多重ファクタリングから抜け出す方法|自転車操業の出口はどこか

審査・トラブル・資金繰り改善
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多重ファクタリングから抜け出す方法|自転車操業の出口はどこか

公開日 2026年7月13日|最終更新 2026年7月13日
監修:黒岩 智之
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年
元・地方銀行 融資審査部(9年)/相談実績1,200社超
広告(PR)|本サイトにはアフィリエイト広告が含まれます。ただし本記事には広告リンクを一切設置していません

この記事の結論

  • 多重ファクタリングは、資金繰りを改善しない。手数料の分だけ、毎月確実にキャッシュが減っていく。これは意志の問題ではなく、算数の問題である。
  • 月500万円の売掛債権を手数料10%で毎月売り続ければ、毎月50万円、年間600万円が手数料として消える。この穴は、次のファクタリングでは埋まらない。
  • 出口は、5つある。①一時停止して資金繰り表を作る ②リスケ(返済条件の変更) ③中小企業活性化協議会 ④弁護士への相談 ⑤任意整理・法人破産。
  • 早く動くほど、選べる出口は多い。遅くなるほど、選択肢は消えていく。それだけのことです。
  • この記事は、あなたを責めるために書いていない。「利用してしまった自分が悪い」——そう考えている方に、次の一手だけを渡すために書いています。

今月も、ファクタリング会社に連絡をした。

先月売った債権の入金日が来て、その資金が出ていくから、また別の債権を売る。

手数料だけで、毎月100万円を超えている。

——この状態にいる方に、この記事を書いています。

最初に、一つだけ言わせてください。

あなたは、特別に愚かな経営者ではありません。

この構造にはまった会社を、私は18年で何十社と見てきました。

そのほとんどが、真面目な会社です。

従業員に給料を払いたかった。仕入先に迷惑をかけたくなかった。取引を切りたくなかった。

その一つ一つの判断は、その時点では間違っていなかった。

ただ、構造が悪かった。

——だから、この記事では説教をしません。

自己責任論も書きません。

「利用してしまった自分が悪い」

そう思っているなら、その思考は今すぐ、横に置いてください。

今、必要なのは反省ではなく、次の一手です。

——この記事で書くのは、たった2つです。

1つ目。なぜ、ファクタリングを繰り返しても、資金繰りは良くならないのか。

これを、図で示します。

2つ目。では、どこから出るのか。

出口を、5つ書きます。

そして、この記事には広告リンクを一切置いていません。

出口を探している人に、入口の広告を見せるのは、おかしいからです。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や、法務・税務に関する助言を行うものではありません。債務整理・破産・リスケジュール等の具体的な手続きは、必ず弁護士・公認会計士・税理士・中小企業診断士等の専門家にご相談ください。本記事の内容は2026年7月時点の公開情報に基づく一般的な整理であり、個別の事案における最適な選択を示すものではありません。緊急性が高い場合は、記事末尾の相談窓口へ、今すぐご連絡ください。

01まず、算数を確認する

感情の話は、あとにします。

先に、数字を見ます。

これが、すべての出発点だからです。

条件を置きます。

月商1,000万円。毎月、500万円の売掛債権が発生する。支払サイトは30日。

この500万円を、手数料10%で毎月売り続ける。

何が起きるか。

多重ファクタリングで毎月キャッシュが減っていく構造を示した積み上げ図 毎月、手数料の分だけ、現金が消えていく 売掛債権500万円/手数料10%/毎月繰り返した場合

