注文書ファクタリング|請求書がなくても資金化できるのか【将来債権】

ファクタリング
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注文書ファクタリング|請求書がなくても資金化できるのか【将来債権】

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • 注文書ファクタリングの法的根拠は民法466条の6(将来債権の譲渡性)。「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」——2020年4月施行の改正民法で明文化された。だから、請求書がなくても譲渡できる。
  • 使えるのは、受注はしたが、まだ着工していない/工事の途中で、まだ請求書を出せないという局面。材料費・外注費・人件費が先に出ていく段階を埋める。
  • 手数料が高くなるのは、業者が悪いからではない。債権がまだ発生していないからだ。工事が完了しなければ、そもそも代金債権は生まれない。このリスクを買取業者が負う以上、価格に乗る。
  • 建設業との相性は、構造的に良い。出来高払い、長い工期、材料費の先行——このすべてが「請求書が出るまでの時間」を長くしているからだ。
  • 最も危険な使い方は、受注が確定していない案件を持ち込むこと。それは将来債権ではなく、架空債権になりかねない。詐欺罪に問われるおそれがある。

受注は、取れた。

注文書も、届いている。

工期は、4か月。

だが、材料費は今月払わなければならない。

職人の手間賃も、来月には出ていく。

そして、請求書を出せるのは、工事が終わったあとだ。

入金は、早くても5か月後。

——この5か月を、どうやって越えるのか。

これが、建設業の資金繰りの核心だ。

通常のファクタリングは、請求書がないと使えない。

請求書が出せるのは、仕事が終わってからだ。

つまり、いちばん金が必要な期間に、使えない。

ここに、注文書ファクタリングが入ってくる。

請求書ではなく、注文書の段階で資金化する。

なぜ、そんなことができるのか。

法的な根拠がある。

民法466条の6。

「将来債権の譲渡性」

——これを説明している記事を、私はほとんど見たことがない。

だから、書く。

そして同時に、なぜ手数料が高くなるのかを、メカニズムから説明する。

「高い」には、理由がある。

その理由を知らないまま使うのが、危ない。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。手数料・条件は各社により異なり、掲載している内容は2026年7月時点の一般的な整理です。実際の契約にあたっては、必ず契約書面をご確認いただき、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。ファクタリングには審査があります。ファクタリングは債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。手数料は金利ではなく、債権売買の対価です。金融庁は、ファクタリングを装いながら経済的に貸付けと同様の機能を有するものは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。

01結論:請求書がなくても、法的には譲渡できる

まず、言葉の定義から始める。

注文書ファクタリングとは、取引先から受注した段階で発行される注文書(発注書・契約書)をもとに、将来発生する売掛債権を先に売却して、資金化する仕組みだ。

ポイントは、「まだ請求できない」という点にある。

工事はこれから。納品もこれから。検収も、これから。

つまり、代金を請求する権利は、まだ発生していない。

では、なぜ売れるのか。

民法が、それを認めているからだ。

請求書ファクタリングと注文書ファクタリングで資金化できるタイミングの違い 「請求書が出せる日」を、待たなくてよい

受注 注文書が届く

着工 材料費・外注費 が出ていく

施工中 人件費が 毎月出ていく

完工・検収 請求書を出せる

入金 数か月後

請求書ファクタリング ここからしか使えない →

注文書ファクタリング ← ここから使える

いちばん金が要るのは、着工から完工までの期間 請求書ファクタリングは、その期間には使えない。ここが、構造的な問題だった

図1:資金化できるタイミングの違い。請求書ファクタリングは完工後からしか使えない。注文書ファクタリングは、受注の段階から使える。

02民法466条の6|将来債権の譲渡性

条文を見る。

民法466条の6(将来債権の譲渡性)

