2社間と3社間ファクタリングの違い|手数料の差は、どこから生まれるのか

ファクタリング
ファクタリング

2社間と3社間ファクタリングの違い|手数料の差は、どこから生まれるのか

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

この記事の結論

  • 2社間ファクタリングは「あなた」と「ファクタリング会社」の2者で完結する方式。3社間は、これに「売掛先」が加わり、売掛先の通知または承諾を得る方式です。
  • 手数料は、3社間が概ね1.0〜4.9%、2社間が概ね5〜15%(2026年7月時点の各社公表値)。3倍前後の差があります。
  • この差は、業者の「取り分」の差ではありません。リスクの値段です。2社間では、業者は「債権が本物か売掛先に確認できない」「代金を売主が回収して送金する」という二重のリスクを負っています。
  • 2社間では、業者が債権譲渡登記を求めることがあります。登録免許税は債権個数5,000個以下なら1件7,500円。これに司法書士報酬と、取引終了後の抹消登記費用が加わります。
  • 「3社間になっていて取引先に通知が行った」という事故は実在します。契約前に、どちらの方式か、登記を求められるかを、書面で確認してください。

「3社間になっていて、取引先に通知が行ってしまいました」。

「資金繰りが上手くいっていない会社だと悟られると、今後の信用問題にも関わります」。

こうした相談を、私は何度も受けています。

金は手に入った。

しかし、失ったものは、金では買い戻せないものでした。

この事故の原因は、ほとんどの場合、たった一つです。

自分が契約したのが2社間なのか3社間なのかを、本人が理解していなかった。

手数料の安さだけを見て契約した。

その手数料が安かった理由が、「売掛先に通知するから」だった。

——後から気づいても、通知は取り消せません。

この記事では、2社間と3社間の違いを、手数料の差がどこから生まれるのかという一点に絞って分解します。

そして、多くの記事が触れない債権譲渡登記の実費まで踏み込みます。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、投資・法務・税務に関する助言を行うものではありません。実際のご契約にあたっては、必ず各社の公式サイトおよび契約書面をご確認いただき、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。掲載している数値・条件は2026年7月時点の公開情報に基づきます。

012社間ファクタリングと3社間、何が違うのか

名前の通りです。

2社間は、あなたとファクタリング会社の2者で契約します。

3社間は、これに売掛先が加わり、3者が関与します。

違いは、それだけ。

しかし、この一点の違いが、手数料を3倍前後変え、取引先との関係を変え、契約の安全性を変えます。

まず、金の流れを図で見てください。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの金の流れの比較 2社間では売主が代金を回収してファクタリング会社へ送金し、3社間では売掛先が直接ファクタリング会社へ支払う流れの違いを示す。

2社間ファクタリング(手数料 概ね5〜15%)

あなた(売主)

ファクタリング会社

売掛先 譲渡を知らない

① 債権を譲渡

② 買取代金を入金

③ 期日に、あなたへ支払う

④ あなたが業者へ送金する(回収代行)

→ ③と④の間に、   業者のリスクが集中する

3社間ファクタリング(手数料 概ね1.0〜4.9%)

あなた(売主)