0 200万 400万 600万

1月 50万

2月

3月

4月 200万

5月

6月

7月

8月 400万

9月

10月

12月 600万

1年間で、手数料として消えた現金 = 600万円 売上は変わらない。利益だけが、この分だけ減っている

図1:手数料の累積。毎月50万円ずつ、確実に現金が減っていく。売上は変わらないので、この分がそのまま利益を削る。

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手数料率 1か月あたり
(債権500万円)
6か月の累計 12か月の累計 年率換算(参考)
サイト30日
3% 150,000円 900,000円 1,800,000円 37.6%
5% 250,000円 1,500,000円 3,000,000円 64.0%
8% 400,000円 2,400,000円 4,800,000円 105.8%
10% 500,000円 3,000,000円 6,000,000円 135.2%
15% 750,000円 4,500,000円 9,000,000円 214.7%
20% 1,000,000円 6,000,000円 12,000,000円 304.2%
※年率換算は「手数料額 ÷ 手取額 × (365 ÷ 支払サイト日数) × 100」(単利・365日ベースの概算)。ファクタリングの手数料は金利ではありません。ファクタリングは債権の売買であり貸付けではないため、利息制限法・出資法の上限金利は直接には適用されません。この年率換算は、他の資金調達手段とコストを比べるための参考値であり、同時に「この取引は本当に債権の売買なのか」を見抜くための物差しでもあります。支払サイト別の換算はファクタリング手数料の相場と実質年率換算表に。

この表を見て、数字が大きすぎて現実味がないと感じたかもしれません。

でも、これが起きていることです。

手数料10%で、月500万円の債権を1年間売り続けたら、600万円が消えます。

600万円。

それは、社員2人分の年収です。

それは、設備投資1件分です。

それは、1年分の営業利益より大きいかもしれません。

——そして、ここが最も残酷なところですが。

この600万円を払っても、資金繰りは1円も改善していません。

なぜなら、翌月も、同じことを繰り返すからです。

02なぜ、抜け出せなくなるのか【ループの構造】

ここを、図で説明します。

これを見ると、「自分の意志が弱いから抜けられない」のではないことが、分かります。

構造が、そうなっているのです。

多重ファクタリングの自転車操業ループの構造図 抜けられないのは、意志の問題ではありません

資金が足りない 給与・仕入・税金

売掛債権を売る 手数料を払う

その月は、しのげる 給料は、払えた

翌月、入るはずの 売掛金が、ない

手数料が 積み上がる

売掛金を先に使ってしまうので、翌月は必ず「同じ額 + 手数料」が足りなくなる

このループは、内側からは止まりません。外から止めるしかありません

図2:自転車操業のループ。売掛金を先に使うため、翌月は必ず「同じ額+手数料」が不足する。手数料の分だけ、穴は毎月深くなる。

この図の左下の箱を、見てください。

「翌月、入るはずの売掛金が、ない」

これが、核心です。

ファクタリングは、将来入る予定のお金を、先に受け取る仕組みです。

つまり、未来から借りている。

(法的には借入ではなく債権の売却ですが、キャッシュフローの構造としては、未来の現金を前倒ししている——という意味です)

