は消えない。
  • LTV(担保掛目)は評価額の60〜80%程度が一つの目安。「時価3,000万円の自宅なら3,000万円借りられる」わけではない。
  • 根抵当権を設定すると、極度額の枠内で繰り返し借りられる。便利だが、抹消の手続きが重く、他行への借換えが難しくなるという副作用がある。

「金利が下がりますよ」

不動産担保ローンの説明は、たいてい、この一言から始まる。

そして、その言葉は正しい。

担保があれば、金利は下がる。

貸し手のリスクが下がるからだ。

だが、貸し手のリスクが下がったということは——

そのリスクが、どこかへ移動したということだ。

どこへ移ったのか。

あなたの不動産に、移った。

これが、この記事の全部だ。

無担保のビジネスローンなら、返せなくなったとき、失うのは信用と、場合によっては保証人との関係だ。

不動産担保ローンで返せなくなったとき、失うのは——

建物と、土地と、そこに住んでいる家族の生活の場だ。

そして、競売で売れた金額が債務に足りなければ、残りの債務は残る。

不動産を失って、なお借金が残る。

これが起こりうる。

——だからといって、「不動産担保ローンを使うな」という記事では、ない。

この記事が書くのは、トレードオフの正体だ。

金利(コスト)と、担保(失うもの)。

この2つを、同じ表に並べる。

そして、返せなかったときに何が起きるかを、時系列で見せる。

競売の申立てから、退去までを。

それを見たうえで「それでも使う」と判断したなら、それは正しい判断だ。

見ないまま「金利が安いから」で決めるのが、危ない。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。金利・担保掛目・諸費用は各金融機関により大きく異なり、掲載している数値は2026年7月時点の一般的な相場観です。実際の条件は必ず各社の公式サイト・契約書面でご確認ください。融資には審査があります。不動産の担保提供・競売・任意売却に関する具体的な判断は、弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。

01結論:金利と担保は、トレードオフである

金融の世界には、たった一つの原理がある。

リスクは、消えない。移動するだけだ。

貸し手が「金利を下げる」と言うとき、そこには理由がある。

返ってこなかったときに、回収できる見込みが立ったからだ。

不動産担保ローンでは、その見込みが「不動産」だ。

だから金利は下がる。

そして、返せなかったときの損失は、あなたの側に集中する。

これを、一枚の図にする。

無担保ビジネスローンと不動産担保ローンのトレードオフ構造 金利が下がった分、失うものが増える

無担保ビジネスローン

コスト(金利) 年3.0〜18.0%

返せなかったときに失うもの 小さい

・信用情報に事故情報が載る ・保証人がいれば請求が及ぶ ・法的手続きに進む可能性 ・住む場所は、原則として残る

不動産担保ローン

コスト(金利) 年1%台〜10%程度

返せなかったときに失うもの きわめて大きい

・担保不動産が競売にかけられる ・自宅なら、退去を求められる ・売却代金で足りなければ  残債は、なお残る

図1:金利が下がるのは、貸し手のリスクが下がったから。そのリスクは消えたのではなく、担保不動産に移っている。

■ 二分法で考える
  • コストの問題は、円で測れます。「年◯%で、総額いくら払うか」で比較できます。
  • 失うものの問題は、円では測れません。住む場所、家族の生活、次に借りるときの選択肢——これらは金額に換算できません。
  • 不動産担保ローンの判断が難しいのは、この2つを同じ天秤に乗せなければならないからです。
  • だから、コストの側だけを見て決めてはいけない。「金利が安い」は、判断材料の半分でしかありません。

02金利は、どれだけ下がるのか(実額で見る)

