【2026年上半期】倒産5,300件超のデータで読む、危ない資金繰りの12の兆候

資金調達の基礎知識
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【2026年上半期】倒産5,300件超のデータで読む、危ない資金繰りの12の兆候

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • 2026年上半期の企業倒産は、帝国データバンク集計で5,335件(前年同期比+6.6%)、東京商工リサーチ集計で5,346件(同+7.1%)。上期として12年ぶりに5,000件を超え、5年連続の増加となった。
  • 倒産した企業の負債規模は、1億円未満が76.6%(2025年・30年で最高水準)。つまり倒産は「大企業の話」ではなく、売上数千万円〜数億円規模の小零細企業が主体である。
  • 物価高倒産556件・人手不足倒産227件・後継者難倒産312件が、いずれも過去最多を同時更新した。原因が「一つの不況」ではなく「三つの慢性病」に変わったことを意味する。
  • 倒産の主因は「販売不振」80.2%。ただし販売不振は結果であって、引き金ではない。引き金は資金繰りの兆候として、数ヶ月前から表に出ています。
  • 本記事は、統計を12の自己診断項目に翻訳する。3つ以上該当したら、資金調達の選択肢を「今」広げる段階にある。

「うちはまだ大丈夫だ」。

私が18年の間、資金繰り相談の現場で最も多く聞いた言葉が、これです。

そして、この言葉を口にした経営者の何割かは、その6ヶ月後に、資金ショートの一歩手前まで来ていました。

理由は単純です。

倒産は、ある日突然起きる出来事ではないからです。

決算書が真っ赤になるよりずっと前に、資金繰りには兆候が出ます。

ただ、その兆候は「経営危機」という顔をしてやって来ません。

「今月だけ入金が遅い」「今回だけ社長が立て替える」「今期だけ税金を待ってもらう」という、きわめて日常的な顔をしてやって来ます。

この記事では、2026年上半期の倒産統計を、数字の紹介で終わらせません。

統計を、あなたが自社の帳簿と現金残高に当てはめて採点できる12の兆候チェックリストに翻訳します。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。実際のご契約にあたっては、必ず各社の公式サイトおよび契約書面をご確認いただき、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。掲載している数値・条件は2026年7月時点の公開情報に基づきます。

012026年上半期、倒産は5,335件。数字の全体像

まず、事実だけを並べます。

2026年上半期(1〜6月)の企業倒産件数は、帝国データバンクの集計で5,335件(前年同期比+6.6%)

東京商工リサーチの集計では5,346件(同+7.1%)です。

集計基準の違いで11件のずれがありますが、方向は一致しています。

上半期として5,000件を超えたのは12年ぶり。

そして、増加は5年連続です。

2025年の通年倒産件数は10,300件(東京商工リサーチ集計・前年比+2.9%)で、2年連続の1万件超でした。

このペースは、2026年通年でも維持される可能性が高い、と読むのが自然です。

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表1:2026年上半期の倒産統計(集計主体別)
項目 帝国データバンク 東京商工リサーチ
2026年上半期 倒産件数 5,335件 5,346件
前年同期比 +6.6% +7.1%
2025年 通年 10,300件(+2.9%)※2年連続1万件超
主因「販売不振」の構成比 80.2%(3年連続8割超)
負債1億円未満の構成比 76.6%(2025年・30年で最高)
※両社は倒産の定義・集計対象が異なるため、件数に差が出ます。「上期として12年ぶりの5,000件超・5年連続増」という結論は一致しています。数字を引用する際は、どちらの集計かを明示してください。

まず、5年間の推移を折れ線で見てください。

数字の「形」を頭に入れておくと、このあとの12の兆候が腹に落ちやすくなります。

企業倒産件数の推移(通年および2026年上半期) 2025年通年は10,300件で2年連続の1万件超。2026年上半期は5,335件で上期として12年ぶりの5,000件超。 0 3,000 6,000 9,000 件数

