資金繰り表の作り方|銀行に出す月次表と、自分を守る日繰り表は別物

資金調達の基礎知識
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資金繰り表の作り方|銀行に出す月次表と、自分を守る日繰り表は別物

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • 資金繰り表には2種類ある銀行提出用の月次資金繰り表と、社内用の日繰り表。目的も粒度も別物だ。
  • 月次表は「返せる根拠」を示す書類。銀行はここで「返済原資が営業活動から生まれているか」を見る。
  • 日繰り表は「いつ現金が尽きるか」を知る道具。1日単位で残高を追い、資金ショート予定日を日付で特定する。
  • 月次表を日繰り表の代わりに使うと、月内の谷が見えない。月末残高がプラスでも、20日に資金が尽きることがある。
  • 銀行が見るのは経常収支がプラスか債務償還年数。この2点を押さえた月次表は、それだけで通りやすくなる。

「資金繰り表を出してください」

銀行にそう言われて、慌てて検索した——

たぶん、そういう方がこのページを開いている。

あるいは、毎月の支払いが不安で、自分の会社がいつ現金が尽きるのかを知りたい方かもしれない。

この2つは、別の道具で解く問題だ。

前者に必要なのは銀行提出用の月次資金繰り表

後者に必要なのは社内用の日繰り表

同じ「資金繰り表」という名前だが、目的も、粒度も、書く内容も違う。

そして、これを混同すると危ない。

月末残高がプラスの月次表を持ちながら、20日に資金がショートする。

これが起きる。

この記事では、両方の作り方を、数値入りの記入例つきで書く。

そして、日繰り表から資金ショート予定日を特定する手順まで踏み込む。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。実際のご契約にあたっては、事前に各社の公式サイトおよび契約書面をご確認いただき、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。掲載している数値・条件は2026年7月時点の公開情報に基づきます。融資・ファクタリングいずれも審査があります。記載の記入例は説明のための架空の数値であり、実在の企業のものではありません。

01資金繰り表は2種類ある(二分法)

まず、この線引きから始める。

誰に見せる表なのか。何を知るための表なのか。

ここが違えば、作り方も変わる。

月次資金繰り表と日繰り表の違い(二分法) 資金繰り表は、2つある

A. 月次資金繰り表 (銀行提出用) 目的:「返せる根拠」を示す 読む人:銀行の融資担当・審査部 粒度:1ヶ月ごと 期間:過去6ヶ月+今後12ヶ月 見せ場:経常収支がプラスか 更新:月1回

「この会社は営業活動から 返済原資を生めるか」を見る

B. 日繰り表 (社内用・自分を守る道具) 目的:「いつ尽きるか」を知る 読む人:社長と、経理の1人だけ 粒度:1日ごと 期間:今日から60〜90日先 見せ場:残高が最も薄くなる日 更新:毎日、または週2回

「資金ショート予定日は 何月何日か」を特定する

図1:月次資金繰り表と日繰り表。前者は「返せる根拠」を示す書類、後者は「いつ尽きるか」を知る道具。

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項目 月次資金繰り表(銀行提出用) 日繰り表(社内用)
目的 返済能力を証明する 資金ショート予定日を特定する
読み手 銀行の融資担当・審査部 社長と経理担当
粒度 1ヶ月単位 1日単位
対象期間 実績6ヶ月+予定12ヶ月 今日から60〜90日
最重要の行 経常収支(営業活動の現金) その日の残高
更新頻度 月1回 毎日〜週2回
見えるもの 年間の返済余力 月内の「谷」
見えないもの 月内の資金ショート 長期の返済能力
● 月次表だけを見ていると、月内で死ぬ

月次資金繰り表の「7月末残高 320万円」は、7月31日の残高です。
7月20日に残高がマイナス180万円になっていても、この表には出てきません。
給与は25日、買掛金の支払いは月末、売掛金の入金は末日——このズレが、月の途中に深い谷を作ります。
月内の谷は、日繰り表でしか見えません。

02銀行提出用・月次資金繰り表の構造

月次資金繰り表は、3つのブロックでできている。

この3つを分けて書くことが、そのまま銀行への説明になる。

月次資金繰り表の3ブロック構造 月次資金繰り表は、3つのブロックでできている

前月繰越残高

① 経常収支 ── 銀行が最も見る行 収入:現金売上/売掛金の回収/手形の期日入金 支出:仕入・買掛金支払/人件費/諸経費/支払利息/税金・社会保険料 =本業で現金を生めているか