第1項「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。」

第2項「債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。」

読み解く。

第1項が言っているのは、こうだ。

「まだ存在していない債権も、売買の対象にできる」

第2項が言っているのは、こうだ。

「その債権が実際に発生したときには、買った人のものになる」

つまり——

注文書の段階で債権を売っておけば、工事が完了して代金債権が発生した瞬間に、その債権は買取業者のものになる。

これが、注文書ファクタリングの法的な仕組みだ。

この条文は、2020年4月1日施行の改正民法で明文化された。

それまでは、判例の積み重ねで認められていたにすぎない。

明文化されたことで、取引の基盤がはっきりした。

注文書ファクタリングが広がった背景には、この法改正がある。

民法466条の6に基づく将来債権譲渡の仕組み 民法466条の6 ── まだ無いものを、先に売る

民法466条の6 第1項 「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」

① 注文書の段階 代金債権は まだ発生していない (工事はこれから)

② 譲渡契約 将来の債権を 今、売る → 資金を受け取る

③ 工事が完了 代金債権が発生 → 当然に、譲受人が  取得する(2項)

改正民法(2020年4月1日施行)で、この構造が条文として明文化された それ以前は、判例の積み重ねによって認められていたにすぎない

ただし ── 工事が完了しなければ、③は起こらない。ここがリスクの正体

図2:民法466条の6の仕組み。将来債権を今売る。工事が完了して債権が発生した瞬間、それは譲受人のものになる。

■ 民法466条の周辺を、もう一段だけ
  • 466条1項:債権は、原則として譲り渡すことができる。
  • 466条2項:譲渡制限特約(「この債権を譲渡してはならない」という取り決め)があっても、譲渡そのものは有効である。ただし、悪意・重過失の譲受人に対しては、債務者は履行を拒める場合があります。
  • 466条の5預貯金債権については、譲渡制限特約が譲受人に対しても効力を持つ(=銀行預金は、特約があれば譲渡できない)。
  • 466条の6将来債権も譲渡できる。注文書ファクタリングの根拠。

条文の全体像はファクタリングとは(金融庁の定義から、債権譲渡の仕組みをゼロから解説する)で、466条2項から466条の6まで通しで整理しています。
条文そのものはe-Gov 法令検索「民法」で確認できます。

03請求書ファクタリングとの、時間軸の違い

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項目 請求書ファクタリング 注文書ファクタリング
対象 すでに発生した売掛債権 これから発生する売掛債権(将来債権)
法的根拠 民法466条(債権の譲渡性) 民法466条の6(将来債権の譲渡性)
必要な書類 請求書・通帳など 注文書・発注書・工事請負契約書など
使えるタイミング 納品・検収が終わったあと 受注した直後から
資金化までの期間 比較的短い(債権はすでに確定) 長い(工事完了・入金までが遠い)
手数料 相対的に低い 相対的に高くなる
業者のリスク 売掛先が支払わないリスク 売掛先が支払わないリスク + そもそも債権が発生しないリスク
取扱う業者 多い 限られる(対応していない業者もある)
※一般的な傾向の整理です。実際の対応可否・手数料・必要書類は各社により異なります。手数料の水準は、必ず各社の公表条件・見積もりでご確認ください。いずれも審査があります。ファクタリングは債権譲渡であり、貸付けではありません。