ファクタリング会社

売掛先 通知・承諾を受けている

① 債権を譲渡

② 買取代金を入金

③ 通知・承諾

④ 期日に、   業者へ直接支払う

※手数料の帯は2026年7月時点の各社公表値に基づく目安です。実際の手数料は個別の審査で決まります。

図1:2社間では、代金が一度あなたの口座を経由する。3社間では、売掛先から業者へ直接入る。この一点が、すべての差を生む。

図をよく見てください。

3社間には、あなたが金を預かる瞬間がありません。

売掛先から業者へ、直接入ります。

一方、2社間では代金が一度あなたの口座に入ります。

そして、あなたが業者へ送金する。

この「経由」が、すべてのリスクの源泉です。

なぜなら、あなたの口座に入った瞬間、その金は他の支払いにも使えてしまうからです。

業者から見れば、「入金されたのに、送金されない」という可能性を、常に抱えることになります。

← 横にスクロールできます →

表1:主要3社の対応方式と手数料(2026年7月時点・各社公表値)
会社 手数料 方式 対象 スピード
株式会社エーストラスト 3社間 1.0〜4.9%
2社間 5〜15%
2社間・3社間の両方 法人のみ 最短2時間で送金
株式会社No.1 0.5〜15% 方式の別は要確認 事業者(法人・個人の別は記載なし) 最短30分で振込
QuQuMo online 1%〜(上限の記載なし) オンライン完結・面談不要 法人・個人事業主とも可 最短2時間で入金
※2026年7月時点で各社が公式サイトに掲載している数値です。エーストラストはサイト内で手数料の表記に揺れがあるため、条件表に記載された数値を採用しています。方式(2社間・3社間)および債権譲渡登記の要否は、個別の審査により決まる場合があります。契約前にご確認ください。

02民法467条|「対抗要件」という言葉が、すべてを決めている

法律の話を、一つだけします。

ここを飛ばすと、なぜ通知が必要なのかが分かりません。

民法467条1項は、こう定めています。

債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

「対抗できない」とは、「主張できない」という意味です。

つまり、こうです。

あなたとファクタリング会社の間で債権譲渡契約を結んだ。

その契約自体は、2者の間では有効に成立しています

しかし、その事実を売掛先が知らなければ、売掛先に対して「この債権はうちのものだ、私に払え」と言うことはできません。

売掛先は、これまで通りあなたに払えばよい。

これが「対抗要件」です。

3社間ファクタリングは、この通知または承諾を取ることで、売掛先に対する対抗要件を備える方式です。

債権譲渡の対抗要件の3層構造 当事者間の契約成立、債務者への対抗要件、第三者への対抗要件という3つの層と、それぞれに必要な手続きを示す図。 債権譲渡は、3つの層でできている

層1|当事者間(あなた ↔ ファクタリング会社) 契約書に署名すれば、この層では譲渡は成立している 必要な手続き:契約のみ(2社間はここで止まる)

層2|債務者(売掛先)に対して主張できるか 通知または承諾がなければ、売掛先は今まで通りあなたに払えばよい 必要な手続き:債務者への通知 or 承諾(民法467条1項)=3社間

層3|第三者(他のファクタリング会社・差押債権者)に対して主張できるか 同じ債権が二重に譲渡された場合、どちらが勝つかを決める層 必要な手続き:確定日付のある証書による通知・承諾(467条2項) または、債権譲渡登記(動産債権譲渡特例法)← 2社間で登記を求める理由

図2:2社間は層1で止まる。だから業者は、層3を確保するために債権譲渡登記を求めることがある。

図の層3が、債権譲渡登記の存在理由です。

2社間では、売掛先に通知しません。

だから層2も層3も確保できない。

そこで業者は、通知の代わりに「登記」を使って、層3だけを先に押さえるという手を打ちます。

これが債権譲渡登記です。

法律上の根拠は、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(動産債権譲渡特例法)。

登記をすれば、第三者に対する対抗要件を備えたものとみなされます

売掛先に通知することなく、「この債権は当社のものだ」と他の業者に対して主張できるようになる。

これが、2社間で登記を求められる理由です。

条文はe-Gov法令検索「民法」で確認できます。

ファクタリングの基本的な仕組み全体はファクタリングとは(金融庁の定義と債権譲渡の仕組み)で、民法466条から順に解説しました。

03手数料の差は、どこから生まれるのか【リスクの分解】

ここが、この記事の背骨です。

3社間は1.0〜4.9%。

2社間は5〜15%。

なぜ、3倍前後の差が出るのか。

「2社間のほうが手軽だから高い」——違います。

手数料の差は、業者が引き受けているリスクの量の差です。

分解します。

2社間と3社間の手数料差を、業者が負うリスクの積み上げで分解した図 3社間では債権の実在確認ができリスクが低いのに対し、2社間では債権の真偽確認ができないリスクと売主の送金不履行リスクの二重のリスクが加わることを示す。 手数料=業者が引き受けるリスクの積み上げ

3社間 2社間

売掛先が払わない リスク

事務・審査コスト

1.0〜4.9%

売主が送金しない リスク(横領・流用)