まず、得られるものを正しく評価する。

金利差を、円で見る。

500万円を、5年(60回)で返す。

元利均等返済で計算した。

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金利(実質年率) 毎月の返済額 総返済額 利息の総額 想定される手段
年4.0% 約 92,081円 約 5,524,878円 約 524,878円 不動産担保ローン(低め)
年6.0% 約 96,664円 約 5,799,842円 約 799,842円 不動産担保ローン(中位)
年9.0% 約 103,797円 約 6,227,806円 約 1,227,806円 不動産担保ローン(高め)/無担保(低め)
年12.0% 約 111,222円 約 6,673,338円 約 1,673,338円 無担保ビジネスローン(中位)
年15.0% 約 118,955円 約 7,137,281円 約 2,137,281円 無担保ビジネスローン(上限側)
※元利均等返済・年率を12で割った月利で計算した概算です(500万円・60回)。実際の返済額は各社の計算方法・端数処理により異なります。年15.0%は、元本100万円以上における利息制限法1条の上限です。別途、事務手数料・登記費用等がかかります(第5章参照)。融資には審査があります。
500万円を5年借りたときの金利別の利息総額の比較 500万円・5年 ── 利息の総額は、金利で3倍以上変わる

年4.0% 約 52万円

年6.0% 約 80万円

年9.0% 約 123万円

年12.0% 約 167万円

年15.0% 約 214万円

年4.0%と年12.0%の差 = 約115万円(5年間)

図2:500万円・5年の利息総額。金利4%と12%では、5年で約115万円の差が出る。この差が、不動産担保ローンの「得られるもの」。

約115万円。

これが、担保を差し出すことで得られる金額だ。

決して小さくない。

この金額を無視して「担保は危険だ」と言うのは、公平ではない。

金額が大きいほど、期間が長いほど、金利差の効果は大きくなる。

3,000万円を10年借りるなら、差は数百万円になる。

だから、不動産担保ローンは「大きな金額を、長く借りる」ときにこそ、意味がある。

逆に言えば——

「少額を、短期間だけ」借りるために不動産を担保に入れるのは、割に合わない。

登記費用も事務手数料も、借入額に関係なく一定の負担がかかるからだ。

ビジネスローンの金利水準と総支払額の全体像はビジネスローンの金利|100万・500万を借りたら総額いくら返すのかで計算表にしている。

そもそもビジネスローンとは何かという整理はビジネスローンとは(銀行融資・日本政策金融公庫との違いを金利で比較)を先に読んでほしい。

金利の相場観(2026年7月時点)

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種別 金利の相場 スピード 審査の厳しさ
日本政策金融公庫(担保有) 年2.50%〜4.80%程度 2週間〜1か月 計画重視
銀行系の不動産担保ローン 概ね年1%台〜8%台 数週間 厳しい
ノンバンク系の不動産担保ローン 概ね年2%台〜10%程度 数日〜2週間程度 やや柔軟
無担保のビジネスローン 概ね年3.0%〜18.0% 最短即日〜数日 相対的に柔軟
ファクタリング(参考) 買取手数料(金利ではない) 最短30分〜数時間 売掛先の信用力が中心
※2026年7月時点で公表されている情報に基づく一般的な相場観です。実際の適用金利は、担保物件の評価・所在地・築年数・申込者の財務状況等により決まり、各社で大きく異なります。必ず各社の公式サイトで最新の条件を確認してください。日本政策金融公庫の利率は同公庫「金利情報」で確認できます。すべて審査があります。
◆ 公的支援を先に検討していますか

不動産を担保に入れる前に、確認してほしいことがあります。
日本政策金融公庫の担保付き融資は、年2.50%〜4.80%程度(2026年7月時点の基準利率の目安)で、多くのノンバンク系不動産担保ローンより低い水準です。
また、信用保証協会付き融資を使えば、無担保でも銀行から借りられる可能性があります(保証料率 年0.45%〜1.90%の9区分が上乗せされます)。
「不動産を担保に入れる」という判断は、これらを検討し尽くしたあとで行うものです。ノンバンクの前に使うべき公的支援(セーフティネット貸付・信用保証協会)で順序を整理しています。