10,006 2024年 通年

10,300 2025年 通年

4,990 2025年 上半期

5,335 2026年 上半期

+6.6% 5年連続増 出典:帝国データバンク/東京商工リサーチ(2026年上半期報)。2025年上半期は前年同期比から逆算した概数。

図1:倒産件数は5年連続で増えている。2026年上半期の5,335件は、上期として12年ぶりの5,000件超。

ここで大事なのは、「増えている」という事実そのものではありません。

増え方が、じわじわしているということです。

リーマンショックのような急落なら、経営者は身構えます。

しかし年6〜7%の増加は、自社の周りで年に1社か2社、知っている会社が消える、という肌感覚にしかなりません。

危機感が湧かないまま、自社の番が来ます。

なぜ「じわじわ」が危ないのか

急激な不況では、金融機関も行政も一斉に支援策を打ちます。ゼロゼロ融資がその典型でした。しかし慢性的な増加局面では、緊急支援は出ません。個社の努力で耐えるしかない局面です。「みんな大変だから、うちも大変で当たり前」という感覚が、いちばん判断を遅らせます。

02負債1億円未満が76.6%。倒産は小零細企業の現実である

倒産のニュースを見ると、負債総額が数十億円という見出しが目に入ります。

だから多くの経営者は、倒産を「大きな会社の話」だと思っています。

ここが最初の誤解です。

東京商工リサーチの集計では、2025年の倒産のうち負債1億円未満が76.6%を占めました。

これは統計を遡って30年で最も高い水準です。

つまり、いま倒れている会社の4社に3社は、負債が1億円に届かない規模の会社だということです。

倒産企業の負債規模構成 2025年の倒産のうち負債1億円未満が76.6%を占め、30年で最高水準となった。 倒産した企業の負債規模(2025年・東京商工リサーチ) 76.6% 負債1億円未満 23.4% 1億円以上

つまり、こういう会社が倒れている ・年商 数千万円〜数億円 ・従業員 数名〜数十名 ・借入は数千万円 ・経理は社長か家族が担当 ・「うちは小さいから倒産とは無縁」と思っている

図2:倒産の主体は小零細企業。負債1億円未満が76.6%を占め、30年で最高水準に達した。

この数字を、私は現場で何度も突きつけてきました。

なぜなら、規模が小さい会社ほど、資金繰りの緩衝材が薄いからです。

大企業は、資金繰りが苦しくなってから倒れるまでに、年単位の時間があります。

資産を売れる。子会社を切れる。主力銀行が支援に入る。

しかし従業員10人の会社に、売れる資産はほとんどありません。

社長の個人資産と、売掛金と、今月の入金予定。

緩衝材は、その3つしかないのです。

だから、たった1件の入金遅延で、支払いが回らなくなります。

資金繰りが悪化する構造そのものについては、資金繰り悪化の7つの原因で、黒字なのに現金が消える仕組みを分解しています。

03「販売不振80.2%」という主因は、結果であって引き金ではない

帝国データバンクの2026年上半期報によると、倒産の主因の80.2%が「販売不振」です。

3年連続で8割を超えています。

この数字を見て、「売上を伸ばせばいい」と結論づけるのは早計です。

現場を18年見てきて言えるのは、販売不振は倒産の「診断名」であって、「死因」ではないということです。

売上が2割落ちても、現金が回っていれば会社は死にません。

逆に、売上が横ばいでも、入金より先に支払いが来れば会社は止まります。

倒産の届出書類に書かれる主因は、最終的に「売上が足りなかった」という形にまとめられます。

しかし実際に息を止めたのは、支払サイトと入金サイトのズレです。

このズレを可視化する図を見てください。

入金サイトと支払サイトのズレが資金ショートを生むメカニズム 売上が立ってから入金までが60日、仕入や人件費の支払いが30日で来る場合、30日分の運転資金が恒常的に不足する。 売上は立っている。それでも現金が足りなくなる理由