債権が本物か 確認できないリスク

二重譲渡の リスク

売掛先が払わない リスク

事務・審査・登記コスト

5〜15%

共通

この3層が 上乗せされる

※図は手数料の構成イメージであり、各層の比率は業者・案件により異なります。

図3:2社間で上乗せされる3層は、いずれも「売掛先に確認できない」ことから派生する。手数料は、その不確実性の値段。

2社間で上乗せされる3つのリスクを、一つずつ見ます。

リスク1|債権が本物か、確認できない

3社間では、業者は売掛先に直接連絡します。

「この請求書は実在しますか」「支払う予定はありますか」。

債権の実在性を、債務者本人に確認できる。

これは、極めて強い情報です。

2社間では、それができません。

業者が見られるのは、売主が提出した請求書と通帳だけ。

請求書は、偽造できます。

実際、架空の請求書で資金を引き出そうとする事件は起きています。

業者は、その可能性を織り込んだ手数料を設定せざるを得ません。

だから、3社間のほうが「まっとう」に見えることがある

3社間では、売掛先が譲渡を承諾しています。つまり、取引の存在を第三者が確認している状態です。偽装や架空債権が入り込む余地は、構造的に小さくなります。手数料が低いのは、業者が儲けを削っているからではなく、確認できることが多いからです。逆に言えば、2社間で手数料が跳ね上がるのは、確認できないことが多いからです。この構造を知っておくと、提示された手数料が高いときに「何が確認できていないのか」を業者に尋ねられるようになります。

リスク2|売主が、送金しない

2社間では、売掛先からの入金は一度あなたの口座に入ります。

その金は、法的にはもうあなたのものではありません。

しかし、口座に入った金と、他の金は区別がつきません。

資金繰りが苦しければ、その金を他の支払いに回してしまう誘惑が生じます。

そして、実際にそうなるケースがある。

業者にとって、これは回収不能に直結するリスクです。

法的には、使い込めば横領などの問題になり得ます。

しかし、法的に責任を追及できることと、現実に金が回収できることは、別の話です。

このリスクの分だけ、手数料が上がります。

リスク3|二重譲渡

同じ債権を、2社のファクタリング会社に売る。

これが二重譲渡です。

売掛先に通知しない2社間だからこそ、発生します。

このリスクを潰すために、業者は債権譲渡登記を求めます。

登記の話は、次の章で詳しく扱います。

手数料は「業者の欲」ではなく「不確実性の値段」

2社間の手数料が高いのは、業者が儲けたいからではありません。確認できないことが多いからです。逆に言えば、確認できることを増やせば、手数料は下がります。決算書を出す。取引の履歴を見せる。売掛先との過去の入金実績を示す。情報を出すほど、不確実性は減り、手数料は下がる余地が生まれます。年率換算での比較はファクタリング手数料の相場と実質年率換算表で、45通りのマトリクスを作りました。

法人の売掛債権を、最短30分で資金化|株式会社No.1
買取手数料0.5%〜15%、買取可能額50万円〜3億円。償還請求権なし(ノンリコース)と明記されています。設立2016年、資本金8,000万円。東京・名古屋・福岡に拠点を持ち全国対応、電子契約に対応しています。建設業に特化した窓口もあります。売掛先の信用力を中心とした審査があります。
手数料 0.5〜15%最短30分振込50万〜3億円償還請求権なし

無料で買取金額を確認する

※手数料・スピードは2026年7月時点の同社公表値です。実際の条件は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。「審査通過率95%以上(2026年4月現在)」は同社の公表値であり、第三者による検証は行われていません。お申込みの時間帯や審査状況により、入金が翌営業日以降となる場合があります。債権譲渡登記の要否は、契約前にご確認ください。