② 経常外収支(設備等) 収入:固定資産の売却/保険の解約返戻金 支出:設備投資/保証金の差入れ

③ 財務収支 収入:借入金の調達/増資 支出:借入金の返済(元金)/役員借入金の返済

翌月繰越残高 = 前月繰越 + ① + ② + ③

図2:月次資金繰り表の構造。銀行が最初に見るのは①の経常収支。ここがマイナスだと、借りた金を借入で返している状態になる。

この構造で決定的に重要なのは、①経常収支だ。

経常収支=本業から生まれた現金の増減

ここがプラスなら、その金額が返済原資になる。

ここがマイナスだと、借りた金を借入で返していると読まれる。

銀行員は、まずここを見る。

私が審査部にいたときも、月次資金繰り表を受け取ったら、経常収支の行を横に指でなぞった。

12ヶ月中、何ヶ月がプラスか。

それが最初の判断だった。

■ 借入金の「元金返済」は、③に書く

元金返済は費用ではないので、損益計算書には出てきません。ですが、現金はそのぶん出ていきます
月次資金繰り表では、③財務収支の支出に書きます。
そして銀行は、①経常収支のプラス額 > ③の元金返済額 になっているかを見ます。ここが逆転していると、返済のために新しい借入が必要な会社、と評価されます。

03月次資金繰り表の作り方【記入例】

実際の表を、数値を入れて見せる。

月商1,000万円、借入残高3,000万円、毎月の元金返済50万円の会社を想定した。

以下は説明のための架空の数値だ。

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区分 科目 7月(実績) 8月(予定) 9月(予定)
前月繰越残高 620万円 558万円 396万円
①経常収入 現金売上 120万円 120万円 120万円
売掛金の回収 880万円 880万円 950万円
手形の期日入金 0円 0円 0円
経常収入 合計 1,000万円 1,000万円 1,070万円
①経常支出 仕入・買掛金の支払 600万円 640万円 640万円
人件費(給与・役員報酬) 250万円 250万円 250万円
諸経費(家賃・水道光熱等) 110万円 110万円 110万円
支払利息 7万円 7万円 7万円
税金・社会保険料 55万円 55万円 140万円
経常支出 合計 1,022万円 1,062万円 1,147万円
①経常収支(収入−支出) ▲22万円 ▲62万円 ▲77万円
②経常外 設備投資 0円 ▲50万円 0円
③財務 借入金の調達 0円 0円 0円
借入金の返済(元金) ▲50万円 ▲50万円 ▲50万円
③財務収支 ▲50万円 ▲50万円 ▲50万円
翌月繰越残高 548万円 396万円 269万円
※説明のための架空の数値です。実際の様式は金融機関により異なります。取引銀行の指定様式がある場合は、それに合わせてください。

この表を、銀行員の目で読んでみる。

①経常収支が3ヶ月連続でマイナス。

▲22万円、▲62万円、▲77万円。

しかも悪化している

一方、元金返済は毎月50万円。

本業で現金を生めていないのに、毎月50万円返している。

つまり、過去に貯めた現金を取り崩して返済している

残高は620万円 → 548万円 →396万円 → 269万円。

このペースなら、あと2〜3ヶ月で底を打つ。

銀行員はこう読む。

そして——ここが大事なのだが——

この表を自分で作れる会社は、銀行から評価される。

なぜなら、問題を認識している証拠だからだ。

問題を認識していない会社と、認識したうえで対策を持ってくる会社では、話がまったく違う。

銀行が何を見て会社を格付するかは、ビジネスローンの審査基準|銀行が付ける「債務者区分」5段階に詳しく書いた。

◎ 銀行に「悪い数字」を出すことを、恐れないでください

経常収支がマイナスの資金繰り表を出すと、融資が断られると思われがちです。
ですが、審査部の実感を言えば、怖いのは「悪い数字」ではなく「把握していない会社」です。
悪い数字を出したうえで「原因はこれで、対策はこうです」と言える会社と、良い数字だけを出して質問に答えられない会社。
稟議を書きやすいのは、前者です。