この表で、下から2行目がすべてを説明している。

請求書ファクタリングのリスクは、1つ。

「売掛先が、払わないかもしれない」

注文書ファクタリングのリスクは、2つ。

「売掛先が、払わないかもしれない」

「そもそも、債権が発生しないかもしれない」

リスクが1つ増えている。

だから、手数料が上がる。

これは、業者の良心の問題ではない。

構造の問題だ。

04なぜ手数料が高くなるのか【リスクの分解】

「注文書ファクタリングは手数料が高い」

——多くの記事が、そう書いている。

だが、なぜ高いのかを分解した記事は、少ない。

積み上げてみる。

注文書ファクタリングの手数料が高くなる理由をリスクごとに積み上げた図 手数料の中身 ── リスクを、一つずつ積み上げる

① 売掛先が支払わないリスク 請求書FTでも同じ

② 工事が完了しないリスク 注文書FT特有

③ 検収で減額されるリスク 注文書FT特有

④ 契約が変更・解除されるリスク 注文書FT特有

⑤ 資金の拘束期間が長いこと 注文書FT特有

⑥ 債権の実在性を確認しにくいこと 注文書FT特有

請求書ファクタリングにはない5つのリスクが、価格に乗る 「高い」のは業者の良心の問題ではなく、引き受けているリスクの量の問題

図3:注文書ファクタリングの手数料を構成するリスク。請求書ファクタリングにない5つが上乗せされる。だから手数料は高くなる。

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# リスク 具体的に、どういうことか
1 売掛先が支払わない 元請が倒産する、支払いを遅らせる。請求書ファクタリングにもある共通のリスク
2 工事が完了しない 自社が施工できなくなる、職人が確保できない、資材が入らない。完了しなければ、代金債権はそもそも発生しない
3 検収で減額される 出来高が想定を下回る、施工不良で手直しが入る、追加費用を差し引かれる。債権の額が、注文書の額と一致しない
4 契約が変更・解除される 発注者の都合で工事が中止される、設計変更で金額が変わる
5 資金の拘束期間が長い 工期4か月+支払サイト2か月なら、回収まで半年。その間、業者の資金は寝ている
6 債権の実在性の確認 請求書なら「納品済み」の事実がある。注文書には、それがない。架空の注文書を持ち込まれるリスクを、業者は常に警戒している
※上記はリスク構造の一般的な整理です。実際の手数料は、注文書の内容・発注者の信用力・工期・自社の実績等により変動し、審査があります。手数料の水準は各社にご確認ください。
◆ 手数料の「高さ」を、どう評価するか

ここで、判断の物差しを一つ渡します。
「その手数料を払っても、その仕事は利益が残るか」——これだけです。
工事の粗利が15%で、注文書ファクタリングの手数料が12%なら、その仕事は、ほぼ利益が残りません。受注する意味が薄くなります。
粗利が30%で、手数料が8%なら、22%が残ります。そして、その資金で次の現場に着手できるなら、合理的な判断になりえます。
比べるべきは「相場」ではなく、「自社の粗利率」です。
支払サイト別・手数料率別の年率換算はファクタリング手数料の相場と実質年率換算表で、比較のための物差しとしてマトリクスにしています。