前倒しした分、未来の現金は消えています。

だから、翌月には「同じ穴」が空く。

しかも、手数料の分だけ、穴は深くなっている。

この構造では、繰り返すほど悪化します。

意志の問題では、ありません。

算数の問題です。

だから——

「もっと頑張れば抜けられる」というのは、残念ながら、違います。

頑張っても、算数は変わりません。

構造を、外から止めるしかない。

ファクタリングとビジネスローンのコスト構造を同一条件で比べた記事はファクタリングとビジネスローンの違い(同じ100万円でも、コストは10倍変わる)です。

今、どれだけのコストを払っているのかを、一度、正面から見てください。

03今、どの段階にいるのか【自己診断】

出口を選ぶ前に、現在地を確認します。

正直に、チェックしてください。

誰も見ていません。

多重ファクタリングの深刻度を自己診断するためのチェックリスト 現在地の確認 ── 当てはまるものに、チェックを

2社以上のファクタリング会社を、同時に使っている

前回の入金日に間に合わせるため、次のファクタリングを申し込んだ

月の手数料の合計が、月の営業利益を超えている

売れる売掛債権が、そろそろ尽きてきた

税金・社会保険料の支払いを、後回しにしている

役員報酬を、実際には受け取っていない

同じ債権を、2社に売ろうかと考えたことがある

3つ以上あてはまるなら、今週中に、専門家へ連絡してください

図3:自己診断チェックリスト。特に下の3つは、緊急度が高いサインです。3つ以上あてはまるなら、今週中に動いてください。

● いちばん下の項目について

「同じ債権を、2社に売ろうかと考えたことがある」
——これを考えたことがあるなら、そこで止まってください。
それは二重譲渡です。詐欺罪に問われるおそれがあります。
そして、それを実行してしまうと、その後に残されていた出口が、すべて閉じます。リスケも、活性化協議会も、破産による再スタートも、はるかに難しくなる。
考えただけなら、まだ間に合います。
実行する前に、この記事の第11章にある相談窓口に、電話してください。今日でも、明日でもいい。実行する前に。

04出口①|まず、止める。そして、資金繰り表を作る

最初にやることは、一つです。

次のファクタリングを、止める。

「止めたら、今月払えない」

——そう思うでしょう。

その通りです。

だから、「払えないこと」を前提に、組み直すのです。

これが、出口の入口です。

具体的には、2つのことをします。

① 日繰りの資金繰り表を作る② 支払いの優先順位を決め直す

①から、説明します。

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作るもの 期間 目的
日繰り表(1日単位) 今日から、向こう30日 「いつ、いくら足りないか」を、日にちで特定する
月次の資金繰り表 向こう6か月〜12か月 ファクタリングを止めたときに、どこで詰まるかを見る
債務の一覧表 誰に、いくら、いつまでに払うのかを、一枚にする
ファクタリングの一覧表 何社に、何の債権を、いくらで、いつ入金日か
※資金繰り表の具体的な作り方(銀行提出用の月次表と、自分を守る日繰り表の違い)は資金繰り表の作り方(銀行に出す月次表と、自分を守る日繰り表は別物)で、記入例つきで解説しています。
▲ 「作りたくない」という気持ちは、正常です

資金繰り表を作ると、数字が、はっきりします。
そして、その数字は、たぶん、見たくない数字です。
——だから、多くの経営者が、これを作りません。作らずに、次のファクタリングを申し込みます。
これは、弱さではありません。人間の、自然な反応です。
ですが、専門家に相談するときに、この表がないと、話が始まりません。弁護士も、活性化協議会も、金融機関も、まずこの表を見ます。
逆に言えば、この表を持っていくだけで、話が一気に進みます。
一人で作るのがつらければ、税理士や、後述する公的な相談窓口と一緒に作ってください。それでいいのです。

05支払いの優先順位を、決め直す

全部は、払えない。

それが現実なら、順番を決めるしかありません。

これは、経営判断です。

感情ではなく、「事業を続けるために何が要るか」で決めます。

資金が足りないときの支払い優先順位のピラミッド 全部払えないなら、この順番で考える

① 従業員の給与 これを止めると、事業が続かない

② 事業の継続に不可欠な仕入・外注 止まると、売上が立たなくなるもの

③ 家賃・水道光熱費・リース料 止まると、営業できなくなるもの

④ 税金・社会保険料 ← 猶予の制度がある 「換価の猶予」等を、先に申請する。黙って滞納しない

⑤ 金融機関への借入返済 ← リスケの制度がある 返済条件の変更を、正面から申し入れる。黙って延滞しない

④と⑤には、制度がある。「黙って払わない」のではなく、「先に相談する」

図4:支払いの優先順位。④税金と⑤借入には、猶予・変更の制度があります。黙って滞納するのではなく、先に相談することが決定的に重要です。

この図で、最も伝えたいのは④と⑤です。

税金・社会保険料には、「猶予」の制度があります。

金融機関の返済には、「リスケ」の制度があります。

つまり、「払えない」ことを正面から伝えれば、公式に待ってもらえる可能性がある、ということです。

ところが——

多くの経営者は、これを申請せずに、ファクタリングで埋めようとします。

なぜか。

「猶予を申請したら、信用を失う」と思っているからです。

これは、逆です。

黙って滞納するほうが、はるかに信用を失います。

そして、手数料10%のファクタリングで埋め続けるほうが、会社を確実に殺します。

税金・社会保険料の滞納と融資の関係、そして「換価の猶予」の具体的な使い方はノンバンクの前に使うべき公的支援(セーフティネット貸付・保証協会・納税の猶予)に書いています。