受注・納品

売掛金の回収まで 60日(入金サイト) +現金

仕入・外注・給与の支払 30日 −現金

この30日分が、恒常的な穴

売上が伸びるほど、この穴は大きくなる(増加運転資金)。これが「黒字なのに金がない」の正体。

図3:入金より支払いが先に来る。この日数差が、売上の増減とは無関係に現金を吸い上げる。

増収が引き金になることがある

売上が伸びると、先に増えるのは仕入と外注費と人件費です。入金は2ヶ月後。つまり「大型受注を取った直後」が、資金繰りの最も薄くなる瞬間になり得ます。私が相談を受けた会社の中には、過去最高の受注残を抱えたまま資金が尽きたケースが複数あります。「売れているのだから大丈夫」は、資金繰りの世界では通用しません。

04過去最多が3つ同時に出た年。物価高556件・人手不足227件・後継者難312件

2026年上半期の統計で、私が最も重く見ているのはここです。

帝国データバンクの集計で、3つの類型が同時に過去最多を更新しました。

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表2:2026年上半期の倒産・主要類型(帝国データバンク集計)
類型 件数 状況 意味するもの
物価高倒産 556件 過去最多。6月単月113件も過去最多 仕入価格の上昇を、販売価格に転嫁できていない
人手不足倒産 227件 過去最多。5年連続増 受注はあるが、こなす人がいない
後継者難倒産 312件 集計開始以来、初の300件超 会社を続ける意思そのものが折れている
売掛金回収難 32件 前年同期14件から+128.6% 取引先の倒産が、自社に伝染し始めている
ゼロゼロ融資後倒産 256件 前年同期比▲19.0% 減少しているが、返済開始のピークは2026年4〜9月
※出典:帝国データバンク「2026年上半期 全国企業倒産集計」(2026年7月8日公表)。件数は同社の定義・集計基準による。

この3つが同時に最多になった意味を、一段深く読みます。

物価高倒産とは、値上げできなかった会社が死んだということです。

人手不足倒産とは、値上げできないから人を採れず、採れないから仕事を断ったということです。

後継者難倒産とは、この構造を見た次の世代が、継ぐ価値を見出せなかったということです。

3つは別々の病気ではありません。

「価格転嫁ができない」という一本の背骨から生えた、3本の枝です。

価格転嫁できない構造が、物価高・人手不足・後継者難の3つの倒産を生む連鎖図 価格転嫁の失敗が粗利を圧迫し、賃上げ不能から人手不足を招き、最終的に事業承継の断念に至る連鎖を示す。 3つの「過去最多」は、同じ一本の根から生えている

価格転嫁ができない 仕入は上がる/単価は据え置き

粗利が消える 物価高倒産 556件

賃上げできない 人手不足倒産 227件

継ぐ価値が消える 後継者難倒産 312件

結果として計上される主因=「販売不振」80.2% 診断名は同じでも、死因は会社ごとに違う

図4:3つの過去最多は独立した現象ではない。価格転嫁の失敗という一本の根から派生している。

2026年1月1日に施行された取適法(中小受託取引適正化法)は、まさにこの根に効かせるための制度です。

旧・下請法を改正・改称したもので、価格協議に応じない一方的な代金決定を禁止しています。

手形の交付は禁止され、支払期日は受領日から60日以内と定められました。

適用対象も広がり、資本金基準に加えて従業員基準(300人/100人)が追加されています。

制度は、あなたの側に立っています。

公正取引委員会の取適法リーフレットを一度読んで、自社の取引条件が新法の基準を満たしているか確認する価値があります。

05売掛金回収難が+128.6%。連鎖はここから始まる

件数だけを見ると、売掛金回収難による倒産は32件です。

5,335件のうちの32件。

0.6%にすぎません。

しかし私は、この項目を今回の統計で最も警戒しています。

理由は、伸び率です。

前年同期は14件でした。

それが32件。

+128.6%です。

売掛金回収難とは、売った代金が回収できずに自社が倒れた、ということです。

つまり他社の倒産が、自社に伝染したということです。

倒産が5年連続で増えている局面で、この項目が2倍以上に跳ねた。

これは、連鎖倒産の初期症状です。

連鎖は「一次」ではなく「二次」で効く

取引先が倒産したとき、直接の売掛金が焦げ付くのが一次被害です。しかし本当に効くのは二次被害のほうです。その取引先からの継続的な売上が消えるため、翌月以降の入金予定表に穴が空きます。焦げ付いた1件は特別損失で片付きますが、消えた売上は資金繰り表に恒久的な赤を刻みます。「回収不能額」ではなく「消えた月商」で被害を測ってください。

