資金繰りが悪化する7つの原因|黒字なのに金がない構造を分解する

資金調達の基礎知識
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資金繰りが悪化する7つの原因|黒字なのに金がない構造を分解する

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • 資金繰りの悪化は「損益」ではなく「タイミング」で起きる。利益が出ていても、入金より支払いが先に来れば現金は尽きる。
  • 原因は7つに分解できる。うち4つは「時間差」由来、2つは「利益とキャッシュのズレ」由来、1つは「そもそも売れていない」
  • 自社の状態はCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)で採点できる。式は売上債権回転日数+棚卸資産回転日数−仕入債務回転日数
  • CCCがプラスの日数分だけ、現金を立て替えている。売上が伸びるほど立替額も膨らむ。これが「増収なのに苦しい」の正体。
  • ただし、2026年上半期の倒産主因の80.2%は「販売不振」。資金繰り改善では、売れていないという原因は治らない。

決算書は黒字だった。

税理士からも「今期はよく頑張りましたね」と言われた。

なのに、通帳の残高が減っていく。

来月の支払いを考えると、夜、目が覚める。

利益は出ているのに、金がない。

この矛盾は、経理を知らないから起きるのではない。

損益計算書が、時間を無視して作られているから起きる。

売上は請求した瞬間に立つ。

だが現金は入金された瞬間にしか増えない。

その間に、仕入代金も、給与も、家賃も出ていく。

この「ズレ」の日数が、あなたが立て替えている金額だ。

この記事では、資金繰りが悪化する原因を7つに分解し、黒字倒産のメカニズムを図で示す。

そしてCCCという一つの指標で、自社が何日分の現金を立て替えているのかを採点させる。

読み終えたとき、「なんとなく苦しい」は「何日分、いくら足りない」に変わっているはずだ。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。実際のご契約にあたっては、事前に各社の公式サイトおよび契約書面をご確認いただき、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。掲載している数値・条件は2026年7月時点の公開情報に基づきます。融資・ファクタリングいずれも審査があります。

01資金繰り悪化は「損益」では説明できない

まず、前提を一つ壊しておきたい。

損益計算書は、現金の動きを表していない。

会計には発生主義という原則がある。

売上は、商品を引き渡した時点、役務を提供した時点で計上する。

代金を受け取った日ではない。

だから、3月31日に納品して5月31日に入金される取引は、3月の売上になる。

だが現金が増えるのは5月31日だ。

2ヶ月のあいだ、その売上は「紙の上」にしかない。

その2ヶ月間も、材料費は払う。外注費も払う。給与も払う。

先に払って、後で受け取る。

これが事業というものの基本構造だ。

そして、この構造がある限り、黒字でも現金は尽きうる。

■ 3つの数字は、別物です
  • 利益=売上 − 費用(発生主義。現金の動きとは無関係)
  • キャッシュフロー=現金の増減(入金 − 出金)
  • 資金繰りいつ現金が入り、いつ出るかの時間割

倒産は「利益がマイナス」で起きるのではありません。支払日に現金がないときに起きます。

02黒字倒産のメカニズム図

言葉で説明するより、時間軸で見たほうが早い。

売上100万円の取引を一つ受注し、それが現金になるまでを追う。

黒字倒産のメカニズム:売上計上から入金までのタイムラグ 黒字倒産のメカニズム ── 現金は「後から」しか来ない

3/1 3/31 4/30 5/31

3/1 材料を仕入れる 現金 −60万円(4/30払い)

3/31 納品・請求 売上 +100万円(帳簿上)

4/30 仕入代金を支払う 現金が実際に出る −60万円

5/31 ようやく入金 現金 +100万円

この 91日間、現金は「マイナス60万円」のまま

帳簿上の利益は +40万円。だが 4/30 に 60万円がなければ、そこで終わる

図1:売上100万円・仕入60万円・利益40万円という「黒字」の取引でも、現金は91日間マイナスのまま。4月30日の支払日に手元資金がなければ、利益は救ってくれない。