ここを、先に読んでください。

06出口②|リスケ(返済条件の変更)

リスケとは、金融機関に対して返済条件の変更を申し入れることです。

元金の返済を、一定期間、止めてもらう(または減額)。

利息だけを払う。

これで、毎月のキャッシュアウトが大きく減ります。

たとえば——

毎月の元金返済が80万円あるなら、リスケで元金を止めれば、毎月80万円が手元に残ります。

年間960万円です。

これは、ファクタリングの手数料(年600万円)より大きい金額です。

つまり——

ファクタリングを止めて、リスケをすれば、資金繰りは劇的に変わりうる。

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比較 ファクタリングを続ける リスケをする
毎月のキャッシュへの影響 手数料の分だけ、毎月減る 元金返済分だけ、毎月増える
年間の効果(例) ▲600万円(手数料10%・債権500万円) +960万円(元金返済80万円/月を止めた場合)
信用情報への影響 直接の記録はない 新規融資は、当面難しくなる
取引先への影響 2社間なら通知されない場合が多い 取引先には、関係しない
持続可能性 売れる債権が尽きたら、終わる 経営改善計画とセットで、再建の時間を作れる
手続きの負担 軽い(申し込むだけ) 重い(経営改善計画の作成が必要)
※上表は構造を示すための例です。実際の効果は、借入残高・返済条件・金融機関の対応により異なります。リスケには金融機関の同意が必要であり、必ず認められるとは限りません。リスケ中は新規融資が難しくなります。具体的な手順は専門家にご相談ください。
■ リスケの「デメリット」を、正確に理解してください
  • リスケをすると、当面、新規の融資は難しくなります。これは事実です。
  • ですが——多重ファクタリングの状態で、そもそも新規融資は下りますか。
  • 「リスケをすると借りられなくなる」から避けている方が多いのですが、すでに借りられない状態にあるなら、失うものはありません。
  • 失っていないもの(新規融資)を守るために、確実に減っていくもの(現金)を差し出している——これが、多重ファクタリングの構造です。
  • リスケの全手順(金融機関への申し入れ方、経営改善計画の作り方、中小企業活性化協議会と405事業の使い方)はリスケ(返済条件変更)の全手順|中小企業活性化協議会と405事業で解説しています。