対策は、精神論ではありません。

具体的には3つです。

第一に、売掛先を1社に依存しないこと。

売上の3割以上を1社に依存しているなら、その1社の倒産は自社の倒産と同義です。

第二に、支払サイトを短くする交渉をすること。

取適法の施行により、支払期日は受領日から60日以内が原則です。

これは交渉のカードになります。

第三に、売掛金を現金に変える手段を、平時から把握しておくこと。

売掛債権を期日前に売却するファクタリングとビジネスローンの違いを理解しておけば、入金が飛んだ月に選択肢がゼロにならずに済みます。

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062026年4〜9月は、据置期間終了の最後のピーク

ゼロゼロ融資後倒産は、2026年上半期で256件。

前年同期比▲19.0%と、数字だけ見れば落ち着いています。

しかし、ここで安心するのは危険です。

ゼロゼロ融資には据置期間がありました。

利息も元本も払わずに済む期間です。

その据置期間の終了が、2026年4月から9月にかけて、最後のピークを迎えます

つまり、統計に現れる数字が落ち着いているのは、返済が始まっていない会社が、まだ残っているからです。

ゼロゼロ融資の据置期間終了と返済開始のタイムライン 2026年4月から9月にかけて据置期間終了による返済開始の最後のピークが到来する。 据置期間が終わると、月々のキャッシュアウトが増える

2020〜21年 実行 無利子・無担保

2023〜25年 据置期間 返済なし

2026年4〜9月 返済開始の最後のピーク 元利の支払いが始まる

2027年〜 通常返済

今この瞬間、月次の返済負担が 増えている会社が大量にいる 2026年上半期のゼロゼロ融資後倒産は256件

この時期に相談すれば 条件変更(リスケ)が使える 延滞してからでは選択肢が狭まる

図5:据置期間の終了は、資金繰り表に「新しい固定支出」を追加する。延滞する前に動けるかどうかが分岐点。

ここで、経営者が最もやってはいけない判断があります。

「返済が始まって苦しいから、新しく借りて返す」という判断です。

これは資金繰りではなく、時間の先送りです。

先に検討すべきなのは、返済条件の変更、つまりリスケです。

リスケ(返済条件変更)の全手順では、中小企業活性化協議会や405事業(費用の3分の2を補助・上限300万円)まで含めて手順を整理しました。

延滞してから相談するのと、延滞する前に相談するのとでは、金融機関の受け止め方がまったく違います。

順番を間違えない

資金が足りないとき、検討すべき順番があります。①既存借入の条件変更(リスケ)→②公的支援(セーフティネット貸付・保証協会)→③銀行のプロパー融資→④ノンバンクの融資→⑤売掛債権の売却。この順番はコストの安い順であり、同時に「後戻りできる度合いが高い順」でもあります。ノンバンクの前に使うべき公的支援(セーフティネット貸付)で、①と②の具体的な使い方をまとめています。

07危ない資金繰りの12の兆候【チェックリスト】

ここからが本題です。

ここまでの統計を、自社に当てはめられる形に翻訳します。

以下の12項目は、私が1,200社超の資金繰り相談で、実際に危険水域に入った会社が、その手前で共通して見せていた挙動を整理したものです。

決算書の指標ではありません。

日常業務の中で、社長が気づける兆候だけを選びました。

3つ以上該当したら、資金調達の選択肢を「今」広げる段階です。

危ない資金繰りの12の兆候セルフ診断チェックリスト 資金繰りの危険を示す12の兆候を、支払い・入金・資金調達・経営者行動の4つの領域に分類したチェックリスト。 12の兆候|3つ以上あてはまったら、選択肢を広げる段階

領域A:支払いの兆候 1. 支払日の前日に、通帳残高を確認するのが習慣になった 2. 社会保険料・税金の納付を、1度でも待ってもらったことがある 3. 役員報酬を、未払いのまま計上している月がある