05建設業と、なぜ相性が良いのか

注文書ファクタリングは、建設業のためにあるような仕組みだ。

理由は、3つある。

建設業の資金繰りにおける支出と入金のタイミングのずれ 建設業のキャッシュフロー ── 出るのが先、入るのが後

0

1か月目 材料費

外注費

人件費

4か月目 人件費

入金 6か月目

検収・支払サイト

この5か月間、金は出ていくだけ

注文書ファクタリングは、この「谷」の入口から使える

図4:建設業のキャッシュフロー。材料費・外注費・人件費が先行し、入金は数か月後。この構造が、資金繰りを圧迫する。

理由1:出来高払いと、長い工期

建設業では、工期が数か月に及ぶ。

その間、材料費・外注費・職人の手間賃が毎月出ていく。

だが、請求書を出せるのは、出来高が確定してからだ。

出来高払いであっても、月ごとの査定・承認を経なければならない。

つまり、支出は毎日発生するのに、収入は月単位・工程単位でしか発生しない。

この非対称性が、建設業の資金繰りを構造的に苦しくしている。

理由2:注文書という「証拠」が存在する

建設業では、注文書・発注書・工事請負契約書がきちんと発行される。

これが大きい。

注文書がなければ、そもそも「将来債権が発生する」ことの根拠が示せない。

口頭の約束では、買取業者は買えない。

建設業には、この「紙の証拠」がある。

だから、注文書ファクタリングが成り立つ。

理由3:元請が、大手・公共であることが多い

下請け・孫請けから見れば、発注者はゼネコンや地方公共団体であることが多い。

この場合、「発注者が払わないリスク」は相対的に低い。

買取業者にとって、これは安心材料だ。

だから、リスク①(売掛先が支払わないリスク)は下がる。

残るのは、リスク②〜⑥だ。

つまり——

「工事が、ちゃんと終わるか」

ここに、審査が集中する。

建設業の資金繰り全体の構造、経営事項審査(経審)への借入の影響、取適法2026の効果については建設業の資金繰り|出来高払い・注文書ファクタリング・経審への影響までにまとめている。

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06審査で見られる5つのこと

注文書ファクタリングの審査は、請求書ファクタリングよりも深く、細かい。

当然だ。

見るべきリスクが多いのだから。

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# 見られること なぜ見るのか 準備すべきもの
1 注文書の実在性 架空の注文書ではないか。書式・押印・日付が整合しているか 注文書・発注書・工事請負契約書の原本または写し
2 発注者(元請)の信用力 その会社は、完工後に代金を払えるか 元請の会社情報。過去の入金履歴(通帳)
3 過去の取引実績 その元請と、これまでも取引してきたか。初めての取引先の注文書は、警戒される 過去の請求書・通帳の入金履歴
4 工事の遂行能力 その工事を、本当に完了させられるか。人員・資材・資金の裏付けはあるか 工程表・見積内訳・自社の施工実績
5 二重譲渡の有無 同じ債権を、他社にも売っていないか 他社での利用状況を、正直に申告する
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▲ 3行目「過去の取引実績」が、実は最も効きます

「その元請と、これまでも取引してきたか」——ここが、審査の分かれ目になることが多い。
通帳に、その元請からの入金が過去に何度も記録されていれば、「この元請は、この会社に、ちゃんと払ってきた」という事実が証明されます。
逆に、初めての元請からの、いきなり大口の注文書——これは、警戒されます。架空債権の典型的なパターンだからです。
だから、通帳は隠さず出してください。そこに、あなたを守る証拠が入っています。
ファクタリングの審査で落ちる理由はファクタリング審査に落ちる12の理由(「審査が甘い会社」を探すのが一番危ない)で12個に分解しています。

07危険な使い方|これは架空債権になりかねない

ここは、最も重要な章だ。

注文書ファクタリングには、一線がある。

その線を越えると、資金調達ではなく、犯罪になる。

線は、ここだ。

「受注が、確定しているかどうか」

将来債権と架空債権を分ける境界線を示したフローチャート 将来債権と架空債権を分ける、たった一本の線

注文書を持ち込もうとしている

その受注は、確定していますか? (注文書が発行され、契約が成立しているか)

はい

いいえ

将来債権 民法466条の6により、 適法に譲渡できる → 注文書ファクタリングの  正当な対象

架空債権 「たぶん受注できるはず」 「見積は出した」 → 存在しない債権を売る  = 詐欺罪のおそれ

「受注が確定しているか」──この一線を、決して越えないでください

図5:将来債権と架空債権を分ける線。受注が確定していれば将来債権。確定していなければ、それは存在しない債権であり、詐欺罪に問われるおそれがある。

● やってはいけない4つのこと
  • ① 見積書の段階で持ち込む。見積は、受注ではありません。契約は成立していない。「たぶん受注できる」は、債権ではありません。
  • ② 金額を水増しした注文書を出す。これは文書の偽造であり、詐欺罪に問われるおそれがあります。
  • ③ 同じ注文書を、複数社に持ち込む。二重譲渡です。後述しますが、これは極めて重い。
  • ④ 受注が確定していないのに「確定している」と説明する。虚偽の説明で資金を得れば、詐欺罪に問われるおそれがあります。