07出口③|中小企業活性化協議会

中小企業活性化協議会は、各都道府県に設置された公的な相談窓口です。

中小企業庁が所管しています。

民間のコンサルタントではありません。

相談は、無料です。

そして——ここが重要ですが——

協議会は、金融機関との調整を、間に入ってやってくれます。

経営者が一人で銀行に頭を下げに行くのではなく、公的機関が「この会社の再建計画は妥当です」と言ってくれる。

この差は、大きい。

中小企業活性化協議会が提供する3つの支援の内容 中小企業活性化協議会 ── 3つの支援

収益力改善支援 まだ経営が回るが、 資金繰りが苦しい段階 ・収益力改善計画を作る ・金融機関との調整 ・専門家の派遣 早い段階ほど、 ここが使える

再生支援 債務が過大で、 抜本的な対応が要る段階 ・再生計画を策定 ・返済条件の変更 ・債権放棄等の調整 金融機関との合意 形成を支援

再チャレンジ支援 再生が困難と 判断された場合 ・円滑な廃業の助言 ・経営者の再スタート ・代理人弁護士の紹介 「終わり方」も 支援してくれる

相談は無料。各都道府県に設置されています 「再生できない」と言われても、放り出されるわけではありません。再チャレンジ支援があります

図5:中小企業活性化協議会の3つの支援。再生が難しいと判断された場合でも、「再チャレンジ支援」として、円滑な廃業と経営者の再スタートを助けてくれます。

◆ 「再チャレンジ支援」という言葉を、覚えておいてください

多くの経営者が、公的機関に相談することを恐れます。
「もう再生は無理だ、と言われたら、そこで終わりだ」——そう思っているからです。
そうではありません。
中小企業活性化協議会は、再生が極めて困難と判断した場合であっても、「円滑な廃業」や「経営者・保証人の再スタート」に向けたアドバイス、代理人弁護士の紹介を行う「再チャレンジ支援」を用意しています。
つまり、「終わり方」まで支援してくれる。
どちらに転んでも、放り出されはしません。だから、相談してください。
詳細は中小企業庁「中小企業活性化協議会」で確認できます。

08出口④|弁護士に相談する

弁護士に相談することは、「破産する」ことと同じではありません。

ここを、誤解している方が非常に多い。

弁護士に相談すると、たとえばこういうことが起きます。

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弁護士ができること 効果
受任通知の送付 弁護士が代理人として通知を出すと、債権者からの直接の取立てが止まることがあります(債務整理の場合)
契約の適法性の検討 ファクタリング契約が実質的に貸金業にあたるかを検討する。該当すれば、利息制限法の上限を超える部分について争える可能性があります
債権者との交渉 支払条件の変更、分割の交渉
違法な取立てへの対応 脅迫的な取立て、勤務先や家族への嫌がらせに対して、法的措置をとる
任意整理・民事再生・破産 状況に応じて、法的手続きを選択する
経営者保証ガイドラインの活用 経営者個人の保証債務について、一定の財産を手元に残せる可能性があります
※弁護士ができることは、事案により異なります。上表は一般的な整理であり、個別の結果を保証するものではありません。必ず、弁護士にご相談ください。
■ ファクタリング契約が「実質的に貸付け」だった場合

金融庁は、ファクタリングを装いながら経済的に貸付けと同様の機能を有するものは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。
そして、裁判所も、次のような契約について貸金業該当性を認めています。

  • 不払時に、売主が債権額以上を支払う旨の公正証書を作成させていた(東京高裁 令和3年7月1日判決)
  • ノンリコース規定はあるが、表明保証で実質的に保証させていた(東京地裁 令和4年3月4日判決)
  • 譲渡が発覚すれば事業継続が困難になるため、何としてでも買い戻さざるを得ない状況にあった → 貸金規制の潜脱として公序良俗違反で無効(札幌高裁 令和4年7月7日判決)

つまり、あなたが結んだ契約が「本当はファクタリングではなかった」可能性があります。
その場合、支払義務の内容が変わってきます。契約書を持って、弁護士に見せてください。
裁判例7件の詳細はファクタリングは「やばい」のか|裁判例7件で読む、合法と違法の境界線にまとめています。