この取引の利益は40万円だ。

立派な黒字である。

だが、4月30日に60万円の現金がなければ、そこで終わる。

入金は5月31日。1ヶ月間に合わない。

これが黒字倒産だ。

そして重要なのは、この取引が増えるほど、立替額も増えるという点だ。

同じ取引が5件になれば、立て替える現金は300万円になる。

受注が増えると、資金繰りは苦しくなる。

これを増収運転資金という。

「売上が伸びているのに苦しい」という相談の、ほぼすべてがこれだ。

03資金繰りが悪化する7つの原因

現場で見てきた原因を、7つに絞った。

分類の軸は「時間差」由来か、「利益とキャッシュのズレ」由来か、それとも「売れていない」かだ。

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# 原因 分類 現金への効き方
1 売上債権の回収サイトが長い 時間差 入金が遅れる分、立替が増える
2 仕入債務の支払サイトが短い 時間差 出金が早い分、立替が増える
3 在庫が増えている 時間差 現金が「モノ」に変わって寝る
4 売上が伸びている(増収運転資金) 時間差 立替の「件数」が増える
5 借入の元金返済 利益とのズレ 費用にならないが、現金は出る
6 税金・社会保険料の支払い 利益とのズレ 利益が出た翌期に、まとめて出る
7 販売不振(そもそも売れていない) 収益構造 立替以前に、入金の総量が足りない
資金繰りが悪化する7つの原因の分類マップ 7つの原因 ── 3つのグループに分かれる

A. 時間差(立替)が原因 ① 売上債権の回収サイトが長い ② 仕入債務の支払サイトが短い ③ 在庫が増えている ④ 売上が伸びている → CCC で日数として測れる

B. 利益とキャッシュのズレ ⑤ 借入の元金返済 (費用にならない。だが現金は出る) ⑥ 税金・社会保険料 (利益の翌期に、まとめて出る) → 資金繰り表でしか見えない

C. 収益構造そのものの問題 ⑦ 販売不振 ── 2026年上半期の倒産主因の 80.2%(TDB) 資金調達では治らない。ここだけは、別の処方箋がいる

図2:7つの原因は3グループに分かれる。AとBは資金繰りの技術で改善できるが、Cは事業そのものの問題。

04原因1〜4:時間差が現金を食う

原因1:売上債権の回収サイトが長い

末締め翌月末払い。

これが一般的な条件だとして、実際の立替期間はどうなるか。

月初1日に納品した分は、入金まで60日待つ。

月末31日に納品した分でも30日待つ。

平均すると約45日だ。

これが「末締め翌々月末」だと平均75日。

30日の差は、月商の1ヶ月分の現金に相当する。

月商1,000万円の会社なら、サイトが30日延びるだけで1,000万円の現金が消える

2026年1月1日に施行された取適法では、支払期日は受領日から60日以内と定められた。

紙の約束手形の交付も禁止された。

これは制度が味方についた、数少ない変化だ。

公正取引委員会の取適法リーフレットを手元に置いて交渉してほしい。

原因2:仕入債務の支払サイトが短い

回収が翌月末なのに、支払いが当月末。

この1ヶ月の逆ざやが、常時、現金を吸い上げる。

支払サイトを延ばす交渉は、コストゼロで運転資金を作る唯一の方法だ。

金利も手数料もかからない。

事業資金の調達方法12種類(検討順に並べた)で、これを検討順序ピラミッドの最上層に置いたのはそのためだ。

原因3:在庫が増えている

在庫は「現金の死体」だ。

言い方が悪いのは承知している。だが、そう思ったほうがいい。

100万円の在庫は、100万円の現金がモノに姿を変えて、倉庫で眠っている状態だ。

売れるまで、現金には戻らない。

そして厄介なのは、在庫は損益計算書では費用にならないという点だ。

売れて初めて売上原価になる。

つまり在庫を積んでも、利益は減らない。

現金だけが減る。

「利益は出ているのに金がない」会社の倉庫を見に行くと、たいてい在庫が積み上がっている。

▲ 在庫は、損益計算書に姿を現さない

100万円分を仕入れて在庫のまま残した場合、その100万円は売上原価になりません(売れて初めて費用になる)。
つまり利益は減らないのに、現金だけが100万円減る
「今期は利益が出ているのに、なぜか金がない」——倉庫を見に行くと、答えがそこにあることが少なくありません。
在庫は、現金が「モノ」の姿で眠っている状態です。

原因4:売上が伸びている(増収運転資金)