04債権譲渡登記の実務|登録免許税7,500円と、その先の費用

債権譲渡登記について、費用まで書いた記事はほとんどありません。

だから、ここで書きます。

登記には、実費がかかります。

そして、その実費は、たいてい売主が負担します。

← 横にスクロールできます →

表2:債権譲渡登記にかかる費用(2026年7月時点)
費目 金額の目安 備考
登録免許税(設定登記) 1件 7,500円 債権の個数が5,000個以下の場合。5,000個を超えると1件15,000円
司法書士報酬 数万円程度 事務所により異なる。ファクタリング会社が指定する場合が多い
登記事項証明書の取得費用 数百円〜 取得通数による
抹消登記の登録免許税 1件 1,000円 取引が終わっても、登記は自動では消えない
抹消登記の司法書士報酬 数万円程度 見落とされやすい。誰が負担するのかを契約前に確認する
※登録免許税の金額は登録免許税法に基づく法定額です。司法書士報酬は自由化されており、事務所ごとに異なります。実際に誰がいくら負担するのかは、ファクタリング会社との契約によります。
債権譲渡登記のタイムラインと費用の発生時点 契約時の設定登記から取引終了後の抹消登記まで、費用が発生する時点を時系列で示す図。 登記は「つける」ときと「消す」ときの、2回かかる

契約時 設定登記 登録免許税 7,500円 司法書士報酬 数万円 → 売主負担が多い

支払期日 回収・送金 売掛先 → あなた あなた → 業者 (2社間の場合)

取引終了後 抹消登記 登録免許税 1,000円 司法書士報酬 数万円 → 誰が払う?

登記は自動では消えない。放置すると、登記簿に譲渡の記録が残り続ける

契約前に確認する一文:「抹消登記の費用は、どちらが負担しますか」 この質問に即答できない会社とは、契約を急がないほうがよい

図4:登記の費用は往復で発生する。抹消の負担者を契約書で確認しておかないと、取引終了後にもめる。

登記が残ると、何が起きるか

債権譲渡登記の登記事項概要ファイルは、第三者も閲覧できます。金融機関が融資審査で法人の登記情報を確認する際、債権譲渡登記の有無を見ることがあります。譲渡登記があるということは、「売掛債権を売却して資金を調達した会社である」と読み取られ得るということです。

それだけで融資が否決されるわけではありません。しかし、審査担当者に説明を求められる材料にはなります。取引が終わったら、抹消登記まで完了させること。これを怠ると、記録は残り続けます。

05登記なしで2社間ができる会社と、できない会社

ここで、一つの疑問が生じます。

「登記の話が出なかった会社もあるが、それは何なのか」。

答えは、債権譲渡登記を留保しているケースです。

つまり、「契約はするが、登記は今はしない。何かあったときに登記する」という取り扱いです。

この場合、売主は登記費用を払わずに済みます。

その代わり、業者は第三者に対する対抗要件を持たないまま債権を保有することになります。

当然、その分のリスクは手数料に乗ります。

← 横にスクロールできます →

表3:債権譲渡登記の3つの取り扱いと、その意味
取り扱い 売主の費用 売主にとっての意味 手数料への影響
登記あり 登録免許税+司法書士報酬+抹消費用 法人の登記情報に譲渡の記録が残る。ただし売掛先には通知されない 下がる方向に働くことがある
登記留保 当面は不要 費用は抑えられるが、条件により後から登記される可能性がある。契約書の条項を確認する 変わらない〜やや上がる
登記なし(不要と明示) 不要 手続きは最も軽い。ただし業者のリスクは最大になる 上がる方向に働く
※どの取り扱いになるかは、ファクタリング会社の方針と、個別の審査結果によります。「登記不要」を掲げていても、審査の結果として登記を求められる場合があります。
「登記留保」の契約書は、ここを読む

登記留保の契約書には、たいてい「乙が必要と認めたときは、甲は債権譲渡登記に協力する」といった条項が入っています。つまり、業者の判断でいつでも登記できる、という設計です。

問題は、その「必要と認めたとき」が何を指すのかです。送金が1日遅れたら登記されるのか。それとも、送金が完全に途絶えたときだけなのか。この基準を、契約前に確認してください。曖昧なまま署名すると、想定外のタイミングで登記されることがあります。