09出口⑤|任意整理・法人破産という選択

ここは、避けずに書きます。

どうしても再建できない場合、「終わらせる」という選択肢があります。

これは、失敗ではありません。

最も損失の少ない終わり方を選ぶことは、経営判断です。

むしろ——

終わらせるべき事業を終わらせずに引き延ばすと、損失は膨らみ続けます。

従業員の未払い賃金が増える。仕入先への未払いが増える。税金の滞納が増える。

迷惑をかけたくないから続けている——

その気持ちは分かります。

ですが、続けるほど、迷惑は大きくなります。

これも、算数です。

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手続き どういうものか 向いている状況
任意整理 裁判所を通さず、債権者と個別に交渉して、返済条件を変更する 債権者の数が限られ、話し合いで解決できる見込みがある場合
民事再生 裁判所の手続きで、債務を圧縮し、事業を継続する 事業自体には収益力があり、債務さえ減れば続けられる場合
法人破産 裁判所の手続きで、法人を清算し、債務を整理する 事業の継続が困難で、これ以上続けると損失が拡大する場合
経営者保証ガイドライン 経営者個人の保証債務について、一定の財産を手元に残しつつ、保証債務の整理を図るための準則 早期に相談し、誠実に対応した場合。「早く相談するほど有利」という設計になっています
※各手続きの要件・効果・費用は事案により大きく異なります。必ず弁護士にご相談ください。経営者保証に関するガイドラインの適用可否・内容は、個別の事情によります。
◆ 経営者保証ガイドラインの、いちばん大事なところ

「経営者保証に関するガイドライン」は、経営者個人が会社の債務を保証している場合の、保証債務の整理についての準則です。
そして、この仕組みには、はっきりした特徴があります。
「早期に相談し、誠実に対応した経営者ほど、手元に残せる財産が多くなりうる」という設計です。
逆に言えば——ぎりぎりまで引き延ばし、資産を隠し、債権者に不誠実な対応をした場合、残せるものは少なくなります。
だから、早く相談してください。これは道徳の話ではなく、あなたと家族の生活を守るための、実務の話です。

相談する時期が早いほど選べる出口が多いことを示す図 早く動くほど、出口は多い。それだけのことです

時間の経過 →

今、動いた場合 ・リスケ ・活性化協議会 ・収益力改善 ・民事再生 出口が、5つ以上ある

3か月後 ・リスケ ・再生支援 出口が、減っている

半年後 出口は、1つか2つ

売れる債権が尽きた日から、選べる出口はほとんど残っていません

今日、電話をかけることが、いちばん選択肢を増やす行動です

図6:時間と選択肢の関係。早く動くほど、出口は多い。遅くなるほど、消えていく。これは、単純にそういう構造です。

10ファクタリング業者への支払いが止まったら

現実的な話をします。

ファクタリングを止めれば、売却済みの債権の入金日が来ます。

2社間ファクタリングの場合、売掛先から自社に入金された金額を、業者に送金する約束になっています。

それが、できなくなるかもしれない。

そのとき、何が起きるか。

まず、正確に書いておきます。

これは契約違反であり、業者から法的な請求を受ける可能性があります。

その事実からは、逃げられません。

——だからこそ、弁護士に相談してから止めるのが、正しい順序です。

自己判断で止めないでください。

● ただし、違法な取立ては、別の話です

支払いが遅れたことと、違法な取立てを受けることは、まったく別の問題です。
あなたが支払えなかったとしても、以下の行為は許されません。

  • 深夜・早朝の執拗な電話、面談の強要
  • 勤務先・取引先・家族への、支払いを要求する連絡(正当な理由なく)
  • 暴力的な態度、脅迫的な言動
  • 「家族に言うぞ」「取引先にばらすぞ」といった脅し
  • 張り紙、貼り紙、周囲への告知

これらを受けたら、記録してください。着信履歴、録音、書面、メッセージ。すべて残す。
そして、警察(#9110)と、金融庁の相談窓口に連絡してください。
「支払えなかった自分が悪いから、我慢するしかない」——そう考える必要は、まったくありません。
取立てへの具体的な対処法と通報先は悪質業者に当たったときの断り方と通報先【電話番号一覧】にまとめています。

▲ 「報復が怖い」という気持ちについて

実務で、いちばん多く聞く言葉があります。
「法的には払わなくていいのかもしれないが、家族や職場への嫌がらせが怖いから、払った」
——この気持ちは、痛いほど分かります。法的な正論より、報復への不安のほうが、はるかに強い。それは、当然のことです。
だからこそ、一人で対応しないでください。
弁護士が代理人になれば、連絡の窓口は弁護士になります。あなたに直接、連絡は来なくなります。
「怖いから、一人で耐える」——これが、いちばん危険な選択です。
間に、人を立ててください。それが、いちばん確実にあなたを守ります。