04社内用・日繰り表の役割

ここからが、この記事の本題だ。

月次表は、銀行のための書類。

日繰り表は、あなた自身を守る道具だ。

なぜ日単位が必要なのか。

支払いと入金の日付がバラバラだからだ。

給与は25日。社会保険料は月末。買掛金の支払いは月末。家賃は27日。売掛金の入金は、末日。

月末に入金があっても、25日の給与には間に合わない。

月次表では、この「月内の谷」が消える。

月末残高だけを見て「まだ396万円ある」と安心していると、25日に払えない

月次表では見えない「月内の谷」(日繰り表の残高推移) 月末残高はプラス。でも、月の途中で尽きる

0円 400万 200万

8/1 396万円

8/25 給与 ▲250万円

8/31 買掛金・社保 残高 ▲24万円 ← 資金ショート

9/1 入金

月次表の「8月末残高」= 396万円(プラス)

図3:日繰り表で見た8月の残高推移。月次表では「8月末残高396万円」と表示されるが、実際は8月31日の支払い後にマイナスへ落ちる。

この図が、月次表と日繰り表の決定的な違いだ。

月次表の「月末残高」は、すべての入出金が終わったあとの数字

だが実務では、入金より先に支払いが来る

8月31日に1,000万円入金されるとしても、その入金が午後3時以降なら、同じ日の午前中に落ちる自動引落しには間に合わない。

日繰り表は、この1日、この数時間を見る道具だ。

05日繰り表の作り方【記入例】

日繰り表は、複雑にする必要がない。

列は5つでいい。

日付/入金/出金/差引/残高。

以下、8月の後半を抜き出した記入例だ。

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日付 摘要 入金 出金 当日残高
8/20(木) 0 0 310万円
8/21(金) 外注費の支払 0 ▲80万円 230万円
8/24(月) A社より入金 +150万円 0 380万円
8/25(火) 給与・役員報酬 0 ▲250万円 130万円
8/26(水) 源泉所得税の納付 0 ▲18万円 112万円
8/27(木) 家賃・リース料 0 ▲42万円 70万円
8/28(金) B社より入金 +120万円 0 190万円
8/31(月) C社より入金(15時着金) +430万円 0 620万円
買掛金の支払(自動引落 9時) 0 ▲520万円 ▲330万円 ←この時点で不足
社会保険料(自動引落 9時) 0 ▲74万円 ▲404万円
借入返済(元金+利息) 0 ▲57万円 ▲461万円
※説明のための架空の数値です。8月31日の入金は15時着金の予定であるのに対し、自動引落しは同日9時に実行されます。同じ日でも、時刻によって間に合いません。日繰り表では、この時刻のズレまで意識してください。

この表で分かることは、残酷なほど明確だ。

8月31日、461万円が足りない。

しかも、C社からの入金430万円は同じ日の15時。

だが引落しは午前9時

同じ日でも、6時間、間に合わない。

これが日繰り表の力だ。

「なんとなく苦しい」が、「8月31日に461万円足りない」に変わる。

ここまで来れば、打つ手が決まる。

18日残っている。

公庫は間に合わないかもしれない。

だが、銀行の当座貸越枠があれば間に合う。

支払サイトの延長交渉なら、今日から動ける。

期限が分かって初めて、手段が選べる。

◎ 日繰り表を作るときの実務メモ
  • 入金は「保守的に」書く。予定通り入らないことがある。相手先の入金実績を確認する。
  • 出金は「網羅的に」書く。忘れがちなのは、源泉所得税(納期の特例なら1月・7月)、労働保険料、消費税の中間納付、リース料の年払い。
  • 時刻を意識する。自動引落しは午前中。振込の着金は午後になることが多い。同日でも間に合わないことがある。
  • 60〜90日先まで作る。30日では、打てる手が「速いが高い」ものしか残らない。
  • ツールは表計算ソフトで十分。凝った仕組みは要らない。続けられることが一番大事。
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※2026年7月時点の同社公表値です。手数料は「1%〜」と表記されており、上限の記載はありません。実際の手数料は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。お申込みの時間帯や審査状況により、入金が翌営業日以降となる場合があります。ファクタリングは債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。