そして、こうした行為を「持ちかけてくる業者」がいたら、その業者自体が危険です。
「見積書でも買い取ります」「注文書は後で用意すればいい」——こういう言葉が出たら、その場を離れてください。
悪質業者の見分け方と通報先はファクタリング会社の選び方|悪質業者を見抜く15のチェックリストに。

08二重譲渡という、もう一つの落とし穴

二重譲渡とは、同じ債権を、複数の相手に売ることだ。

「A社に売った債権を、B社にも売る」

これは、やってはいけない。

法的にも、実務的にも、致命的だ。

なぜ起きるのか。

資金繰りが追い詰められているからだ。

A社から資金を得た。だが、まだ足りない。だから、B社にも同じ債権を持ち込む。

——この瞬間、資金調達は終わり、犯罪が始まる。

そして、二重譲渡は必ず発覚する。

債権譲渡登記を確認されるからだ。

ただし——ここに、一つ重要な論点がある。

■ 個人事業主は、債権譲渡登記ができません

債権譲渡登記(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律)は、譲渡人が法人である場合にしか使えません。
つまり、個人事業主・一人親方が譲渡した債権は、登記されません。
これは、二重譲渡のリスクが、業者から見て「確認しにくい」ということを意味します。
結果として、個人事業主のファクタリングは、法人よりも手数料が高くなる傾向があります。これは差別ではなく、構造の問題です。
この決定的な事実は、ほとんどのサイトで書かれていません。詳しくは個人事業主・フリーランスのファクタリング(「債権譲渡登記ができない」という決定的な事実)で解説しています。
2社間・3社間の違いと、債権譲渡登記の実務は2社間と3社間ファクタリングの違い(手数料の差は、どこから生まれるのか)を。

← 横にスクロールできます →

二重譲渡をすると、何が起きるか 結果
債権譲渡登記で発覚する(法人の場合) 契約違反。買戻しを請求される
元請への通知・確認で発覚する(3社間の場合) 元請の信用を失う。以後の受注に影響する
業者間の情報共有で発覚する 業界内で取引を断られるようになる
刑事責任 詐欺罪に問われるおそれがある
結果として 資金調達の手段を、すべて失う
※上記は一般的な整理です。個別の法的評価については、弁護士にご相談ください。