03LTV(担保掛目)|評価額の全額は借りられない

ここから、実務の話に入る。

「時価3,000万円の自宅があるから、3,000万円借りられる」

——これは、成立しない。

理由は担保掛目にある。

金融の実務では「ローン・トゥ・バリュー」とも呼ばれる指標だ。

担保評価額に対して、いくらまで貸すかの割合だ。

一般に評価額の60〜80%程度が目安とされる。

(金融機関・物件により大きく異なります)

そして、もう一つ。

「評価額」は、売買価格ではない。

金融機関が独自に算定する、担保としての価値だ。

これが、市場での売買相場より低くなることが多い。

なぜか。

競売になったときに、確実に回収できる金額を想定するからだ。

市場価格から実際の融資可能額までが目減りしていく担保掛目の構造 3,000万円の自宅で、いくら借りられるのか

① 市場での売買相場(時価) 3,000万円

金融機関が独自に評価し直す

② 金融機関の担保評価額 2,400万円(相場の8割で評価した例)

担保掛目(LTV)60〜80%をかける

③ 融資可能額の上限 1,440万円〜1,920万円

住宅ローンの残債があれば、その分を差し引く

④ 実際に借りられる額 住宅ローン残債1,000万円なら…

440万円〜920万円

図3:市場価格3,000万円の自宅でも、住宅ローン残債があれば、実際に借りられるのは数百万円ということが起こる。担保掛目・評価方法は金融機関により異なる。

この図が示すのは、一つの事実だ。

担保に入れる不動産に住宅ローンが残っていると、借りられる額は大きく減る。

住宅ローンの抵当権は、先に登記されている

だから、その金融機関が先に回収する権利を持つ(これを第一順位という)。

後から設定する担保は、第二順位以下になる。

第二順位の担保は、競売になったとき、第一順位が満額回収した残りからしか回収できない。

だから、貸し手はより慎重になり、金利は上がり、貸せる額は減る。

「自宅がある」だけでは、条件は決まらない。

「自宅に、どれだけの担保余力が残っているか」が、条件を決める。

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要素 評価が上がる方向 評価が下がる方向
所在地 都市部・駅近・需要が厚い地域 地方・過疎地・需要が薄い地域
種別 土地(更地)・区分マンション 築古の戸建・特殊用途の建物
築年数 新しい(建物の評価が残る) 古い(建物の評価がほぼゼロになる)
権利関係 単独所有・抵当権なし 共有・借地権・既存の抵当権あり
接道・形状 整形地・道路付けが良い 再建築不可・不整形地・私道負担
担保順位 第一順位 第二順位以下(金利が上がる/額が減る)
※評価方法は金融機関により異なり、路線価・公示地価・取引事例・収益還元法などが組み合わされます。上表は一般的な傾向であり、個別の評価を保証するものではありません。

04抵当権と根抵当権の違い

ここは、実務で最も誤解が多い。

抵当権根抵当権

一文字違うだけだが、性質はまったく違う。

そして、事業資金の借入では根抵当権が設定されることが多い。

なぜか。

繰り返し借りられるからだ。

便利だ。

——だが、その便利さには副作用がある。

抵当権と根抵当権の違いを示す対比図 抵当権と根抵当権 ── 一文字で、性質が変わる

抵当権 1つの債権に、1つの担保

借入 1,000万円 抵当権 1,000万円

・返済が進めば、担保される  金額も減っていく ・完済すれば、抵当権は消える  (抹消登記をすれば終わり) ・追加で借りるには、  もう一度、設定が必要 → 出口が、はっきりしている

根抵当権 「極度額」の枠で、繰り返し

借入 → 返済 → また借入 極度額 1,200万円

・枠内なら、何度でも借りられる  (登記をやり直さなくてよい) ・完済しても、登記は自動では  消えない(元本確定が必要) ・他行への借換え・売却の  際に、交渉が要る → 入りやすく、出にくい