11相談窓口【電話番号一覧】

最後に、連絡先を書きます。

この記事を閉じる前に、一つでいいので、どこかに電話してください。

今日でなくてもいい。

でも、今週のうちに。

公的な相談窓口(無料)

中小企業活性化協議会
各都道府県に設置。収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援
金融庁 金融サービス利用者相談室
ファクタリング業者とのトラブル、無登録業者の疑い
0570-016811
警察相談専用電話
脅迫的な取立て、家族・職場への嫌がらせ
#9110
日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター
貸金業者とのトラブル
0570-051051
消費者ホットライン
どこに相談すればよいか分からないとき
188
法テラス(日本司法支援センター)
弁護士費用が払えない場合の相談・援助制度
0570-078374
よろず支援拠点
各都道府県に設置。経営全般の無料相談
登録貸金業者情報検索サービス
取引相手が登録業者かどうかを確認できます
◆ 電話をかけるとき、これだけ手元に置いてください
  • ファクタリング会社の一覧(社名/売却した債権/金額/手数料/入金日)
  • 借入の一覧(金融機関名/残高/毎月の返済額)
  • 直近3か月の通帳
  • 直近の決算書(あれば試算表も)
  • 今後30日の入出金の予定(メモ書きでかまいません)

完璧でなくていいのです。手元にあるものだけで、電話してください。
足りないものは、相談しながら揃えていけばいい。「準備が整ってから」と考えていると、時間だけが過ぎます。

FAQよくある質問

ファクタリングを繰り返すと、なぜ資金繰りが悪化するのですか。
手数料の分だけ、毎月確実に現金が減るからです。ファクタリングは、将来入る予定の売掛金を先に受け取る仕組みです。前倒しした分、翌月に入るはずだった現金は消えています。そのため、翌月も同じ額が不足します。しかも、手数料の分だけ穴は深くなっています。月500万円の債権を手数料10%で売り続ければ、毎月50万円、年間600万円が消えます。売上は変わらないので、この分がそのまま利益を削ります。これは意志の問題ではなく、構造の問題です。「もっと頑張れば抜けられる」ということには、残念ながらなりません。構造を外から止める必要があります。
リスケをすると、もう融資を受けられなくなるのではないですか。
リスケをすると、当面、新規融資は難しくなります。これは事実です。ただ、一度考えてみてください。多重ファクタリングの状態で、そもそも新規融資は下りるでしょうか。すでに借りられない状態にあるなら、リスケによって失うものはありません。「失っていないもの(新規融資)を守るために、確実に減っていくもの(現金)を差し出している」——これが、多重ファクタリングの構造です。毎月の元金返済が80万円あるなら、リスケでそれを止めれば、年間960万円が手元に残ります。ファクタリングの手数料(年600万円)より大きい金額です。まず、この比較をしてください。
中小企業活性化協議会に相談すると、「再生は無理」と言われて終わりではないですか。
そうはなりません。中小企業活性化協議会には、3つの支援があります。①収益力改善支援(まだ経営が回るが資金繰りが苦しい段階)、②再生支援(債務が過大で抜本的な対応が要る段階)、③再チャレンジ支援です。そして③は、協議会が再生は極めて困難と判断した場合であっても、「円滑な廃業」や「経営者・保証人の再スタート」に向けたアドバイス、代理人弁護士の紹介を受けられる仕組みです。つまり、「終わり方」まで支援してくれます。どちらに転んでも、放り出されることはありません。相談は無料で、各都道府県に設置されています。
ファクタリング会社への支払いを止めても大丈夫ですか。
自己判断で止めないでください。2社間ファクタリングでは、売掛先から入金された金額を業者に送金する約束になっています。これを履行しなければ契約違反となり、法的な請求を受ける可能性があります。したがって、止めるなら、その前に弁護士に相談してください。順序が重要です。ただし、支払いが遅れたことと、違法な取立てを受けることは、まったく別の問題です。深夜・早朝の執拗な電話、家族や取引先への連絡、脅迫的な言動——これらは許されません。受けたら記録し、警察(#9110)と金融庁の相談窓口(0570-016811)に連絡してください。「払えなかった自分が悪いから我慢する」必要は、まったくありません。
結んだファクタリング契約が、実は違法だった可能性はありますか。
あります。金融庁は、ファクタリングを装いながら経済的に貸付けと同様の機能を有するものは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。裁判所も、不払時に債権額以上を支払う旨の公正証書を作成させていた事案(東京高裁 令和3年7月1日判決)、ノンリコース規定はあるが表明保証で実質的に保証させていた事案(東京地裁 令和4年3月4日判決)、譲渡が発覚すれば事業継続が困難になるため何としてでも買い戻さざるを得ない状況にあった事案(札幌高裁 令和4年7月7日判決・公序良俗違反で無効)などについて、貸金業該当性や契約の無効を認めています。契約書を持って、弁護士に見せてください。支払義務の内容が変わってくる可能性があります。
破産すると、家族はどうなりますか。何もかも失いますか。
「何もかも失う」わけではありません。まず、法人破産と、経営者個人の保証債務の整理は、別の手続きです。経営者個人については、「経営者保証に関するガイドライン」という準則があり、一定の財産を手元に残しつつ保証債務を整理できる可能性があります。そして、このガイドラインには重要な特徴があります。早期に相談し、誠実に対応した経営者ほど、手元に残せる財産が多くなりうる、という設計になっているのです。逆に、ぎりぎりまで引き延ばし、資産を隠し、債権者に不誠実な対応をすれば、残せるものは少なくなります。だから、早く相談してください。これは道徳の話ではなく、あなたと家族の生活を守るための実務の話です。適用の可否・内容は個別の事情によりますので、必ず弁護士にご相談ください。