個人事業主は、そもそも債権譲渡登記ができない

ここは、極めて重要な事実です。

そして、どの記事にも書かれていません。

債権譲渡登記の根拠法は、動産債権譲渡特例法です。

この法律は、譲渡人が法人である場合に限って、登記による対抗要件の具備を認めています。

つまり、個人事業主は、債権譲渡登記を利用できません。

これは、実務に直接効きます。

個人事業主が2社間ファクタリングを使う場合、業者は第三者対抗要件を取る手段がないまま、債権を買うことになります。

その分、リスクは高く、手数料も上がりやすい。

一方で、登記費用は発生しません。

この構造の全体像は個人事業主・フリーランスのファクタリング(債権譲渡登記ができないという事実)で詳しく書きました。

062社間を選ぶべき場面と、3社間を選ぶべき場面

どちらが良いかは、状況で決まります。

判断軸は3つです。

①売掛先に知られて困るか。

②手数料を優先するか、時間を優先するか。

③売掛先が、債権譲渡に理解を示すか。

表にします。

← 横にスクロールできます →

表4:2社間と3社間の総合比較
項目 2社間ファクタリング 3社間ファクタリング
手数料の目安 概ね5〜15% 概ね1.0〜4.9%
売掛先への通知 原則として行われない(※登記を求められる場合あり) 通知または承諾が必要
入金までの時間 最短30分〜2時間(各社公表値) 売掛先の承諾を待つため、数日かかることがある
代金の流れ 売掛先 → あなた → 業者 売掛先 → 業者(直接)
債権譲渡登記 求められることがある(法人のみ) 通常は不要
売掛先の事務負担 なし 支払先の変更手続きが必要
二重譲渡のリスク 構造的に存在する 通知により、ほぼ排除される
向いている場面 取引先に知られたくない/今日・明日で資金が要る 手数料を抑えたい/売掛先が官公庁・大企業で理解がある
2社間と3社間の選択フローチャート 売掛先への通知の可否、資金が必要になるまでの時間を基準に、2社間と3社間のどちらを選ぶかを判断するフローチャート。 どちらを選ぶか|判断は2問で終わる

Q1. 売掛先に譲渡を知られて、困るか 今後の受注や取引条件に影響しそうか

困る

困らない

2社間 一択 手数料は5〜15%を許容する

Q2. 資金が要るのは 今日・明日か 承諾を待つ余裕はあるか

今日 待てる

2社間 速さを、手数料で買う

3社間 手数料が下がる

売掛先が官公庁・大企業なら、3社間への理解が得られやすい場合もある

図5:問いは2つだけ。通知で困るか、そして待てるか。この2問に答えれば、方式は自動的に決まる。

建設業では、3社間が通りやすいことがある

建設業では、元請から下請への支払いにおいて、債権譲渡が一定程度理解されている場合があります。特に公共工事に関連する債権では、下請の資金繰りを支える手段として、譲渡に承諾が得られるケースがあります。ただし、これは取引先の姿勢によります。一律に「建設業なら3社間が通る」とは言えません。建設業の資金繰り全体の構造は、建設業の資金繰り(注文書ファクタリング・経審への影響)で扱いました。

07二重譲渡|2社間で最も重い事故

2社間で最も重い事故は、二重譲渡です。

同じ債権を、2つの会社に売る。

これは、故意であれば詐欺に問われ得る行為です。

しかし、故意でなくても起こり得ます。

二重譲渡が発生するメカニズムと、その帰結 同一の債権を複数のファクタリング会社に譲渡した場合、確定日付や登記の先後で優劣が決まり、売主が重い責任を負う構造を示す。 同じ債権を、2社に売ってしまったら