領域B:入金の兆候 4. 売上の3割以上を、1社の得意先に依存している 5. 入金が予定より遅れた得意先が、この半年で2社以上ある 6. 支払サイトが60日を超える取引を、断れずに受けている

領域C:資金調達の兆候 7. 借入の返済のために、別の借入を検討したことがある 8. 銀行の担当者から、追加融資の話が来なくなった 9. 据置期間が終わり、月々の返済額が増えた(または増える)

領域D:経営者の行動の兆候 10. 社長個人の預金・カードで、会社の支払いを立て替えた 11. 資金繰り表を作っていない、または3ヶ月先が見えていない 12. 「今月を乗り切れば楽になる」と、3ヶ月以上言い続けている

図6:12の兆候。決算書ではなく、日々の行動に現れる。特に領域Dは、経営者自身にしか見えない。

このリストの使い方

印刷して、経理担当者ではなく社長自身が手を挙げてください。理由は、領域Dの4項目が、社長にしか見えないからです。社長個人のカードで会社の支払いを立て替えた事実は、帳簿に載らないことがあります。「今月を乗り切れば楽になる」と何ヶ月言い続けたかも、誰も記録していません。この4項目は、社長の記憶の中にしか存在しません。だから、この診断は代行できません。

兆候の重みは、均等ではない

12項目には、軽重があります。

私の経験上、危険度が突出して高いのは、2番・7番・10番の3つです。

理由を説明します。

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表3:特に危険度の高い3つの兆候と、その理由
兆候 危険度 なぜ危険か 放置した先に起きること
2. 社会保険料・税金を待ってもらった 最高 社会保険料と税金は、支払いの優先順位が最も高い。ここを崩したということは、崩せる支払いを全部崩し終えたことを意味する 年金事務所・税務署による差押え。売掛金や預金が対象になれば、事業継続が困難になる
7. 返済のために借りる 最高 事業に使わない資金を借りるということは、調達したその瞬間に元本が減っているのと同じ。金利分だけ純粋に体力を削る 調達先が銀行→ノンバンク→さらに条件の悪い先へと下降する。金利は上がり、期間は短くなる
10. 社長個人が立て替えた 会社の資金繰りが、法人の外側の財布に依存し始めた証拠。この時点で、会社単体では回っていない 社長の個人資産が先に尽きる。個人破産と法人倒産が同時に来る
※危険度の評価は筆者(黒岩)の実務経験に基づく主観的な整理であり、公的な指標ではありません。

とりわけ2番については、補足が必要です。

税金や社会保険料を滞納すると、金融機関の融資は著しく難しくなります。

なぜなら、国と年金機構は、金融機関よりも強い回収権限を持っているからです。

銀行が貸したお金が、そのまま差押えで国に持っていかれる可能性がある。

その状態で新規に貸す銀行は、まずありません。

ただし、滞納には「換価の猶予」という正規の手続きがあります。

黙って滞納するのと、猶予を申請するのとでは、その後の景色が変わります。

08逆算:倒産した企業が共通して怠っていた3つの確認

ここまでは、兆候の話をしてきました。

最後に、逆から見ます。

実際に事業を止めた会社が、共通して「やっていなかったこと」は何か。

私の相談記録を振り返ると、3つに収束します。

驚くほど、地味です。

倒産した企業が共通して怠っていた3つの確認 13週間の現金予測、売掛先の与信確認、資金調達手段の事前把握という3つの確認を怠ったことが共通点。 やっていれば防げたかもしれない、3つの地味な確認

1 13週先までの、現金残高の予測 月次ではなく週次で、入金と支払いを並べる。3ヶ月先まで見えていれば、 「いつ足りなくなるか」が日付で分かる。日付が分かれば、打ち手が選べる。

2 売掛先の、支払い能力の確認 売掛金回収難倒産は前年同期比+128.6%。取引先が払えるかどうかは、 自社の生死に直結する。売上構成比3割超の相手は、特に注意して見る。