最も誤解されている原因が、これだ。

売上が伸びると、資金繰りは苦しくなる。

理由は単純で、立替の件数が増えるからだ。

月商1,000万円のときに2,000万円の立替が要るなら、月商2,000万円になれば4,000万円の立替が要る。

差額の2,000万円は、どこかから持ってくるしかない。

受注を喜んだ翌月に、資金が詰まる。

これを知らずに拡大した会社が、一番速く倒れる。

● 「売れているのに苦しい」は正常な症状です

増収運転資金は、経営が下手だから起きるのではありません。成長すれば起きる、構造的な現象です。
問題は、それを予測していたかどうか。予測していれば、事前に銀行へ「増加運転資金」として相談できます。予測していなければ、支払日の3日前に慌ててノンバンクを探すことになります。

05原因5〜6:利益とキャッシュのズレ

原因5:借入の元金返済

ここが、経営者が最もつまずくポイントだ。

借入の元金返済は、費用ではない。

損益計算書に載るのは利息だけだ。

元金の返済は、貸借対照表の借入金が減るだけ。

だから、こうなる。

月々50万円返済していて、うち利息が5万円なら、損益計算書には5万円しか載らない

だが現金は50万円出ていく。

差額の45万円は、利益の中から払うしかない。

つまり税引後利益が年540万円ないと、年600万円の元金返済は回らない。

「黒字なのに金がない」の、かなりの部分がこれだ。

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項目 損益計算書 現金 ズレ
借入の元金返済 載らない(費用にならない) 出ていく 現金だけ減る
支払利息 費用になる 出ていく ズレなし
減価償却費 費用になる 出ていかない 利益だけ減る
在庫の増加 費用にならない 出ていく 現金だけ減る
売掛金の増加 売上として計上 まだ入らない 利益だけ増える
設備投資 その期は減価償却分のみ 全額、出ていく 現金が大きく減る
※この表が、資金繰り表が必要な理由そのものです。損益計算書だけを見ていると、右側の列(現金)が見えません。

原因6:税金・社会保険料の支払い

利益が出た期の税金は、翌期に払う

そして翌期には、予定納税(中間申告)までやってくる。

つまり、業績が落ちた年に、好調だった前期の税金を払う

これが資金繰りを直撃する。

社会保険料も同じだ。

毎月払っていても、賞与を出せば賞与分の社会保険料が出る。

社会保険料の滞納は、税金の滞納より危ない。

年金事務所は差押えに動く。

そして、売掛金を差し押さえられた瞬間に、売掛先に知られる

そこから取引が細る。

滞納しそうだと分かった時点で、税務署・年金事務所に猶予制度を相談してほしい。

制度の全体像はノンバンクの前に使うべき公的支援(納税の猶予・セーフティネット貸付)にまとめている。

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回収サイトの長さが原因で資金が詰まっているなら、売掛債権の売却(ファクタリング)という選択肢があります。法人・個人事業主のいずれも対象。提出は請求書・通帳の2点のみ(+代表者本人確認書類)。クラウドサインによる完全オンライン完結で、面談は不要です。
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※2026年7月時点の同社公表値です。手数料は「1%〜」と表記されており、上限の記載はありません。実際の手数料は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。お申込みの時間帯や審査状況により、入金が翌営業日以降となる場合があります。ファクタリングは債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。

06原因7:そもそも売れていない(80.2%)

ここまで、資金繰りの「技術」の話をしてきた。

だが、最後に、最も不都合な数字を出す。

帝国データバンクの集計によれば、2026年上半期の企業倒産5,335件のうち、主因の80.2%が「販売不振」だった。

3年連続で8割を超えている。

つまり、8割の会社は、資金繰りの技術で倒れたのではない。

売れなかったから倒れた。

2026年上半期 倒産の主因構成(販売不振80.2%) 倒産の主因 ── 8割は「売れていない」

販売不振 80.2% その他 19.8%

2026年上半期 企業倒産 5,335件(TDB/前年同期比 +6.6%) 上期として12年ぶりに5,000件超。5年連続の増加

資金調達は「時間」を買う行為であって、「売上」を作る行為ではない 調達で買った時間で、価格を上げるのか、客層を変えるのか、撤退するのか。 それが決まっていない調達は、倒産の日付を後ろにずらすだけになる。