1本の売掛債権 額面300万円

A社に譲渡(4月1日) 債権譲渡登記あり

B社に譲渡(4月10日) 登記なし・通知なし

対抗要件を先に備えたA社が、債権を取得する

売主は、B社に対して重い責任を負うことになる

図6:優劣は「契約の早さ」ではなく「対抗要件を備えた早さ」で決まる。先に登記した側が勝つ。

なぜ、故意でなくても起こるのか。

「他社利用中」の状態を、正確に把握していないからです。

複数のファクタリング会社を同時に使っていると、どの請求書をどこに売ったのかが、分からなくなります。

特に、同じ売掛先に対して毎月請求書を出している場合、月をまたいだ請求書の取り違えが起きます。

そして、複数社を同時に使っている状態は、それ自体が危険信号です。

手数料の合計が、利益を上回っている可能性が高い。

「何社まで使えるか」という問いを持った時点で、資金繰りの構造そのものを見直す段階です。

その構造はファクタリング審査に落ちる12の理由で扱いました。

「何社まで使えますか」という質問が出た時点で

その質問が頭に浮かんだなら、資金繰りは既に構造的な問題を抱えています。複数社を同時に使うということは、手数料も複数回払っているということです。毎月100万円を手数料10%で資金化すれば、年間120万円が消えます。粗利率20%の事業なら、年商600万円分の利益に相当します。

この状態で必要なのは、次のファクタリング会社ではありません。資金繰り構造の見直しと、返済条件の変更(リスケ)の検討です。借入との比較はファクタリングとビジネスローンの違いで整理しました。

08契約前に確認する7項目

最後に、署名する前に確認する7項目を挙げます。

この7つを口頭で質問し、書面で確認する。

それだけで、事故の大半は防げます。

契約前に確認する7項目のチェックリスト 契約方式、通知の有無、債権譲渡登記の要否、抹消登記の費用負担、償還請求権の有無、諸費用込みの入金額、送金の手順という7項目のチェックリスト。 署名の前に、この7つを書面で確認する

1. これは2社間ですか、3社間ですか

2. 売掛先への通知は、行われますか

3. 債権譲渡登記は、必要ですか(費用はいくら、誰が払う)

4. 取引終了後の抹消登記の費用は、どちらが負担しますか

5. 償還請求権はありますか(売掛先が倒産したら、誰が負担しますか)

6. 手数料と諸費用をすべて含めて、入金される金額はいくらですか

7. 2社間の場合、回収した代金はいつまでに、どう送金しますか

図7:5番と6番は、書面で確認する。口頭の説明と契約書の条項が食い違うことがある。

5番の償還請求権の有無は、方式の違いとは別次元の問題です。

2社間だろうと3社間だろうと、償還請求権がある契約は、不払いのリスクがあなたに残っています。

その場合、金融庁が挙げる偽装ファクタリングの危険信号に該当します。

裁判所も、この一点を基準に判断しています。

7件の裁判例を追ったファクタリングは「やばい」のか|裁判例7件で読む合法と違法の境界線で、その分岐を時系列で示しました。

会社の選び方の全体像はファクタリング会社の選び方(15のチェックリスト)に、借入との使い分けはファクタリングとビジネスローンの違いにまとめています。

2社間・3社間の両方から選べる|株式会社エーストラスト
手数料は3社間が1.0〜4.9%、2社間が5〜15%。最短2時間で送金。買取可能額は〜5,000万円(審査により1億円まで)。法人が対象です。2社間・3社間の両方を扱っているため、通知の可否と手数料を天秤にかけたうえで方式を選べます。2社間はオンライン(INBUYS)にも対応しています。
3社間 1.0〜4.9%2社間 5〜15%最短2時間法人向け

無料で審査を申し込む

※手数料・スピードは2026年7月時点の同社公表値です(同社サイト内では手数料の表記に揺れがあるため、条件表の数値を記載しています)。実際の条件は、債権額・支払サイト・売掛先の信用力により変動し、審査があります。「審査通過率90%以上」は同社の公表値であり、第三者による検証は行われていません。償還請求権の有無および債権譲渡登記の要否については、契約前に契約書面でご確認ください。