二重譲渡をしてしまう人は、悪人ではない。

追い詰められた人だ。

私は、そういう相談を何度も受けてきた。

だから、書いておく。

二重譲渡を考えるところまで来ているなら、それはもう、資金調達の問題ではない。

事業の構造の問題だ。

そのときは、ファクタリングを増やすのではなく、出口を探してほしい。

多重ファクタリングから抜け出す方法(自転車操業の出口はどこか)に、その手順を書いた。

説教は、していない。

次の一手だけを、書いてある。

09使うべきか、使わざるべきか【判断フロー】

注文書ファクタリングを使うべきかを判断するためのフローチャート 注文書ファクタリングを、使うべきか

着工前・施工中に資金が要る

① 銀行・公庫の運転資金融資は検討したか

最も低コスト。ただし時間がかかる

② すでに請求できる売掛金はないか

請求書FTのほうが手数料は低い

③ 受注は、確定しているか

いいえ

はい

使ってはいけない 確定していない受注は、 債権ではありません

検討してよい ただし、手数料を引いても その工事に利益が残るか

図6:判断フロー。①②を先に検討し、③で受注が確定していることを確認する。そのうえで「利益が残るか」で決める。

10契約書で確認すべき7項目

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# 確認項目 なぜ重要か
1 償還請求権(リコース)の有無 元請が払わなかったとき、自社が買い戻す義務があるか。あるなら、それは実質的に借入に近い
2 買戻特約の有無 「一定の場合に買い戻す」という条項が隠れていないか
3 表明保証の内容 「債権が確実に発生することを保証する」という条項は、実質的に保証を負わせる仕組みになりうる(東京地裁 令和4年3月4日判決)
4 工事が完了しなかった場合の取扱い これが最重要。工事が中止・変更されたとき、誰がどう負担するのか
5 検収で減額された場合の取扱い 出来高が注文書の額を下回ったとき、差額をどう処理するのか
6 公正証書の作成を求められていないか 公正証書は、強制執行を容易にします。求められた場合は、その場で契約しないこと(東京高裁 令和3年7月1日判決)
7 連帯保証人を求められていないか 債権売買に、なぜ保証人が要るのか。ここは、疑ってよい
※金融庁は、償還請求権・買戻特約・表明保証・公正証書・連帯保証人などを、偽装ファクタリングの危険信号として挙げています。契約書のタイトルではなく、「リスクが誰に残っているか」を見てください。出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
● 4番目の項目について、もう少しだけ

「工事が完了しなかった場合、どうなるのか」——これが、注文書ファクタリングの契約書で最も重要な条項です。
ここに、「工事が完了しない場合、利用者は買取代金を返還する」と書いてあれば——
それは、リスクが利用者に残っているということです。買取業者は、リスクを負っていない。
そして、リスクを負わない「債権売買」は、経済的には貸付けに近づきます。
金融庁は、ファクタリングを装いながら経済的に貸付けと同様の機能を有するものは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。
「工事が完了しないリスクを、業者が負っているか」——ここを、契約書で確認してください。
裁判例7件から合法と違法の境界線を整理した記事はファクタリングは「やばい」のか|裁判例7件で読む、合法と違法の境界線です。

請求書が出せる段階なら、こちらのほうが手数料は低い|株式会社No.1
注文書ファクタリングは、手数料が相対的に高くなります。もし、すでに請求できる売掛債権が手元にあるなら、まずそちらを検討してください。株式会社No.1は、買取手数料0.5%〜15%、買取可能額50万円〜3億円。償還請求権なし(ノンリコース)を明記。最短30分での振込に対応し、電子契約で全国対応。設立2016年1月7日/資本金8,000万円/代表 濵野邦彦。
手数料 0.5〜15%最短30分振込50万〜3億円ノンリコース電子契約可

無料で買取金額を確認する

※手数料・スピードは2026年7月時点の同社公表値です。実際の手数料は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。お申込みの時間帯や審査状況により、入金が翌営業日以降となる場合があります。ファクタリングは債権譲渡(民法466条)であり、貸付けではありません。手数料は金利ではなく、債権売買の対価です。手数料は1回ごとに発生するため、反復して利用すると負担が累積します。まず、銀行・日本政策金融公庫の運転資金融資を検討してください。