図3:2026年上半期の倒産5,335件のうち、主因の80.2%が「販売不振」。出典:帝国データバンク「2026年上半期 全国企業倒産集計」。

これを書くのは気が重い。

だが、綺麗事を言っても資金繰りは改善しない。

資金調達は、時間を買う行為だ。

買った時間で何をするのか。

価格を上げるのか。不採算の取引を切るのか。人を減らすのか。事業をたたむのか。

そこが決まっていない調達は、倒産の日付を後ろにずらして、負債を積み増すだけになる。

売掛金回収難による倒産は、2026年上半期で32件。

前年同期の14件から128.6%増だ。

連鎖はもう始まっている。

【2026年上半期】倒産5,300件超のデータで読む、危ない資金繰りの兆候で、倒産企業に共通する前兆を12項目に分解した。

07CCCで自社を採点する

では、自社は何日分の現金を立て替えているのか。

それを一つの数字にするのがCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)だ。

日本語では「現金循環化日数」。

式はこうだ。

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の計算式 CCC = 現金が戻ってくるまでの日数

売上債権回転日数 売掛金・受取手形 ÷ 1日あたり売上高

棚卸資産回転日数 在庫 ÷ 1日あたり売上原価

仕入債務回転日数 買掛金・支払手形 ÷ 1日あたり売上原価

CCC = この日数分、現金を立て替えている

CCC が プラス45日 なら、月商の約1.5ヶ月分の運転資金がいる CCC が マイナス なら、取引先の金で回している(=現金が先に入る)

図4:CCCの計算式。売上債権回転日数+棚卸資産回転日数−仕入債務回転日数。プラスの日数分だけ、自社が現金を立て替えている。

実際に計算してみよう。

決算書の数字を使う。必要なのは5つだけだ。

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項目 記入例 計算 結果
年間売上高 1億2,000万円 ÷365 1日あたり 約32.9万円
年間売上原価 8,400万円 ÷365 1日あたり 約23.0万円
売掛金+受取手形 1,800万円 1,800 ÷ 32.9 売上債権回転日数 約54.7日
在庫(棚卸資産) 700万円 700 ÷ 23.0 棚卸資産回転日数 約30.4日
買掛金+支払手形 900万円 900 ÷ 23.0 仕入債務回転日数 約39.1日
CCC 54.7 + 30.4 − 39.1 = 約46.0日
必要な立替現金 1日あたり売上 32.9万円 × 46.0日 約 1,513万円
※本表は計算方法を示すための記入例であり、実在の企業の数値ではありません。回転日数の算式には複数の流儀があります(売上原価ベース・売上高ベース等)。銀行に提出する場合は、期首・期末平均を用いるなど、取引金融機関の様式に合わせてください。

この会社は、常時1,513万円の現金を立て替えている。

年商1億2,000万円の会社が、だ。

そして、売上が2倍になれば、立替も約3,000万円になる。

差額の1,500万円を、どこから持ってくるのか。

この数字を把握していない会社は、成長した瞬間に詰まる。

CCCを一度計算しておけば、「なんとなく苦しい」が「46日分、1,513万円足りない」に変わる。

これが、資金繰り改善の出発点だ。

◎ CCCがマイナスになる業種もある

現金商売の小売・飲食は、売った瞬間に現金が入るため売上債権回転日数がほぼゼロ。一方、仕入は掛けで買う。結果、CCCがマイナスになることがあります。
これは「取引先の金で商売を回している」状態で、資金繰り上はきわめて強い。
逆に、建設業のように着工から完成・入金まで数ヶ月かかる業種は、CCCが大きくプラスになりやすい。業種によって、必要な運転資金の量は構造的に違います。

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ビジネスの型 売上債権 在庫 仕入債務 CCCの傾向
現金商売(飲食・小売) ほぼ0日 短い 長い マイナスになりうる
卸売・商社 長い 長い 普通 大きくプラス
製造業 長い 長い 普通 大きくプラス
建設業(工事) とても長い 仕掛が膨らむ 普通 最も大きくプラス
医療・調剤 診療報酬は約2ヶ月 薬剤在庫 普通 構造的にプラス
受託サービス 普通 ほぼ0日 短い ややプラス
※業種ごとの一般的な傾向を示したものであり、個社の実績値ではありません。自社の数値は決算書から計算してください。
■ 社会保険料の滞納は、税金の滞納より重い
  • 年金事務所は、売掛金の差押えに動くことがあります。
  • 売掛金を差し押さえられた瞬間、売掛先に「この会社は滞納している」と知られます
  • そこから取引が細る。倒産の直接の引き金になりうる経路です。
  • だからこそ、払えないと分かった時点で猶予制度を申請する。無断で止めるのが、いちばん危ない。