図4:抵当権は「1つの債権に1つの担保」。根抵当権は「極度額の枠内で繰り返し」。便利さと引き換えに、抜けにくくなる。

▲ 根抵当権の「極度額」に注意してください
  • 極度額は、実際の借入額より大きく設定されるのが通常です。1,000万円借りるのに、極度額1,200万円というように、利息・遅延損害金・費用を見込んだ余裕が上乗せされます。
  • 登記される「担保の重さ」は、実際の借入額ではなく極度額です。登記簿を見た他の金融機関は、その極度額の分だけ担保が埋まっていると評価します。
  • したがって、「500万円しか借りていないのに、極度額1,000万円が登記されている」と、担保余力は1,000万円分埋まったものとして扱われかねません。
  • 登録免許税は、極度額の0.4%(根抵当権設定登記の場合)。極度額が大きいほど、登記費用も上がります。
  • 契約前に、「極度額はいくらか」「元本確定はどういう条件で行えるか」を必ず確認してください。

05金利以外にかかる費用を、積み上げる

不動産担保ローンには、金利以外の費用がかかる。

これを計算に入れないと、「金利が安い」という判断が狂う。

積み上げてみる。

不動産担保ローンの初期費用の内訳を示す積み上げ図 500万円を借りるのに、初期費用はいくらか(例)

事務手数料(借入額の0〜3%程度) 0〜150,000円

登録免許税(債権額・極度額の0.4%) 20,000円〜

司法書士報酬(登記手続き) 数万円程度

印紙税(契約書に貼付) 契約金額による

不動産調査費用・その他 各社による

初期費用は、数万円〜数十万円になることがある

図5:初期費用の内訳。借入額が小さいほど、この固定的な費用が相対的に重くなる。「少額・短期に不動産担保は割に合わない」理由。

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費用項目 金額の目安 誰に払うか 備考
事務手数料 借入額の0〜3%程度 貸し手 各社により大きく異なる。定額の場合もある
登録免許税 債権額(根抵当権なら極度額)× 0.4% 国(登記の際に納付) 抵当権・根抵当権の設定登記に必要
司法書士報酬 数万円程度(案件による) 司法書士 登記手続きの代理を依頼する場合
印紙税 契約金額に応じた額 国(印紙の貼付) 金銭消費貸借契約書に貼付
不動産調査・鑑定費用 各社による(無料の場合もある) 貸し手または鑑定業者 事前に有無を確認すること
火災保険 物件・契約による 保険会社 加入が条件となる場合がある
抹消登記費用 不動産1個につき1,000円+司法書士報酬 国・司法書士 完済後に必要。忘れると登記に残り続ける
※2026年7月時点の一般的な整理です。登録免許税の税率・軽減措置は法改正により変わることがあります。実際の費用は物件・契約内容・依頼先により異なります。正確な金額は、必ず契約前に金融機関から書面で提示を受けてください。
● 「実質年率」で聞いてください

貸金業者が提示する「実質年率」には、原則として事務手数料などの費用が含まれます。利息制限法6条は、礼金・手数料・調査料などを、名目のいかんを問わず「みなし利息」として扱うと定めています。
つまり、「手数料」という名前をつけても、それは実質的に利息として扱われるということです。
したがって、比較すべきなのは表面上の金利ではなく、「実質年率が年何%になるか」です。
契約前に、必ず「この条件だと、実質年率は年何%になりますか」と聞いてください。答えられない相手とは、契約しないほうがよい。