3 資金調達手段を、平時に一通り知っておく 追い込まれてから調べると、目に入るのは検索上位の広告だけになる。 選択肢を知らないことが、条件の悪い契約を飲む最大の理由になる。

出典:筆者による相談記録の整理(1,200社超)。統計的な因果関係を示すものではありません。

図7:3つとも、費用はほとんどかからない。かかるのは時間と、現実を見る覚悟だけ。

3つ目について、もう少し踏み込みます。

追い込まれた経営者が検索する言葉は、だいたい決まっています。

「即日」「審査 甘い」「今すぐ 借りる」。

そして、その言葉で検索すること自体が、条件の悪い相手に自分を差し出す行為になっています。

なぜなら、その言葉に反応して広告を出しているのは、まっとうな金融機関ではないからです。

融資を断られた直後の数週間に何が起きるかは、融資を断られた直後が一番危ないで、多重債務への転落ルートを図にしました。

平時のうちに、ファクタリングとビジネスローンの違い(コスト比較)を読んでおくだけで、選べる手が増えます。

09兆候が出た会社は、何を、どの順番で使うのか

12の兆候のうちいくつかに該当した。

では、どうするか。

順番があります。

この順番を間違えると、戻れなくなります。

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表4:検討する順番と、その理由
手段 コストの目安(2026年7月時点) 時間 特徴
1 既存借入の条件変更(リスケ) 追加コストなし(利息は継続) 数週間〜数ヶ月 新たな借入を増やさずに月次の支出を減らせる
2 日本政策金融公庫・セーフティネット貸付 年3.50%〜5.20%(国民生活事業・無担保の基準利率) 数週間〜1ヶ月超 コストが最も低い。ただし時間がかかる
3 信用保証協会付き融資 金利+保証料率 年0.45%〜1.90%(9区分) 1〜2ヶ月 制度融資は自治体経由で2〜3ヶ月かかることも
4 銀行のプロパー融資 短期プライムレート2.125%+上乗せ 数週間 財務内容が良い会社ほど有利
5 ノンバンクのビジネスローン 概ね年3.0%〜18.0%(実質年率) 最短即日 速いがコストは上がる。審査があります
6 ファクタリング(売掛債権の売却) 手数料は債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動 最短即日〜数日 借入ではない。ただし手数料は資金繰りを削る
※金利・保証料率は2026年7月時点の公開情報(日本政策金融公庫、東京信用保証協会、日本銀行の公表値)に基づく目安です。実際の適用条件は各社・各制度の審査によります。

この表で、最も誤解されているのが5番と6番の関係です。

ノンバンクの融資は「借入」であり、ファクタリングは「債権の売却」です。

法的な性質がまったく違います。

ファクタリングは法的には債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。

ただし金融庁は、経済的に貸付けと同様の機能を有するものは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。

つまり「ファクタリング」という看板を掲げていても、中身が貸付けであれば、貸金業の規制対象になり得るということです。

この線引きは、契約書の条項を見なければ判断できません。

金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」に、危険信号が列挙されています。

契約前に、一度は目を通すべきです。

業種によって、詰まり方は違う

同じ「資金繰り悪化」でも、業種ごとに構造が違います。建設業は2026年上半期の倒産が1,026件(+5.8%)で12年ぶりの1,000件超、物価高倒産151件・人手不足倒産65件はいずれも業種別最多です。運送業は2026年1〜4月の倒産が108件(+11.3%)、人手不足倒産23件は集計開始以来の同期最多。介護業は2025年の倒産176件が2年連続で過去最多、うち訪問介護が91件です。自社の業種の構造は、建設業の資金繰り運送業の資金繰り介護事業者の資金繰りで、それぞれ個別に分解しています。