08CCCの改善は、3つの引き算しかない

CCCを縮めるには、式の3つの項をいじるしかない。

つまり打ち手は3つだけだ。

これは、逆に言えば救いでもある。

やることが3つに絞られる。

CCCを改善する3つの打ち手と効果 CCCを縮める打ち手は、3つしかない

打ち手1:売上債権回転日数を「短く」する ・回収サイトの短縮交渉(取適法:支払期日は受領日から60日以内) ・前受金/着手金をもらう ・請求書の発行を遅らせない ・売掛債権を売却する

打ち手2:棚卸資産回転日数を「短く」する ・過剰在庫を処分する(赤字で売っても、現金は戻る) ・発注ロットを見直す ・売れ筋と死に筋を分離し、死に筋の発注を止める

打ち手3:仕入債務回転日数を「長く」する ・支払サイトの延長交渉(コストゼロで運転資金を作る唯一の方法) ・ただし全社に一斉に頼まない。関係の深い1〜2社から個別に相談する

図5:CCCの3項に対応した打ち手。打ち手3(支払サイト延長)だけが、コストゼロで即効性がある。

この3つで足りないとき、初めて外部からの調達を考える。

順番は、事業資金の調達方法12種類の検討順序ピラミッドに従ってほしい。

既存借入の返済が資金繰りを締めているなら、新規調達の前にリスケ(返済条件変更)の全手順を検討する。

そして、資金調達の手段としてファクタリングとビジネスローンのどちらを選ぶかで迷ったら、ファクタリングとビジネスローンの違い(コストは10倍変わる)で同一条件のコストを比較している。

一時的なつなぎで済むのか、それとも常態化しているのか——

その線引きはつなぎ資金の調達方法【事業者向け】で書いた。

09資金繰り悪化の4段階と、打つ手

資金繰りの悪化には、段階がある。

段階によって、残っている選択肢が変わる。

段階を見誤ると、使えたはずの手段を失う。

資金繰り悪化の4段階と、各段階で使える手段 資金繰り悪化の4段階 ── 手が打てるのは、上の2つまで

第1段階:兆候(残高が「なんとなく」減っている) 使える手段:ほぼ全部。公庫・保証協会・銀行プロパー・条件交渉・在庫圧縮 → ここで動けば、コストは最も低い

第2段階:逼迫(3ヶ月以内に資金ショートが見える) 使える手段:公庫・銀行(急ぐ)/リスケ/納税の猶予/条件交渉 → 公庫は2〜4週間。今日申し込めば、まだ間に合う

第3段階:切迫(1ヶ月以内。支払日が特定できている) 使える手段:ノンバンク/ファクタリング/リスケ/支払いの繰延べ → 選択肢が「速いが高い」ものだけになる

第4段階:破綻手前(すでに延滞・差押えが始まっている) 使える手段:中小企業活性化協議会/弁護士/私的整理・法的整理 → この段階で高コストの調達を重ねるのは、傷を深くするだけ

図6:資金繰り悪化の4段階。第1・第2段階で動けば選択肢は多く、コストは低い。第3段階以降は「速いが高い」手段しか残らない。

この図で伝えたいのは、段階が下がるほど、選択肢が減り、値段が上がるという一点だ。

第1段階で公庫に相談していれば年3.50〜5.20%だったものが、第3段階では手数料10%のファクタリングになる。

同じ会社、同じ金額。違うのはタイミングだけ。

そして第4段階。

ここで高コストの調達を重ねるのは、傷を深くするだけだ。

私は、この段階の経営者に「もう借りないでください」と言うことがある。

中小企業活性化協議会という公的な相談窓口がある。

費用の3分の2が補助され、上限300万円までの支援がある制度(405事業)もある。

手順はリスケ(返済条件変更)の全手順|中小企業活性化協議会と405事業に書いた。

そして、融資を断られた直後に何が起きるかは融資を断られた直後が、一番危ないで可視化している。

断られた直後の判断が、その後の3年を決める。

▲ 「資金繰り表」がないなら、そこから

自社が第何段階にいるかを知るには、日繰り表で資金ショート予定日を特定するのが最も直接的な方法です。
銀行に出す月次の資金繰り表と、自分を守るための日繰り表は、目的も粒度も違います。記入例つきで資金繰り表の作り方(月次表と日繰り表)にまとめました。