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06返せなかったとき、何が起きるか【時系列】

ここが、この記事の中心だ。

多くの記事は、「返済できないと競売になります」で終わっている。

それでは、伝わらない。

競売とは、何が、どういう順番で、どれくらいの時間をかけて起きることなのか。

時系列で書く。

読むのがつらい章だ。

だが、契約する前に読むべき章でもある。

返済が滞ってから担保不動産の競売・退去に至るまでの時系列 返せなくなった日から、退去までの時系列

① 返済が遅れる 遅延損害金(上限 年20.00%)が発生する。督促が始まる

② 期限の利益を失う 「分割で返す権利」が消える。残債の全額を、一括で請求される

③ 任意売却の打診/競売の申立て この段階なら、まだ「自分で売る(任意売却)」という選択肢がある

④ 競売開始決定 裁判所が手続きを開始する。登記簿に「差押」が記載される

⑤ 現況調査・評価 執行官が自宅に来て、室内を調査し、写真を撮る。近隣の目に触れる

⑥ 期間入札・開札 物件情報が公開され、入札にかけられる。落札者が決まる

⑦ 売却許可決定・代金納付 所有権が落札者に移る。もう、自分の家ではなくなる

⑧ 引渡命令・強制執行(退去) 出ていかなければ、強制的に執行される

この範囲なら、まだ動ける ・リスケの交渉 ・中小企業活性化協議会 ・任意売却(自分で売る) 早く動くほど、選択肢は多い

ここまで来ると ・売却価格を選べない ・退去時期を選べない ・残債が、なお残りうる

図6:返済が滞ってから退去までの時系列。手続きには時間がかかるが、進むほど選択肢は減る。動くなら、早いほうがいい。

この図で、最も伝えたいのは右上の緑の箱だ。

③の段階まで、まだ動ける。

リスケの交渉ができる。任意売却も選べる。

任意売却なら、自分で売却先を探し、価格を交渉し、引越しの時期もある程度は調整できる。

競売とは、まったく違う。

競売は、価格も、時期も、選べない。

執行官が家に来て、室内の写真を撮り、それが物件情報として公開される。

近隣に、伝わる。

これが、「返せなかったとき」の現実だ。

だから、遅れそうだと分かった時点で、すぐに動いてほしい。

金融機関に相談すること自体は、何も悪いことではない。

リスケの手順と、中小企業活性化協議会の使い方はリスケ(返済条件変更)の全手順|中小企業活性化協議会と405事業にまとめている。

07競売で売れても、債務は消えないことがある

ここは、最も誤解が多い部分だ。

「不動産を差し出したのだから、それで借金はチャラになるのだろう」

——ならない。

担保不動産を売っても、債務が全額回収できなければ、残った債務は残る。

計算してみる。

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項目 金額 説明
借入残高 15,000,000円 元本の残り
遅延損害金(滞納期間分) +(年20.00%を上限に発生) 滞納が長引くほど積み上がる
競売の手続き費用 +(申立費用等) 債務者の負担になることがある
回収すべき総額 15,000,000円 + α
競売での売却代金 (市場価格を下回る傾向がある) 売主が価格を選べない。買主は入札で決まる
残る債務 回収総額 − 売却代金 これが残れば、支払義務は続く
※上表は構造を示すための例です。実際の売却価格・費用負担・残債の額は、物件・地域・手続き・契約内容により大きく異なります。競売の売却価格が市場価格をどの程度下回るかは、物件により差があります。個別の見通しについては、弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。
● 「不動産を失って、なお借金が残る」ということが起こりうる
  • これが、不動産担保ローンの最も重い部分です。
  • 担保は「借金の身代わり」ではありません。「回収の手段」です。回収しきれなければ、残りは請求されます。
  • だから、「返せなかったら家を渡せばいい」という発想は、成り立ちません。
  • そうならないために、返済計画は最も悲観的な売上想定で立ててください。「うまくいけば返せる」計画は、計画ではありません。
  • すでに返済が厳しいなら、競売まで進む前に任意売却リスケを検討してください。任意売却のほうが、一般に高く売れる傾向があるとされ、その分だけ残債は減ります。