FAQよくある質問

注文書ファクタリングの法的根拠は何ですか。
民法466条の6(将来債権の譲渡性)です。同条1項は「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」と定め、2項は「債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する」と定めています。つまり、まだ発生していない債権も譲渡でき、実際に債権が発生した時点で、譲受人(買取業者)がそれを当然に取得する——という仕組みです。この条文は2020年4月1日施行の改正民法で明文化されました。それ以前は判例の積み重ねによって認められていたにすぎません。
なぜ、注文書ファクタリングは手数料が高いのですか。
債権が、まだ発生していないからです。請求書ファクタリングでは、納品・検収が終わっており、代金を請求する権利がすでに存在します。買取業者が負うリスクは「売掛先が支払わないかもしれない」という一つだけです。一方、注文書ファクタリングでは、それに加えて「そもそも債権が発生しないかもしれない」というリスクが乗ります。工事が完了しない、検収で減額される、契約が変更・解除される、資金の拘束期間が長い、債権の実在性を確認しにくい——これらのリスクを買取業者が引き受ける以上、その分が価格に反映されます。業者の良心の問題ではなく、構造の問題です。
見積書の段階でも、資金化できますか。
できません。そして、してはいけません。見積書は、受注ではありません。契約が成立していない以上、将来債権も発生しません。「たぶん受注できるはず」という段階のものを債権として売れば、それは存在しない債権を売ることになり、詐欺罪に問われるおそれがあります。将来債権と架空債権を分ける線は、「受注が確定しているかどうか」——この一点です。注文書・発注書・工事請負契約書によって契約が成立していること。これが必要です。なお、「見積書でも買い取ります」と持ちかけてくる業者がいたら、その業者自体が危険です。その場を離れてください。
工事が完了しなかった場合、どうなりますか。
契約書の内容によります。ここが、注文書ファクタリングで最も重要な確認事項です。契約書に「工事が完了しない場合、利用者は買取代金を返還する」と書かれていれば、リスクは利用者に残ります。この場合、買取業者はリスクを負っていないことになり、経済的には貸付けに近い性質を帯びます。金融庁は、ファクタリングを装いながら経済的に貸付けと同様の機能を有するものは貸金業に該当するおそれがある、としています。契約前に「工事が完了しないリスクを、業者が負っているのか」を、契約書で必ず確認してください。契約書のタイトルではなく、リスクの所在を見てください。
同じ注文書を、複数の業者に持ち込んでもよいですか。
やめてください。それは二重譲渡です。法人の場合は債権譲渡登記で発覚します。3社間なら、元請への通知・確認で発覚します。業者間の情報共有でも発覚します。そして、詐欺罪に問われるおそれがあります。結果として、資金調達の手段をすべて失うことになります。なお、複数社に「見積もりを取る」ことと、「複数社に同じ債権を売る」ことは、まったく別のことです。見積もりを取って比較するのは、正しい行動です。売却するのは、1社だけです。もし二重譲渡を考えるところまで追い詰められているなら、それは資金調達の問題ではなく、事業構造の問題です。出口を探してください。
建設業以外でも使えますか。
使える場合があります。注文書ファクタリングの本質は「受注してから入金までの期間が長い」ことに対応する仕組みです。したがって、製造業(受注生産で、材料費が先行する)、システム開発(開発期間が長く、検収後に請求する)、イベント・広告の制作業(準備費用が先行する)などでも、同じ構造の資金需要があります。ただし、注文書ファクタリングを取り扱っている業者は限られており、業種によって対応可否が異なります。また、「注文書という形の契約書類が存在すること」が前提になります。口頭の受注では、そもそも譲渡の根拠が示せません。事前に各社にご確認ください。

まとめ

注文書ファクタリングは、魔法ではない。

民法466条の6という、はっきりした条文に根拠を持つ仕組みだ。

「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」

だから、請求書がなくても、注文書の段階で売れる。

——そして、だから手数料が高い。

債権が、まだ発生していない。

工事が完了しなければ、そもそも代金債権は生まれない。

そのリスクを、買取業者が負う。

負う以上、価格に乗る。

「高い」には、理由がある。

その理由を知らないまま使うのが、危ない。

——判断の物差しは、一つだけだ。

「その手数料を払っても、この工事に利益は残るか」

粗利15%の工事に、手数料12%を払うなら、その受注に意味はない。

比べるべきは相場ではなく、自社の粗利率だ。

そして、最後に一つ。

受注が確定していない案件を、持ち込まないでほしい。

それは将来債権ではない。

架空債権だ。

その一線を越えた瞬間、資金調達は終わり、別のものが始まる。

線は、はっきりしている。

見えている線を、越えないでほしい。

出典・参考
e-Gov 法令検索「民法」(466条・466条の6)
金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」
e-Gov 法令検索「貸金業法」
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)リーフレット」
中小企業庁
・裁判例:東京地裁 令和4年3月4日判決(表明保証)/東京高裁 令和3年7月1日判決(公正証書)/札幌高裁 令和4年7月7日判決(公序良俗違反)

相談窓口
金融庁 金融サービス利用者相談室:0570-016811/日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター:0570-051051/警察相談専用電話:#9110

監修:黒岩 智之(くろいわ ともゆき)
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年。地方銀行の融資審査部に9年在籍後、独立。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。

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