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FAQよくある質問

黒字なのに資金繰りが悪化するのは、経理のミスですか。
ミスではありません。会計は発生主義で作られており、売上は入金日ではなく納品・役務提供の時点で計上されます。そのため、利益(帳簿上の数字)と現金(実際の残高)は構造的にズレます。加えて、借入の元金返済は費用にならないのに現金は出ていき、在庫の増加も費用にならないのに現金は減ります。黒字なのに金がないのは、正常な会計処理をした結果として起こりうる現象です。だからこそ、損益計算書とは別に資金繰り表が必要になります。
CCCは何日以下ならよいのですか。
業種によって適正値が大きく異なるため、「何日以下なら安全」という一律の基準はありません。現金商売の小売・飲食はCCCがマイナスになることもあり、建設業や製造業は数十日から百日を超えることもあります。重要なのは水準そのものではなく、(1)自社のCCCを数値として把握していること、(2)前期・前々期と比べて悪化していないか、(3)売上が伸びたときに立替額がいくら増えるかを計算できていること、の3点です。
売上が増えているのに資金繰りが苦しいのはなぜですか。
増収運転資金と呼ばれる現象です。売上が増えれば、その分の仕入・外注費・人件費を先に払う必要があり、入金は数十日後になります。つまり、立て替える現金の総額が売上に比例して増えます。CCCが46日の会社なら、月商が1,000万円増えるごとに、約1,500万円の追加運転資金が必要になる計算です。成長は資金を食います。事前に銀行へ「増加運転資金」として相談しておくのが正攻法です。
在庫を処分すると赤字になります。それでも減らすべきですか。
資金繰りが逼迫しているなら、処分による現金化を検討する価値があります。在庫は、現金が「モノ」の形で寝ている状態です。損益上は赤字が出ますが、現金は戻ります。会社が倒れるのは赤字のときではなく、支払日に現金がないときです。ただし、処分による赤字は決算書に残り、その後の融資審査に影響します。銀行への説明(一過性の在庫処分損である旨)を準備したうえで実行するのが現実的です。
仕入先に支払いを待ってもらう交渉は、信用を失いませんか。
リスクはあります。だからこそ、全社に一斉に頼むのではなく、関係が深く、自社の発注を必要としている取引先1〜2社に個別に相談するのが実務です。「一時的に支払サイトを30日延ばしてほしい。理由はこうで、いつまでに戻す」と、期限と根拠を示して相談してください。何も言わずに支払日を過ぎるほうが、はるかに信用を毀損します。
資金繰りが悪化したら、まず何から手をつけるべきですか。
日繰り表を作り、資金ショートの予定日を日付で特定することです。「なんとなく苦しい」の状態では、どの手段が間に合うかを判断できません。予定日が2ヶ月先なら公的融資が間に合い、2週間先ならノンバンクやファクタリングしか選択肢が残りません。期限が決まって初めて、手段が決まります。CCCの計算と日繰り表、この2つが出発点です。

まとめ

資金繰りの悪化は、損益では説明できない。

原因は7つ。

そのうち4つは「時間差」、2つは「利益とキャッシュのズレ」、そして1つは「売れていない」。

前の6つは、CCCという一つの数字と、資金繰り表で見えるようになる。

売上債権回転日数+ 棚卸資産回転日数− 仕入債務回転日数

この計算を、今日、一度やってほしい。

「なんとなく苦しい」が、「46日分、1,513万円足りない」に変わる。

そこからしか、まともな打ち手は生まれない。

そして最後の1つ——販売不振。

2026年上半期の倒産主因の80.2%がこれだった。

資金調達は時間を買う行為だ。

買った時間で何を変えるのか。

そこまで決めたうえで、調達に動いてほしい。

出典・参考
帝国データバンク「2026年上半期 全国企業倒産集計」
東京商工リサーチ「2025年 全国企業倒産状況」
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)リーフレット」
中小企業庁
日本銀行「長・短期プライムレート推移」
金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
日本政策金融公庫「金利情報」

監修:黒岩 智之(くろいわ ともゆき)
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年。地方銀行の融資審査部に9年在籍後、独立。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。

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