08それでも不動産担保ローンが合理的な3つのケース

ここまで、リスクを書いてきた。

だが、不動産担保ローンが合理的な場面は、確かに存在する。

公平に、書く。

ケース1:金額が大きく、期間が長い

金利差の効果は、元本 × 期間に比例する。

500万円・5年で約115万円の差なら、3,000万円・10年なら差は数百万円になる。

この規模になると、登記費用や事務手数料を差し引いても、明確に有利になる。

逆に、300万円を6か月だけという使い方には、まったく向かない。

初期費用と手間が、金利差のメリットを食い潰すからだ。

ケース2:返済原資が、明確に見えている

「この不動産を担保に借りて、この事業から返す」

——この線が、数字で引けているか。

売上計画ではない。

キャッシュフローの計画だ。

月々の返済額を、毎月の営業キャッシュフローでまかなえるか。

最も悲観的な想定でも、まかなえるか。

これが「はい」なら、不動産担保ローンは合理的な選択になりうる。

銀行が融資の可否をどう判断しているかはビジネスローンの審査基準|債務者区分5段階から逆算するで、債務償還年数10年ルールまで踏み込んで書いている。

貸し手と同じ物差しで自社を見ておくと、判断を間違えにくい。

ケース3:既存の高金利借入を、集約する

複数のノンバンクから年15%前後で借りている。

その合計が、月々の返済を圧迫している。

この状態から、より低い金利の不動産担保ローンに組み替えるという選択は、理屈としては成り立つ。

ただし——

ここには、決定的な条件がある。

「借入を組み替えた結果、月々のキャッシュフローが本当に改善するか」

そして、「組み替えたあと、また借りないと決められるか」

この2つだ。

金利を下げても、また借りてしまえば、今度は不動産まで失うことになる。

これが、いちばん怖い。

融資を断られた直後に何が起きるかは融資を断られた直後が、一番危ない(多重債務への転落ルート)で可視化している。

09使ってはいけない3つのケース

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使ってはいけないケース なぜ危険か 代わりに検討すべきこと
①「今月の資金繰り」を埋めるため 不動産担保ローンは、審査と登記に時間がかかる。そもそも間に合わない。そして、今月を埋めるために自宅を担保に入れるという判断は、あまりに代償が大きい 公的支援、リスケ、資金繰り表の作成
②返済原資が「これから作る」ものである 「この設備を入れれば売上が伸びるはず」——その伸びが来なかったとき、返済原資はどこにもない。担保だけが残る 補助金、公庫の設備資金、段階的な投資
③家族が反対している/説明していない 自宅を担保に入れるとは、家族の住む場所を賭けること。本人だけの判断で決めてよい話ではない。共有名義なら、そもそも同意が要る まず、家族に数字を見せて話す
※上記は一般的な考え方の整理であり、個別の判断を示すものではありません。融資の可否・条件は各社の審査によります。
▲ 「短期のつなぎ」に不動産担保を使ってはいけない理由

不動産担保ローンは、審査・評価・登記に時間がかかります。「今週中に必要」という資金には、そもそも間に合いません。
にもかかわらず、追い詰められた経営者が「自宅がある」と考えて相談に来ることがあります。
そのとき私が最初に言うのは、こうです。
「その不動産は、最後の切り札です。今、切らないでください。」
切り札を早く切ってしまうと、本当に必要なときに、何も残りません。短期の資金繰りは、短期の手段で埋める。それが原則です。

10申込前チェックリスト

最後に、契約書にサインする前に確認すべきことを並べる。

一つでも「分からない」があれば、その日はサインしない。

不動産担保ローンの契約前に確認すべき8項目のチェックリスト 契約前チェックリスト ── 8項目

1. 実質年率は年何%か(手数料込みで) 上限まで書面で確認

2. 抵当権か、根抵当権か。極度額はいくらか 登記される額を確認

3. 初期費用の総額はいくらか(すべて含めて) 書面で出させる

4. 遅延損害金は年何%か(上限は年20.00%) 利息制限法7条

5. 期限の利益喪失は、どういう条件で起きるか 何回遅れたら?