まとめ

この記事の内容は、たった2つです。

1つ目。

ファクタリングを繰り返しても、資金繰りは良くならない。

手数料の分だけ、毎月、確実に現金が減る。

これは、意志の問題ではなく、算数の問題です。

だから、「もっと頑張れば抜けられる」ということには、なりません。

2つ目。

出口は、5つあります。

①止めて、資金繰り表を作る②リスケ③中小企業活性化協議会④弁護士に相談する⑤任意整理・法人破産

そして、早く動くほど、選べる出口は多い。

——最後に、一つだけ書かせてください。

この記事を、ここまで読んだあなたは、すでに、動き始めています。

多重ファクタリングの状態で、出口を探して検索する。

これは、簡単なことではありません。

多くの人は、それすらできずに、次のファクタリングを申し込みます。

あなたは、そうしなかった。

だから、あと一歩だけ、進んでほしい。

電話を、かけてください。

中小企業活性化協議会でも、弁護士でも、よろず支援拠点でもいい。

今週のうちに。

——「利用してしまった自分が悪い」

その考えは、今日で終わりにしてください。

今、必要なのは反省ではありません。

次の一手です。

相談窓口
金融庁 金融サービス利用者相談室:0570-016811
警察相談専用電話:#9110
日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター:0570-051051
消費者ホットライン:188
法テラス(日本司法支援センター):0570-078374

出典・参考
中小企業庁「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」
中小機構「中小企業活性化協議会による支援」
金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」
e-Gov 法令検索「貸金業法」
中小企業庁
・裁判例:東京高裁 令和3年7月1日判決/東京地裁 令和4年3月4日判決/札幌高裁 令和4年7月7日判決/最高裁 令和5年2月20日 第三小法廷決定

監修:黒岩 智之(くろいわ ともゆき)
事業再生コンサルタント/中小企業の資金調達支援18年。地方銀行の融資審査部に9年在籍後、独立。これまで1,200社超の資金繰り相談に対応。建設・運送・医療介護分野の資金調達を専門とする。

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