FAQよくある質問

2社間ファクタリングなら、取引先に知られずに済みますか。
2社間ファクタリングでは、原則として売掛先への通知は行われません。ただし、債権譲渡登記を求める会社もあるため、契約前に確認してください。債権譲渡登記は法人の登記情報として第三者が閲覧できるため、取引先や金融機関が調査した場合に把握される可能性は残ります。また、契約書に「売主が送金を怠った場合、業者が売掛先へ通知できる」旨の条項が入っていることがあります。この条項の有無も、契約前に確認してください。「知られることはない」と言い切る業者がいたら、その説明の根拠を尋ねるべきです。
なぜ2社間のほうが手数料が高いのですか。
業者が引き受けているリスクの量が違うからです。3社間では、業者は売掛先に直接連絡して債権の実在と支払意思を確認でき、支払期日には売掛先から直接入金されます。一方2社間では、売掛先に確認できないため「請求書が本物か分からない」というリスクがあり、さらに代金が一度売主の口座に入るため「売主が送金しない」というリスクも負います。加えて二重譲渡のリスクもあります。この3層のリスクが上乗せされるため、手数料は3社間の1.0〜4.9%に対し、2社間は5〜15%という帯になります。
債権譲渡登記の費用は、いくらかかりますか。
登録免許税は、債権の個数が5,000個以下の場合、1件7,500円です(5,000個を超えると1件15,000円)。これに司法書士報酬(数万円程度)が加わります。さらに見落とされやすいのが、取引終了後の抹消登記です。抹消登記の登録免許税は1件1,000円で、これにも司法書士報酬がかかります。誰がこれらを負担するのかは、契約により異なります。契約前に「抹消登記の費用は、どちらが負担しますか」と質問してください。この質問に即答できない会社とは、契約を急がないほうがよいと考えます。
個人事業主でも、債権譲渡登記はできますか。
できません。債権譲渡登記の根拠法である動産債権譲渡特例法は、譲渡人が法人である場合に限って、登記による対抗要件の具備を認めています。したがって、個人事業主は債権譲渡登記を利用できません。この結果、個人事業主が2社間ファクタリングを利用する場合、業者は第三者対抗要件を取る手段を持たないまま債権を買うことになり、その分リスクが高くなります。手数料が上がりやすい一方、登記費用は発生しません。詳しくは個人事業主・フリーランスのファクタリングの記事で解説しています。
同じ債権を2社に売ってしまいました。どうなりますか。
二重譲渡です。どちらの会社が債権を取得するかは、契約の順番ではなく、対抗要件を備えた順番で決まります(民法467条2項)。確定日付のある証書による通知・承諾、または債権譲渡登記のいずれかを先に備えた側が優先します。負けた側の会社に対して、売主は重い責任を負うことになり、故意であれば刑事上の問題にもなり得ます。複数社を同時に利用している場合は、どの請求書をどこに譲渡したかを、直ちに整理してください。そして、そもそも複数社の同時利用が必要な状態は、資金繰りの構造そのものに原因があります。
3社間にしたいのですが、取引先に何と説明すればよいですか。
まず前提として、譲渡が取引先に与える印象は、取引先の姿勢によって大きく異なります。「資金繰りが苦しいのか」と受け取られる可能性は、現実に存在します。実務上は、「入金サイクルの改善のために、売掛債権の流動化を進めている」という趣旨で、経営上の資金管理施策として説明する方が受け入れられやすい傾向があります。ただし、事実と異なる説明はすべきではありません。なお、取引基本契約書に譲渡制限特約がある場合は、契約違反の問題が別途生じます。民法466条2項により譲渡自体は有効に成立しますが、取引先との関係は法律とは別の問題です。

まとめ

2社間と3社間の違いは、売掛先に通知するかどうか。

たったそれだけです。

しかし、その一点が手数料を3倍前後変え、取引先との関係を変え、債権譲渡登記の要否を変えます。

手数料の差は、業者の取り分の差ではありません。

リスクの値段です。

そして、その事実を理解していれば、「なぜ安いのか」「なぜ高いのか」を、自分で説明できるようになります。

説明できない条件には、署名しない。

それが、通知の事故を防ぐ、唯一の方法です。

出典・参考
金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
e-Gov法令検索「民法」(466条・467条)
e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」
金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」
・株式会社No.1/株式会社エーストラスト 各社公式サイト(2026年7月時点)

監修者
黒岩 智之(くろいわ ともゆき)/事業再生コンサルタント。地方銀行の融資審査部に9年在籍後に独立し、中小企業の資金調達支援に18年携わる。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。



目次

    タイトルとURLをコピーしました