6. 繰上返済に、手数料はかかるか 早く返して抜けたいときに効く

7. 貸し手は、登録貸金業者か(登録番号を照合したか) 金融庁で検索

8. 家族に、数字を見せて話したか これが、いちばん大事です

図7:契約前チェックリスト8項目。特に7と8は、飛ばされやすい。だが、あとで最も効いてくる。

■ 貸し手が「登録貸金業者」かどうかは、自分で確認できます

事業者向けであっても、金銭を貸し付けることを業として行うには、貸金業の登録(貸金業法11条1項)が必要です。
無登録営業には、10年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金(またはその併科)という重い罰則があります(貸金業法47条)。
登録番号は、金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」で、ご自身の手で照合できます。
「不動産があれば貸します」「審査は不要です」といった言葉を使う相手は、そもそも貸金業法16条に照らして問題があります。これらは違法な広告表現です。不動産を担保に取ろうとする無登録業者は、最も危険な相手です。
根拠条文はe-Gov 法令検索「貸金業法」で確認できます。

不動産を担保に入れる前に、売掛債権という「別の資産」を見る|株式会社No.1
手元に売掛債権があるなら、不動産に手をつける前に、そちらを現金化するという順序があります。ファクタリングは債権の売却であり、担保設定も登記も不要です。買取手数料0.5%〜15%、買取可能額50万円〜3億円。償還請求権なし(ノンリコース)を明記。最短30分での振込に対応、電子契約で全国対応。設立2016年1月7日/資本金8,000万円/代表 濵野邦彦/東京都豊島区東池袋1-18-1 Hareza Tower 20F。
手数料 0.5〜15%最短30分振込50万〜3億円担保・登記不要ノンリコース

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※手数料・スピードは2026年7月時点の同社公表値です。実際の手数料は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。お申込みの時間帯や審査状況により、入金が翌営業日以降となる場合があります。ファクタリングは債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。手数料は金利ではなく、債権売買の対価です。手数料は1回ごとに発生するため、反復利用すると負担が累積します。ファクタリングとビジネスローンの違いでコストを比べたうえでご判断ください。