06資金ショート予定日を特定する4ステップ

手順を4つに絞る。

今日、90分あればできる。

資金ショート予定日を特定する4ステップ 資金ショート予定日を、今日、特定する

1 今日の現預金残高を、通帳で確認する 全口座の合計。手形・小切手の未決済があれば別に控える

2 今後90日の「出金」を、日付順に全部書き出す 給与・買掛金・家賃・リース・社保・税金・借入返済・源泉所得税

3 今後90日の「入金」を、保守的に書き出す 遅れる可能性のある入金は、遅れる前提で書く。楽観は禁物

4 残高を1日ずつ足し引きし、初めてマイナスになる日を探す その日が「資金ショート予定日」。不足額も同時に確定する → 例:8月31日/不足額 461万円/残り18日

図4:資金ショート予定日を特定する4ステップ。ここまでやって初めて、どの調達手段が間に合うかを判断できる。

残り日数によって、使える手段が変わる。

これを一覧にした。

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ショートまでの日数 間に合う手段 コストの目安
60日以上 日本政策金融公庫/マル経/信用保証協会付き融資/銀行プロパー/支払条件交渉/リスケ 年3.50〜5.20%(公庫)/マル経 年2.60%
30〜60日 公庫(急ぐ)/銀行(既存取引があれば)/リスケ/納税の猶予/支払条件交渉 低〜中
14〜30日 銀行の当座貸越枠(既にあれば)/ノンバンクのビジネスローン/ファクタリング 年3.0〜18.0%(ビジネスローン)
7日以内 ノンバンクのビジネスローン(最短即日)/ファクタリング(最短30分〜)/支払いの繰延べ交渉 高い(ファクタリングは手数料 数%〜十数%)
※着金までの日数は目安です。審査状況・お申込みの時間帯により、記載より長くかかる場合があります。いずれも審査があります。ファクタリングの手数料は金利ではなく、債権売買の対価です。

この表を見て、気づいてほしいことがある。

「残り日数」が、そのまま「コスト」になっている。

60日あれば年2.6%。7日しかなければ手数料10%。

同じ会社、同じ金額。違うのは、いつ気づいたか。

日繰り表を作る意味は、ここにある。

早く気づけば、安く済む。

12の調達手段を検討順に並べ直したのが事業資金の調達方法12種類|検討順に並べただ。

安い手段から順に当たるための地図として使ってほしい。

■ 忘れやすい出金・6つ

日繰り表で最も多いミスは、出金の書き漏れです。以下は、毎月は出ないため見落としやすいもの。

  • 源泉所得税(納期の特例を使っている場合、1月20日と7月10日にまとめて)
  • 労働保険料(年度更新。分割納付でも期日がある)
  • 消費税の中間納付(前期の納税額により、年1回〜11回)
  • 賞与と、それに伴う社会保険料
  • リース料・保険料の年払い
  • 決算賞与・法人税等の確定申告分

この6つを書き漏らすと、日繰り表は「当たらない表」になります。

資金繰り表の作成サイクル(月次と日繰りの回し方) 2つの表を、どう回すか

日繰り表 ── 週2回、更新 月曜:先週の実績を入れる 木曜:翌週の予定を確定させる 常に「今日から90日先」を見る 所要 20分/回

月次資金繰り表 ── 月1回 月初:前月の「実績」を確定させる 今後12ヶ月の「予定」を更新する 前回の予定と実績のズレを確認 所要 40分/月

日繰り表の実績が、そのまま月次表の実績になる 日繰りを続けていれば、月次表は「集計するだけ」で完成する

続かない仕組みは、作らない。凝ったツールより「毎週20分」が勝つ 1ヶ月更新を止めた資金繰り表は、もう資金繰り表ではありません

図5:2つの表の回し方。日繰り表を週2回更新していれば、月次表は集計するだけで完成する。

07銀行員は、資金繰り表のどこを見るか

私は地方銀行の融資審査部に9年いた。

そこで資金繰り表を何百枚と見てきた。

見るポイントは、実はそんなに多くない。

3つだけだ。

1. 経常収支は、プラスか

最初に見る。

12ヶ月のうち、何ヶ月がプラスか。

年間の合計はプラスか。

ここがマイナスなら、本業で現金を生めていない

つまり、返済原資がない

いくら「来期は良くなります」と言っても、数字がそう言っていなければ、稟議は書けない。

2. 債務償還年数は、何年か

これが、最も知られていない指標だ。

計算式はこうだ。

債務償還年数=(有利子負債 − 現預金)÷(税引後利益 + 減価償却費)