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FAQよくある質問

2026年上半期の倒産件数は、結局5,335件と5,346件のどちらが正しいのですか。
どちらも正しく、集計主体が違います。5,335件は帝国データバンクの集計(前年同期比+6.6%)、5,346件は東京商工リサーチの集計(同+7.1%)です。両社は倒産の定義や集計対象(負債額の下限など)が微妙に異なるため、件数に差が出ます。11件の差は誤差の範囲であり、「上期として12年ぶりに5,000件を超え、5年連続で増加している」という結論は両社で一致しています。数字を引用するときは、どちらの集計かを明示するのが実務的です。
12の兆候のうち、いくつ当てはまったら危険なのですか。
目安として、3つ以上該当したら資金調達の選択肢を広げる段階です。ただし数の問題だけではありません。本文で示した通り、「2. 社会保険料・税金を待ってもらった」「7. 返済のために借りることを検討した」「10. 社長個人が会社の支払いを立て替えた」の3つは、単独で該当しただけでも重く見るべき項目です。これらは、通常の支払い優先順位を崩し始めた証拠だからです。なお、この評価は筆者の実務経験に基づく整理であり、公的な診断基準ではありません。
売上は伸びているのに現金が減っています。これも危険な兆候ですか。
危険な兆候になり得ます。売上が伸びると、仕入・外注費・人件費という支出が先に発生し、入金は支払サイト分だけ遅れて来ます。この差額を増加運転資金と呼びます。年商1億円で入金サイト60日・支払サイト30日なら、30日分の売上に相当する現金が恒常的に不足する計算です。売上が2倍になれば、この不足額も2倍になります。「売れているのに苦しい」は、資金繰りの世界では珍しくない現象です。資金繰り悪化の7つの原因で、この構造を詳しく分解しています。
ゼロゼロ融資の返済が始まって払えません。まず何をすべきですか。
延滞する前に、借入先の金融機関に返済条件の変更(リスケ)を相談することです。延滞してから相談するのと、延滞前に自ら相談するのとでは、金融機関の受け止め方がまったく異なります。リスケは新たな借入を増やさずに月々の支出を減らす手段であり、コスト面でも最初に検討すべき選択肢です。中小企業活性化協議会や405事業(費用の3分の2を補助・上限300万円)といった公的な枠組みも使えます。手順はリスケ(返済条件変更)の全手順にまとめました。
取引先が倒産して売掛金が回収できません。どうすればよいですか。
回収不能額そのものより、その取引先からの「翌月以降の売上が消えたこと」の影響を先に計算してください。売掛金回収難による倒産は2026年上半期で32件、前年同期比+128.6%と急増しており、連鎖は現実に起きています。当座の資金が必要な場合、他の売掛先に対する債権を資金化する方法があります。ただし、その債権の売却先を選ぶ際は、契約書に買戻特約・償還請求権・表明保証・連帯保証といった条項が入っていないかを確認してください。金融庁は、これらがある取引を偽装ファクタリングの疑いがあるとしています。
物価高で利益が出ません。値上げ交渉に使える制度はありますか。
2026年1月1日に施行された取適法(中小受託取引適正化法)が使えます。旧・下請法を改正・改称したもので、価格協議に応じない一方的な代金決定を禁止し、支払期日を受領日から60日以内と定め、手形の交付を禁止しました。適用対象も拡大し、資本金基準に加えて従業員基準(300人/100人)が追加され、製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託も新たに対象になりました。違反には勧告・指導のほか50万円以下の罰金が定められています。詳細は公正取引委員会のリーフレットで確認できます。

まとめ

2026年上半期の倒産は5,300件を超えました。

その4社に3社は、負債1億円未満の小さな会社です。

統計は他人事に見えます。

しかし、12の兆候のうち3つに手が挙がったなら、統計はもうあなたの帳簿の中にあります。

倒産は、ある日突然起きません。

数ヶ月前から、通帳残高を見る回数として、立て替えた社長個人のカード明細として、静かに現れます。

見えている間に動く。

それだけが、1,200社を見てきた私が言える、唯一の実務です。

出典・参考
帝国データバンク「2026年上半期 全国企業倒産集計」
東京商工リサーチ「2025年 全国企業倒産状況」
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)リーフレット」
金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
日本政策金融公庫「金利情報」
日本銀行「長・短期プライムレート推移」

監修者
黒岩 智之(くろいわ ともゆき)/事業再生コンサルタント。地方銀行の融資審査部に9年在籍後に独立し、中小企業の資金調達支援に18年携わる。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。



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