FAQよくある質問

不動産担保ローンの金利は、どのくらいですか。
2026年7月時点の一般的な相場観としては、銀行系で概ね年1%台〜8%台、ノンバンク系で概ね年2%台〜10%程度とされています。無担保のビジネスローン(概ね年3.0〜18.0%)と比べると、下限も上限も低くなります。ただし、実際の適用金利は、担保物件の評価・所在地・築年数・担保順位・申込者の財務状況によって決まり、各社で大きく異なります。また、金利のほかに事務手数料(借入額の0〜3%程度)、登録免許税、司法書士報酬などの初期費用がかかります。比較すべきは表面金利ではなく、これらを含んだ実質年率です。融資には審査があります。
時価3,000万円の自宅なら、3,000万円借りられますか。
借りられません。まず、金融機関は独自に担保評価を行い、その評価額は市場での売買相場より低くなることが一般的です。そのうえで、担保掛目(LTV)を掛けます。担保掛目は評価額の60〜80%程度が一つの目安です。さらに、住宅ローンが残っている場合は、その残債分が担保余力から差し引かれます。つまり、時価3,000万円・住宅ローン残債1,000万円という物件でも、実際に借りられるのは数百万円程度、ということが起こりえます。担保掛目と評価方法は金融機関ごとに異なるため、事前に確認してください。
抵当権と根抵当権は、どちらがよいのですか。
目的によります。抵当権は「1つの債権に1つの担保」で、完済すれば抹消でき、出口がはっきりしています。根抵当権は「極度額の枠内で繰り返し借りられる」ため、反復して資金需要がある事業には便利です。ただし根抵当権は、完済しても自動では消えず、元本確定の手続きが必要です。また、登記される額は実際の借入額ではなく極度額であるため、他の金融機関から見ると担保余力が極度額の分だけ埋まっているように見えます。結果として、借換えや不動産の売却がしにくくなります。「入りやすく、出にくい」——これが根抵当権の性質です。契約前に、極度額と元本確定の条件を必ず確認してください。
返済できなくなったら、家を渡せば借金は消えますか。
消えるとは限りません。担保不動産を売却しても、その代金が債務の総額(元本+遅延損害金+費用)に足りなければ、残った債務は残ります。「不動産を失って、なお借金が残る」ということが起こりえます。担保は「借金の身代わり」ではなく「回収の手段」だからです。なお、競売による売却価格は、市場価格を下回る傾向があるとされます。返済が厳しくなった場合、競売まで進む前に、リスケの交渉や任意売却を検討してください。任意売却のほうが一般に高く売れる傾向があり、その分だけ残債は減ります。早く動くほど、選択肢は多く残ります。
競売になると、どのくらいの期間で家を出ることになりますか。
期間は事案によって大きく異なりますが、返済の遅延から、期限の利益の喪失、競売の申立て、競売開始決定、現況調査、期間入札、開札、売却許可決定、代金納付、引渡命令——という手続きを順に踏みます。それぞれに時間がかかるため、すぐに退去させられるわけではありません。ただし、手続きが進むほど、選べる余地はなくなります。現況調査では執行官が室内に入り、写真を撮ります。その情報は物件資料として公開されます。もし返済が厳しいなら、この段階に至る前に、金融機関への相談・リスケ・任意売却を検討してください。個別の見通しについては、弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。
今月の資金繰りが厳しいのですが、自宅を担保に借りるべきですか。
おすすめしません。理由は2つあります。第一に、不動産担保ローンは審査・評価・登記に時間がかかるため、「今月」の資金繰りには、そもそも間に合わないことが多いのです。第二に、短期の資金繰りのために自宅を担保に入れるのは、代償が大きすぎます。短期の資金需要は、短期の手段で埋めるのが原則です。まず、日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資などの公的支援、既存借入のリスケ、資金繰り表の作成による支払いの組み替えを検討してください。不動産は、最後の切り札です。早い段階で切ってしまうと、本当に必要になったときに何も残りません。

まとめ

不動産担保ローンは、悪い商品ではない。

金利は、確かに下がる。

500万円・5年なら、年4%と年12%で約115万円の差が出る。

金額が大きく、期間が長いほど、この差は効いてくる。

だが、金利が下がったのは、貸し手のリスクが下がったからだ。

そのリスクは、消えたのではない。

あなたの不動産に、移動した。

返せなくなれば、競売にかけられる。

執行官が家に来て、室内の写真を撮り、それが公開される。

そして——

売却代金で足りなければ、残債は、なお残る。

不動産を失って、借金も残る。

これが、起こりうる。

だから、判断の基準は一つだけだ。

「最も悲観的な想定でも、返せるか」

うまくいけば返せる、ではない。

うまくいかなくても返せるか。

そこに「はい」と答えられないなら——

その不動産は、まだ差し出さないでほしい。

それは、最後の切り札だ。

出典・参考
日本政策金融公庫「金利情報」
金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」
e-Gov 法令検索「貸金業法」
日本貸金業協会「上限金利について」
日本銀行「長・短期プライムレート推移」
中小企業庁「中小企業活性化協議会」
・利息制限法1条(上限金利)/同7条1項(遅延損害金の上限 年20%)/同6条(みなし利息)

相談窓口
金融庁 金融サービス利用者相談室:0570-016811/日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター:0570-051051/警察相談専用電話:#9110

監修:黒岩 智之(くろいわ ともゆき)
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年。地方銀行の融資審査部に9年在籍後、独立。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。

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