分母はキャッシュフロー、つまり1年間で返済に回せる金額。

これで有利子負債を割ると、「今のペースで、何年で返し終わるか」が出る。

債務償還年数の計算と、銀行の10年ルール 債務償還年数 ── 銀行の「10年ルール」

(有利子負債 − 現預金) (税引後利益 + 減価償却費)

10年以内 正常な範囲とされる 追加融資も検討できる

10〜20年 要注意先の領域に入る 新規融資は厳しくなる

20年超 返済能力に疑問符 リスケの検討対象

例:有利子負債3,000万円/現預金400万円/税引後利益120万円/減価償却費80万円 (3,000−400)÷(120+80)= 13.0年 → 要注意の領域

図6:債務償還年数の計算。目安は10年以内。これを超えると、新規融資のハードルが上がる。金融機関により基準は異なる。

銀行の実務では、おおむね10年以内が一つの目安になる。

(金融機関や業種により基準は異なる)

これを超えていると、「返済能力に対して借入が多い」と評価される。

そして、この数字は資金繰り表の作り方では変えられない

変えるには、利益を増やすか、借入を減らすかしかない。

債務者区分と債務償還年数の関係は、ビジネスローンの審査基準(債務者区分5段階と債務償還年数10年ルール)で詳しく解説した。

3. 予定と実績が、合っているか

これが、経営者の見落としポイントだ。

3ヶ月前に出した資金繰り表の「予定」は、当たっていたか。

銀行は、過去に受け取った資金繰り表を保管している。

そして、次に受け取った表の「実績」欄と突き合わせる。

予定と実績が大きくズレる会社は、「自社を把握していない会社」と評価される。

逆に、多少業績が悪くても、予定と実績が一致している会社は信頼される。

「厳しいですが、この数字は予測通りです」

そう言える会社と、そうでない会社では、交渉の重みが違う。

これは、赤字決算のときに特に効く。

赤字決算でも融資は受けられるのか(赤字の中身で結論は変わる)で書いたとおり、赤字そのものより、説明できるかどうかが評価を分ける。

08よくある7つの間違い

現場で繰り返し見てきた、資金繰り表の間違いを7つ挙げる。

失敗から逆算するのが、一番早い。

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# 間違い 何が起きるか
1 売上高を書いてしまう(入金額ではなく) 売掛金がまだ入っていないのに、現金があることになる
2 借入の元金返済を書き忘れる 最も大きな出金が抜ける。表の意味がなくなる
3 税金・社会保険料を書き忘れる 年に数回の大きな出金を見落とし、その月に詰まる
4 入金予定を楽観的に書く 相手が遅れた瞬間に、表が無意味になる
5 月次表だけで済ませる 月内の谷が見えず、25日や31日に資金が尽きる
6 30日先までしか作らない 気づいたときには「速いが高い」手段しか残っていない
7 作りっぱなしで更新しない 実績とのズレが積み上がり、予測が当たらなくなる
▲ 最も多いのは「1. 売上高を書いてしまう」

資金繰り表に書くのは売上高ではなく、入金額です。
3月に1,000万円売り上げても、末締め翌月末なら、現金が入るのは4月末。3月の資金繰り表に1,000万円を書いてはいけません。
この間違いをしたまま「うちは黒字だから大丈夫」と思っている会社が、いちばん危ない。
利益と現金がなぜズレるのかは、資金繰りが悪化する7つの原因(黒字なのに金がない構造)で分解しています。

09今週やること

最後に、行動に落とす。

今日から3日で終わる。

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やること 所要
1日目 全口座の残高を確認。今後90日の出金を日付順に書き出す 60分
2日目 今後90日の入金を、保守的に書き出す。資金ショート予定日を特定する 60分
3日目 不足額と残り日数から、間に合う手段を選ぶ。相談予約を入れる 60分
以降 週2回、日繰り表を更新する。月1回、月次資金繰り表を作る 各20分

3時間で、自分の会社の期限が分かる。

期限が分かれば、恐怖は「課題」に変わる。

「不安で眠れない」から、「9月17日までに240万円」へ。

この変換が、資金繰り表の本当の価値だ。

そして、もし資金ショート予定日が近く、既存借入の返済が重くのしかかっているなら——

新規調達の前にリスケ(返済条件変更)の全手順|中小企業活性化協議会と405事業を検討してほしい。

出ていく金を止めるほうが、入ってくる金を作るより速い。

公的な支援制度の使い方はノンバンクの前に使うべき公的支援(セーフティネット貸付・納税の猶予)にまとめた。

そして、今の環境がどれだけ厳しいかは【2026年上半期】倒産5,300件超のデータで読む、危ない資金繰りの兆候で確認できる。

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FAQよくある質問

資金繰り表は、エクセルで作っても問題ありませんか。
問題ありません。表計算ソフトで十分です。銀行に提出する場合、取引金融機関が指定する様式があればそれに合わせ、なければ「前月繰越残高/経常収支/経常外収支/財務収支/翌月繰越残高」という構造を守れば受け付けられます。凝ったツールより、毎月更新し続けられることのほうが重要です。日繰り表も、日付・入金・出金・残高の4〜5列で十分です。
月次資金繰り表と日繰り表、どちらを先に作るべきですか。
資金繰りが逼迫しているなら、日繰り表が先です。理由は、資金ショート予定日を日付で特定しないと、どの調達手段が間に合うかを判断できないからです。残り60日あれば公的融資が間に合いますが、残り7日ならノンバンクやファクタリングしか選択肢がありません。銀行への提出が目的なら月次表ですが、自社を守るという目的なら日繰り表が先です。
資金繰り表に、売上高を書いてはいけないのですか。
書くのは売上高ではなく「入金額」です。3月に1,000万円を売り上げても、末締め翌月末払いなら現金が入るのは4月末です。3月の資金繰り表に1,000万円を計上すると、実際にはない現金があることになり、表として機能しなくなります。資金繰り表は、現金がいつ動くかを記録するものです。損益計算書とは、まったく別の道具だと考えてください。
銀行は、資金繰り表のどこを見ているのですか。
主に3点です。(1)経常収支がプラスか(本業で現金を生めているか)。(2)債務償還年数が何年か(有利子負債から現預金を引き、税引後利益+減価償却費で割る。目安は10年以内とされることが多い)。(3)過去に提出した資金繰り表の「予定」と、今回の「実績」が一致しているか。特に(3)は見落とされがちですが、予定と実績が合っている会社は、業績が厳しくても信頼されます。
資金繰り表を作ったら、資金ショートすることが分かりました。どうすればよいですか。
まず、不足日と不足額を確定させてください。次に、残り日数から間に合う手段を選びます。60日以上あるなら日本政策金融公庫・信用保証協会付き融資が候補です。30日を切っているなら、銀行の当座貸越枠、ノンバンクのビジネスローン、ファクタリングが現実的です。同時に、出ていく金を止める手(支払条件の交渉、納税の猶予、既存借入のリスケ)を並行して打ってください。調達より、出金を止めるほうが速いことがあります。
日繰り表は、どのくらい先まで作るべきですか。
60〜90日先までをおすすめします。30日先までしか作らないと、資金ショートに気づいたときには、選択肢が「速いが高い」手段だけになっています。90日あれば、日本政策金融公庫(着金まで2〜4週間)や信用保証協会付き融資も間に合う可能性があります。残り日数が、そのまま調達コストを決めます。早く気づくほど、安く済みます。

まとめ

資金繰り表は、2種類ある。

銀行に出す月次資金繰り表は、「返せる根拠」を示す書類だ。

見せ場は経常収支。そして債務償還年数。

自分を守る日繰り表は、「いつ現金が尽きるか」を知る道具だ。

見せ場は、残高が最も薄くなる日。

この2つを混同すると、月末残高がプラスの表を持ちながら、25日に払えなくなる。

やることは3時間で終わる。

1日目、90日分の出金を書く。2日目、90日分の入金を書く。3日目、ショート予定日を特定する。

そこまでやれば、「なんとなく苦しい」は「9月17日に240万円」に変わる。

期限が分かって初めて、手段が選べる。

そして、早く気づくほど、安く済む。

それだけの話だ。

出典・参考
中小企業庁
日本政策金融公庫「金利情報」
日本銀行「長・短期プライムレート推移」
帝国データバンク「2026年上半期 全国企業倒産集計」
金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)リーフレット」

監修:黒岩 智之(くろいわ ともゆき)
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年。地方銀行の融資審査部に9年在籍後、独立。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。

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